前のエピソード――第３７話　覇王の落日　血と野望の嚆矢

第26話：グラン王国の王女　

　アルメキア王国の謀略によりグナイティキ家が謀反人とされたため、シグムンド公爵とジークフリードは籠城すべく本拠地アルベルクへ逃走していた。王都フィーアを脱出したレリュート、ユリア、ティーユの一行は、情報収集のため、アルメキア軍に制圧されたグラン王国の国境都市グラアティスに潜入した。

　彼らは、グラアティスでグラン王国のセフィール・レス・グラン王女が人質として捕らえられているという衝撃的な情報を掴んだ。

　セフィール王女は、民の流血を避けるために自ら名乗り出て捕らえられていた。

レリュートとユリアは、王女を救出すれば、アルメキア軍によるアルベルクへの攻撃を一時的に遅らせ、グラン王国との協力関係を結ぶ外交的な足がかりになると判断し、王女救出作戦を決行した。

　レリュートは単独で、蒼清教会の執行者たちが拠点とするグラアティスの教会へ潜入した。

　第27話～第29話：王女救出と新たな仲間

　レリュートは教会内部で雷光のような圧倒的な剣技と合成魔法を駆使し、アルメキア軍や蒼清教会の執行者たちを無力化し、セフィール王女を救出した。

　セフィールはレリュートの強さに憧れを抱き、ユリアもセフィールがレリュートに抱く感情が、かつて自分が抱いた「勇者（ラドムス）と聖女（フィーア）」への憧れと似ていると感じた。

　一行は追跡を逃れながらアルベルクを目指す道中、宿場町で傭兵時代の友である魔導師のリドル・マークスと合流した。リドルは風属性魔法の使い手で、拳銃型の古代魔導器（アーティファクト）を媒介に戦う異色の戦士であり、グナイティキ家に加わることとなった。

　第30話～第34話：レオンハルト王の追撃とユグドラシル覚醒

　レオンハルト王はセフィール王女の奪還を知り激怒し、またもレリュートの妨害を排除するため、聖騎士団長セイル・フォン・トラマティスとフィルグ将軍を率いて、レリュート一行が向かうと思われるアルベルク方面へ自ら追撃を開始した。

　レリュート一行は、アルベルクへ向かう道中、大樹海の断崖絶壁でレオンハルト王の部隊に捕捉される。

　レオンハルト王は、ルベルが使用した失われた魔法（ロスト・マギア）である空間転移魔法『次元門（テンプス・フォレース）』を用いて現れた。レリュートはユリアたちを守るため、聖騎士セイルとレオンハルト対峙するのだった。

　戦闘が始まると、レオンハルトは神器である聖剣ユグドラシルの能力によりレリュートの魔法攻撃を無効化した。また、セイルは王命に葛藤しながらも、弟の安全を人質に取られているため、聖痕励起を起動し、魔剣ラグナルードを用いてレリュートを追い詰める。

　レリュートは奥の手である『解放（リベラーティオー）』を発動し、魔力と身体能力を大幅に引き上げてセイルを圧倒するが、大幅に魔力と体力を消耗してしまう。　一方、レオンハルトは疲弊したレリュートを無視し、ユリアの聖痕を奪おうと襲いかかった。この極限の状況下で、ユリアは自らの無力さ、そして愛する者たちを守りたいという強い決意から、ついに聖痕を覚醒させ、公然と継承者であることを宣言するのだった。

　ユリアが聖痕励起を発動すると、レオンハルトが所持していた聖剣ユグドラシルが彼の手を離れ、ユリアの手に渡った。ユリアはユグドラシルに選ばれたことで、古代魔導器（アーティファクト）フヴェルケルミルをキーとする白銀の軽鎧『エーリヴァーガル』を身に纏い、聖剣の真の権能である最上級魔法『星光明剣（ルクス・ステラ・グラディウス）』を放ち、レオンハルトを驚愕させる。

　この光景を見た聖騎士セイルは、ユリアこそが国の真の光であると悟り、王命に背いて地属性の魔法『大地爆裂（フムス・エールプラティオー）』を発動し、土煙で視界を遮ることで、密かにレリュート一行の撤退を援護するのだった。

　第35話～第37話：合流と決意、そして次なる謀略

　レリュート一行は、セイルの助け舟により、追撃を逃れ、樹海の戦闘を察知して援軍に駆けつけた兄ジークフリード率いるグナイティキ家領邦軍と合流を果たした。

　合流後、兄ジークフリードはユリアの無事を心底安堵した。聖剣覚醒という偉業を成し遂げた妹を「私の誇りだ」と称賛し、妹を守り抜いたレリュートに対しては、これまでの露骨な嫌悪を抑え「感謝する」と伝えた。ユグドラシルを失い屈辱に打ちひしがれるであろうレオンハルト王の姿を想像し、歓喜した。

　レリュートはセフィール王女をジークフリードに紹介し、グラン王国との同盟者としての立場を確認した。また、援護に加わった傭兵のリドルも、その腕前を認められ、グナイティキ家の陣営に加わった。

　一行はアルベルクへ凱旋し、公爵シグムンドに合流した。シグムンドはユリアの聖痕覚醒を受け入れ、彼女の「王位を望まず、終戦と和解の道を選ぶ」という決意を尊重した。シグムンドは、セフィール王女を伴ってユリアとレリュートを護衛としてグラン王国へ派遣し、クレメンス王と面会し、今後の対抗策を協議する方針を固めた。

　一方、聖剣を失い、屈辱に打ちひしがれたレオンハルト王に対し、宰相アルトカーシャ公爵は彼を「覇王の器ではなかった」と見限り、次の手を打った。アルトカーシャは、配下の蒼清教会の執行者クロードとリディアに、レオンハルト王とシグムンド公爵の暗殺、そしてユリアの誘拐を命じるのだった。

　銀髪の魔導師は、これら一連の出来事、特にユリアの聖痕覚醒が彼の計画通りに進んだことを喜んだ。アルトカーシャ公爵の新たな謀略も、自身の計画の真の『嚆矢（こうし）』を飾るための『踏み台』に過ぎぬと冷徹に見下ろしたのだった。

三章までのキャラクター紹介　簡易版

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