第36話疑い


梓は、その日、四件目になるはずの、事件現場を目撃してしまった。


男が何かを橋の上から落とそうとしていた。


「やめなさい!」


そう、梓が叫んだ瞬間、男は倒れて橋から何かが落ちた。


「危ないな、油断したら。」


梓が、後ろを見ると拳銃を構えて立っている絢斗がいた。


「油断と言っら、あんたもやで!」


いきなり拳銃の銃口を梓に向けた。


梓が、目を閉じると弾撃が、した。


「あずあず、油断大敵だよ。」


梓が、瞳を開けると目の前には銃を構えている太郎がいた。


「木村さん!あれ?さっきの…。」


今しがた、絢斗の弾丸によって倒れたのが木村だった。


「囮捜査だよ。」


「え?」


絢斗は、うずくまってくそー!と叫んでいる。



「林絢斗は、数年前に起きた事件の首謀者で、その事件に関わっていた人間を脅して横領させ、自分の出世のために、金をばらまいていた。そして、今日、尻尾を掴むために囮捜査をした訳だよ。」


「じゃあ、そのために?」


「うん…。林は、なかなか動かない山だったからね。苦労したよ。」


そう太郎が梓に説明してる間にパトカーが何台か来て林を逮捕した。


「いやー、あずあずを巻き込んでごめんね。」


「それより、心配しましたよ。何ヵ月居なかったと思ってるんですか?喜多島さんも、緑も心配してます。」


「ありが…。」


言葉を言い終える前に太郎は梓の前で倒れた。


太郎の腹部は、血で染まっていた。



「いやー参ったね、個室とは。」


太郎は、髪の毛をぼりぼり掻きながら言った。


「特別待遇で、良いじゃないですか。」


梓が、みかんの皮を剥きながら言った。


「夜にさ…お化けがね。」


「出ませんよね。」


「出ないね。」


「おーす!」


「おお!春男ちゃん久しぶり!あれ緑ちゃんも。」


「隠密捜査お疲れ様です。」


「いやいや、ありがとう。」


「いやいやじゃねーよ!心配かけておいてよ。あずあずなんて毎日、木村さん木村さんだよ。参ったよ。」


「あらら、あずあず意外と健気だね。」


「意外は余計です。」


「わたしも、心配してましたよ!」


緑が、春男を押し退けて言った。


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「まぁ、最初から、きな臭いとは、俺も思ってたけどな。」


「ええー、春男ちゃん説得力無いよ。」


「わたしは、分かってましたよ。」


梓は、キッパリと言った。


「さすが、あずあずだね。」


太郎は、にんわりと笑って防弾チョッキの機能性について文句を言い始めた。


お帰りなさいと梓は、太郎の無邪気な横顔を見て心の中で言った。

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