第19話暗闇DVD
「はい、これで全部です!」
「良し!目をタコにして観るぞ!」
梓は、被害者宅から持って来た大量のDVDを喜多島の前に置いた。
しかし、見初めて5分もたたずに喜多島はトイレに行きたくなった。
「悪い、あずあず、とめといてくれ。」
「はい。」
梓は、リモコンで一時停止ボタンを押した。
喜多島が、用を足してると梓がトイレに駆け込んで来た。
「ちょちょちょ!あずあずストップ!男子トイレだ!」
「そんなの後にしてください!大変です!」
梓に、腕を引っ張られて喜多島は、仮眠室のテレビ前に投げ飛ばされた。
「いってー!投げ飛ばすなよ!」
「テレビ!テレビ!」
梓は、テレビの画面を必死で指差している。
何だよ?と思いながら喜多島がテレビの画面を観ると固まった。
木村…。そういう事かよ。
「何だよ?木村今さら出て来て!所轄は、聞き込みでもしてろ!」
前園剛は、本庁、所轄の刑事を全員召集した木村太郎に言った。
「まぁまぁ、肩の力を抜いてこの映像を観て下さいよ。」
太郎は、大画面のテレビをつけた。
映像には、1人の仮面を付けた人物が大きなパネルを持ってパネルに書かれた数字を指差していた。
それが、11回繰り返された。
そこで太郎は、テレビを消した。
「はい。すでに皆さんもお分かりの通りこれは、無差別テロです。」
「無差別テロ?木村、説明しろ!」
前園は、イライラしながら聞いた。
「ありゃ?分からないの?前園君。これは、被害者宅から押収したDVDに親切に写し出されていた、うーん、D.D デスドラッグ注文の連絡先だよ。
被害者宅に送られたDVDの1枚ずつのほんの1秒間に写し出されていた11枚のDVD
映像を繋ぎ合わせて完成した物が今回皆さんにご覧になってもらった物です。
犯人は、きっかり映像が流れてから5分後に一時停止ボタンを押すとこの映像が流れるように細工した。そして偶然、変死体で発見された被害者は、これに気が付き電話をして薬を注文して服用して亡くなったんです。では、以上ですので失礼します。」
唖然とする捜査員達を置いて太郎は、部屋を後にした。
それから、本庁、所轄は、部署に関係なく総動員させ、不審な郵便物を調べ上げ国民にも異例の記者会見を開いてマスメディアを通じて注意を訴えた。
その迅速な対応のおかげで被害者が出る事はなかった。
そんな、世間の嵐のような騒動をよそに太郎は、梓と犬の散歩をしていた。
「お手柄ですね。前園さん悔しがってましたよ。」
「うーん、でも、被害者が出てしまったからね。しかも、D.Dの出どころが掴めない。電話番号も何処にも通じない。しかも、人間の体内に入ったD.Dが完全に消えるなんて…。」
「そうですよね。まさに、完全犯罪ですね。」
夜空を見上げて梓は呟いた。
「あずあず、犯人がもし身近にいたとしたら?」
梓は、きょとんとした顔した。
「そうですね。木村さん以外いないでしょうね。」
「正解。あずあず、すごいね。」
「そりゃあ、検挙率No.1男木村太郎の部下ですから。ってか木村さん犯人じゃないですよね?」
「うん…。たぶん。」
たぶんって…。
梓は、木村の横顔を見つめて少しの不安と少し胸の奥底が痛むのを感じた。
熱帯夜の夜道に、ルナとレナと梓、太郎の足音が静かに響いていた。
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