第23話操る


「何だか呆気なかったですね。」


「うん。愛犬家って自分の犬以外が犠牲になる事に何の呵責もないんだよね。まぁ、人それぞれだけど。」


「中村の、犬が行方不明になって必死でビラ配って探して頼みの綱の保健所が前日に中村の犬を処分してたなんて、何だかやるせないですね。」


「1日、1秒、1分、全部、1で決まってしまう事もあるんだよ。一番小さな数字が一番強力な意味を持ってる。」


そうですねと呟いた梓には、まだ、引っ掛かりが頭から抜けなかった。


「じゃあ、俺は帰るよ。」


と手を振って太郎は、仮眠室から出て行った。


「久しぶり田島君。」


太郎が自宅に帰宅すると扉の前に田島がタバコを吸っていた。


「田島君さぁ、僕への警告のつもり?」


「さて、何の事ですか?」


「まぁ、家に入りなよ。」


「いや、今日は、ここで。」


「中村に、爆弾をプレゼントしたのは君らの組織かな?」


田島は、新しいタバコに火をつけて小さくため息をついた。


「ホームレスみたいな姿をしたおっさんに、ボランティアした人間もこの世の中にはいるかもな。」


「中村が、男とは、僕は、一言も発してないけど…。」


「まぁ、組長も、あんたの事は気にかけてる。グレーゾーンまでは、許すけどその先一歩でも足を踏み入れたら容赦は出来ない。」


「あぁ、知ってるよ。」


太郎は、目を細めて扉の中に消えた。

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