2018 二人のロードショー


 七年前のあの日の約束 憶えてる?

 仕事が終わった後 映画を見る約束


 六時三十分 駅前のモニュメントのところで待ち合わせ

 でも 二人とも行けなかったね それどころじゃなくて


 結局 あの映画は観なかった

 「観られなかった」が正しい


 純愛ものでハッピーエンド

 それに 海辺の町が舞台になっていたから


 一人で観たら 自分が独りであることを実感してしまう

 スクリーンの中の幸せそうな二人を見たら やりきれない気持ちになる


 それは 真綿でじわじわと首を締め付けられるようなもの

 ボクにとっては拷問以外の何物でもない


 ボクの中であの映画の存在は消え去っていた

 七年前 ロードショーがなされていたという事実といっしょに


 でも あるとき記憶が蘇った

 レンタルショップであの映画のタイトルを目にしたとき


 以前のボクだったら 目を逸らして通り過ぎたと思う

 「ボクは何も見なかった」 自分にそう言い聞かせて


 そのときのボクは違った すぐにDVDをレンタルした

 キミとの約束を思い出したから 「いっしょに観る」という約束を


 空の上にいるキミは観ることができないかもしれない

 映画館のスクリーンならともかく狭いテレビの映像なんて


 それなら なおさらボクがしっかり観ないといけない

 いっしょに観たことにならない? そんなことない


 いつかキミと会ったとき ボクが聞かせてあげればいい

 映画の内容をこと細かに まるでいっしょに観ているように


 あの日 ロードショーは終わった

 でも 七年の時間ときを経てロードショーは始まる


 楽しみにしていて 二人だけのロードショー

 いっしょに感じよう 二人のハッピーエンドを

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