第57話沈黙の神
扉を開けると小さな机の前に一人の男
が静かに座っていた。
髪の毛は白髪。体はつきは細身。
太郎、梓、緑を見つめる目が虚ろだ。
「向かえに来ました、宮山毅さん。」
「死刑制度は廃止され、我が法になりて…。」
「この人って○○事件の…。」
緑が目を見張って呟いた。
「知ってるの?」
梓は、知らない様子だ。
「先輩、話は後です。早く連れて行って下さい。また、五分オーバーですよ。」
太郎は、男の背後に素早く回り込むと首筋を叩いて男を気絶させた。
「お勤めお疲れ様でした。」
そう言うと太郎は、袴田を残して刑務所内から出た。
ぷんぷんしている春男の元に戻って太郎、梓、緑は、タクシーを拾って署に戻った。
「木村さん、マズくないですか?」
仮眠室の布団ですやすや眠っている老人を見て緑は言った。
「まぁ、数日経てば事は運ぶよ。そこんとこ、袴田君が上手くやってくれるでしょう。」
「ねぇ、この宮山毅って誰なんですか?」
梓がずっと聞きたかった事を口にした。
「太郎、てめーは、とんでもない爆弾連れて来たな…。」
春男は、煙草をふかしながら言った。
「え?喜多島さんも知ってるんですか?」
「まぁ、簡単に言えば冤罪事件悲劇のヒーローって所だな。」
「冤罪?」
「そう、奴は、四十年前の事件で警察、検察、裁判官に犯罪者にされた被害者であり確定死刑囚。」
「事件って?」
「あまり、詳しくは知らない方が良い。悲しくなる。」
太郎は、梓の肩に手を乗せて呟いた。
数日間が経過して太郎は、宮山毅をどこかに移動させた。
梓が、新聞を見ても特に○○拘置所での事は記事になっていなかった。
「自殺か、病死、刑を執行したぐらいは出ると思ったけど警察が隠蔽したか。」
春男が、梓の見ている新聞を除きこんで呟いた。
梓もネットで調べて理解した。
自殺も病死も刑の執行も警察としては社会的にバッシングを受けるのは確実であった。
あまりにも大きすぎる冤罪事件であったのだ。
自分の無知を梓は悔いたぐらいだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます