第20話少年組長


「なぁ、田島知ってるか?木村太郎を。」


「あぁ、噂の刑事ですね。」


「少し目障りなんだよ。この意味が分かるな?」


「はい。」


「で、田島秀太君、僕に何か用事かな?」


太郎は、ボサボサの頭をかいてふけを床に落としながら聞いた。


「いや、さっきも言ったようにですね。うちの組長が少し木村太郎様には捜査を自粛して欲しいという事です。」


「ふーん、何か勘違いしてない?僕は、ただの公務員でそして愛犬家。ただの窓際族だよ。みんなに敬遠されててね。肩身が狭くて捜査なんてした事ない。いつも、鑑識の喜多島さんとか岸谷梓さんにパシりにされてますよ。だから、もう刑事辞めたいと思って。」


田島は、鼻先を触って


「茶番は、良いですよ。あなたの事は組長が調べ上げてます。」


「いやー別に何も出てこなかったでしょう?」


「はい。それが、いて…。」


レナが田島の足にじゃれていた。


「あぁ、ごめんね。レナはすぐにお気に入りを見付けると噛まずにはいられないんだ。」


太郎は、レナを抱き上げてパンパンに膨れたお腹をペシペシ叩いた。


「用件は、それだけですので。」


「田島君、犬の散歩に付き合ってよ。」


太郎は、レナを田島の腕の中へ渡した。


レナは、田島を見つめてヘッヘッ息を吐いている。


「田島君さぁ、D.Dの事聞いた事ある?」


「はい。自分が知る限りでは、不思議とヤクザや暴力団が背景にない唯一の薬物と聞いてます。」


「やっぱりなぁ。」


「D.Dをお調べに?」


「まあね、単独犯かな?」


「たぶん、そうですね。集団なら必ずどこからか漏れます。」


お尻をかいて太郎は、深いため息をついた。


「医者、薬剤師…。この線は薄いかな。」


「失礼ですけど、木村さんに恨みを持ってる輩の仕業とか。」


「ふーん、鋭いね。田島君、警察官になれば?」


田島は、レナを見つめて少し笑った。


「あなたは、恐い人ですね。やっぱり。」


「そう?」


「うちの組長に似てます。」


二人の間に、夏の終わりを告げる冷たい風が吹いた。

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