第15話 ロクドーDDRをプレイして見せちゃう

「なんだこれは・・・」


ズーが家に帰りきっちり8時間寝てMPを回復させ再び酒場に足を運んで驚きに包まれる。

貼り出されている紙に隠しコマンドが書かれておりそれに挑戦しているプレイヤーが居たのだ。


※『ANOTHER』

日本語に訳すと『別の』と言う意味合いの譜面で実際にDDRにおいては1段階譜面の難易度が上がる。

特に当時初代をプレイしたプレイヤーは知っていると思うがこのANOTERレベルから矢印の配置に斜め同時が入ってくる。

その為譜面のパターンが・・・

片足4と上下、左右の同時の2パターンの6パターンから斜め4方向を足した10パターンと増える。

特に重心を移動する必要が出てくるのでこのANOTHERからの難易度はグッと上がる。

事実今遊んでいるプレイヤーはNOMALを選んでいるのだがANOTHERのNOMALである。


「譜面が違う?いや、難しくなってるのか・・・」


それはプレイヤーにとって歓喜する事であった。

音ゲーにおいて初心者用の曲と言うのは簡単なのである。

例えそれがどんなに良曲であろうと簡単すぎて誰もやらなくなる・・・

それを払拭したこの別難易度と言う存在は非常に貴重でビートDJマニアとの差が大きく出ていた。

更に次のプレイヤーは譜面が上下左右反転しているMIRRORをプレイしていた。

特にパラノイヤにも使われる横歩きと呼ばれる通称ビジステップ←↓→と言う配置が→↑←と言う配置に変わっているのに苦戦しているプレイヤーの姿を見てズーはニヤける。


※ビジステップ、ストリクトビジネスと呼ばれる曲に複数回出現する8分で←↓→と踏ませる配置である。

横を向いて歩くように踏むか足を滑らせて片足で←↓を踏むかに分かれる配置である。

これが最終ボス曲のパラノイヤのラストにBPM180で襲い掛かってくるのである。


「まだまだ先は長いって事か・・・おもしれぇ!」


ズーは凶悪な表情でニヤケ近くで順番待ちをしている人達は恐怖に脅えズーから距離を取る。

そしてズーは今日もDDRをプレイするのであった。






「ロクドー殿、ロクドー殿は居られるか?」


ロクドーの奴隷商を訪れたのはこの国であるコンマイ国の衛兵である。

そして、中から聞こえるDDRの音楽に気付きそこへ向かう。

そこには複数の女達が居た。

その中央でDDRに上がっているのはこの世界で音ゲーを生み出せる唯一人の人間ロクドーであった。

誰もが口をポカンと開けてそれを見守っている。

衛兵も最初何事かと考えたが視線の集中しているDDRに目を向けて同じように口をポカンと開けて固まる。


「よっと!ほっと♪ほいしょっと♪」


それはもはや別ゲームであった。

つい先日公開されたANOTHER難易度のHARD曲をまるで簡単な曲を暇つぶしに遊んでいるようにアドリブで遊びながらプレイしていたのだ。

足を滑らせ踏むスライド、交互に踏めない譜面を足の外側を大きく回りこむように踏むボックス踏み、斜め同時を片足で踏む2枚抜き、譜面が無い部分にステップを入れてリズムを取る空踏み、そしてターンから背面踏みに台から降りて近くに居る女とハイタッチをしながら足は譜面を踏む残し踏み・・・

数々のDDRが未発達の人たちの前で見せる未来のステップは観客を固まらせるのは充分だった。


「とまぁこんなもんかな?」


画面に表示される最高ランクであるSSランク表示と驚愕のスコア。

場は一気に歓声に包まれる。

ロクドーが汗一つかかず爽やかな笑顔を見せる先に居るのはナーヤである。


「お、御見逸れしましたー!」


大きく頭を下げるナーヤ。

元々ナーヤを教えていたロクドーにナーヤが食って掛かったのが始まりであった。

時は少し巻き戻る。




「だからそこは小さくジャンプして着地のバランスを取らないと・・・」

「分かってますって、と言うかロクドーさん本当にこれクリア出来るのですか?!」


ロクドーにDDRを教えてもらい着実に成長していたナーヤ、それは他のプレイヤーが様々なプレイヤーを見る事でそれを取り込んで成長しているのとは大きく違う成長速度であった。

だが常にロクドーの隣に居るエミの成長はそれよりも凄かった。

ナーヤ的にそれが気に入らなかった。

だが元々エミは奴隷として身体能力は高くナーヤは魔道士で身体能力が低かった。

元々のスペックが違っていたので差ができるのは当然なのだがナーヤは納得しなかった。

そして、今プレイしていたANOTHER難易度のリトルビッツと言う曲でボロボロになっていたのもあってロクドーに食って掛かっていたのだ。


「う~んクリアは余裕だと思うけど・・・」

「ふざけないで下さい!こんなの余裕でクリア出来るわけ無いじゃないですか!」


事実ANOTHERのリトルビッツ事、穴リトビはANOTHERパラノイヤよりも難しいと言ったプレイヤーが多数地球にも居たのをロクドーは思い出していた。


「だったら実際にやって見せて下さいよ!」

「ん?まぁいいけど・・・」


これがこの騒動の原因であった。






そして、2曲目にロクドーがナーヤの言っていた穴リトビを選択しようとしたところで衛兵が声を掛ける。


「ろ、ロクドー殿!プレイ中すみません、実は・・・」


再びその場は固まる・・・

ロクドー、画面をチラチラ見ながら穴リトビをプレイしながら衛兵の話を聞こうとしていたのだ。

衛兵もロクドーのとんでもない技量を目の当たりにしながら連絡事項を近くで伝える。


「と言うわけでして・・・」

「んっ分かった。この曲終わったら一緒に行くよ」


そして、流石に画面を殆ど見ていないのでミスは多数出ていたが普通にありえない高スコアでクリアしていた。

評価ランクはA。

ナーヤの小さな呟き・・・


「ありえない・・・」


そんなナーヤにロクドーは最後の1曲を任せて衛兵に付いて出て行くのであった。

ちなみに残ったナーヤ、初めてのANOTHERパラノイヤをプレイして撃沈したのは言うまでも無いであろう。

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