降らない

「降らないねぇ」


 役場の同僚が窓を見ながら1日1回は呟く言葉。


 12月も中旬に差し掛かっているにもかかわらず、


 ――雪が降らない。


 山間部では降っているものの、平野部では影も形もない。北海道内でも雪が多いオホーツク地域でさえ雪が降らず、テレビのニュースになっているほどだ。天気予報でも雪マークではなく、雨マークになっている。


「週末はどこか行くの?」

「え? ああ……まぁ、ね」


 不意に同僚に声をかけられ、返答に困ってしまった。

 雪が降る前にあちこち回っておこうと、週末になると一眼レフカメラを持ってあちこち出掛けている。アスファルトの上を走れて「ラッキー!」と思う以上に、あまりに雪が降らな過ぎて心配になる。


「降らなくて良いよ。雪かき大変だし」


 窓から外を見ながらそう言い放った同僚に対し、つい「身も蓋もない事を……」と、心の中で返事をしてしまった。


 確かに昨年は11月から毎日のように雪が降り、12月には寒さと雪かきとアイスバーンに悩まされる日々だったが、雪が降らない土地から来た私にとって、白くない北海道は……ワクワクしない。


 何より、北海道らしくない。


 まぁ、北海道で生まれ育った人からすれば、そんな事は思わないのだろう。


「それにしても、降らないなぁ」


 ――いや、そうでもないらしい。

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徒然掌編集 八ヶ岳南アルプス @Yatsugatake

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