和解と共同

海軍本部


「ユキ大尉の消息が途絶えました…」

レーダーで監視していた通信兵が沈黙の本部で静かに言った。

「やはり無理だったか…」

ケーンが頭を抱えた。

「仕方ない、第4艦隊の偵察は後回しだ!今は国民の混乱をどうにかして収めろ!」

ケーンはすぐに立て直し指示を出した。

その頃ユキは、荒れ果て滑走路とギリギリ言えるかどうかの舗装路に着陸した。

元々、格納庫であっただろう倉庫の前に完全停止したユキはその前に止まる戦闘機と男を視認した。

「さすがだな、君は見たところレディのようだね。」

男はそう言うと機体に近づいてきた。

ユキはホルスターに手を掛け警戒した。

すると目の前で敬礼した。

「私はアンダエーという者だ。警戒せずとも…」

アンダエーは上着をなびかせ言った。

「…私は丸腰だ。」

ユキは多少警戒しつつもコックピットから降りた。

「でもまぁ…」

アンダエーが降りてきたユキを全身見た。

「可愛いフリフリ付きの普通の少女が戦闘機から降りてくるとは…どっかのマニアが好みそうなシチュエーションだな。」

ユキを見ながらそう言った。

「軍服着て基地から出られると思うのかしら?」

嫌味のごとくユキが返答した。

「やはり女性兵士第1号はすばらしいな。」

そのアンダエーの嫌味にある意味嫌悪感をユキは感じた。

「でも、見知らぬ奴の後をよく付いてきたな。」

何かの作業をしながらアンダエーが言った。

「あの先は革命軍の戦闘機で罠がかかってたんでしょ?あなたはそれを私に教えるために近づいた。違う?アンダエー元空軍大佐。」

ユキがアンダエーの後ろに立って言った。

「ご名答、さすがだよ。あと個人的に聞きたいことがあってね。」

アンダエーの顔が暗くなった。

「ノール大佐の事だ…昔かなり世話になってね。」

「ノール大佐は自身の判断で治療を断ったわ。艦長として幸せだったんじゃないかしら。」

ユキが返した。

2人とも少し暗くなったがアンダエーが付いてこいと歩き始めた。

「この戦いは早く終わらせたい。そもそもあってはならない戦いなのだ。」

アンダエーの腕は力が入りパンパンだった。


「空軍基地が…制圧されました…」

通信兵の言葉が海軍本部を凍りつかせた。

「降伏する以外…あるまい…」

ランドがオータムの後ろで呟いた。


『以前、軍部への一揆は収まらず…あっ…たった今入って来ました情報によりますと、軍部は実質降伏し、空軍基地から飛び立った兵が1名が行方不明となっています…』

テレビには降伏会見をしているアイフマンが映っていた。

空軍基地でもそのニュースは流れていた。

「民衆が強いんだよ!これで俺達の未来は明るくなるぞ!」

一人の雄叫びは数百人に伝染していった。

その時、大きな爆音が聞こえてきた。

その音は滑走路にゆっくり降りてきた。

民衆はすぐさま滑走路に向かった。

「お前も空軍の小娘だな!?降りてこい!」

男が大声で言うとコックピットが開いた

「私は空軍大尉、ユキ=ニーザだ!今すぐ基地から退きなさい!」

ユキ?が民衆全員に聞こえるほど大きな声で言った。

「誰がお前なんか小娘の言う事を聞くと思ってんだよ!?」

一瞬男の声がこだました。

しかし、ユキは動じなかった。

「逆に言うけど…」

ユキはそこまで言いかけると機体から降り、男の元へ歩いていった。

自然と周りは道を開け、男への道が出来た。

「あなたのようにただ怒鳴り散らして大勢じゃないと何も出来ない男の言う事、いずれ周りは聞かなくなっていくわよ?」

ユキは男の前でそう言った。

「お…お前っ!!」

男はユキに殴りかかった。

しかし、ユキはパンチをしゃがんでかわした後、男の腹に数発パンチを入れ、ハイキックで頭を蹴り、なし崩した。

男は軽く脳震盪のうしんとうで動けなかった。

周りの民衆はそれを見て、一歩、また一歩と後退りし始めた。

「威勢だけの男はこうなるのよ。私たちは基地を乗っ取られた。ならば自国民であっても奪還するためなら武力を使ってもいいのよ…ね?」

その言葉に周りは固まった。

「私たち軍はあなたたちの行為を止めなかった。それは止めなかったのではない。止めるためのすべを使いたくなかったのよ。同じ国民同士で血を流し、戦いたくないでしょ?軍はあなた達に、正当防衛でも危害を与えたくないからこそ、このような態度なのです!皆さん、軍があなたたちに危害を加える前に自分のいるべき場所へ…お戻りください。」

一人一人国民は後退りし始めた。

「さぁ早く!」

女性は大きな声で警告した。

民衆たちは本格的に走り基地から逃げていった。


その頃会見ではアイフマンが淡々と降伏文書を読み上げる最終段階まで話していた。

アイフマンが降伏文書に手をかけたその時、会見場に閃光弾が2個放たれた。

武装集団はその一瞬怯んだ。

そこに軍服を着た人間がなだれ込み次々に制圧していった。

その軍服はマデラン軍のものではなかった。

集団は全員に銃口を向け、1人がアイフマンの代わりに壇上にたった。

「我々は…レンドルン陸軍特殊部隊である。総統閣下直々のご命令により同盟国の動乱を収めに来た。同盟国に危害を加える人間は全て、敵と判断し、これより制圧にかかる。我はレンドルン特殊部隊マミル・ハッゲーイツ大佐である。」

マミル大佐は壇上で宣言をした。

「これは侵略活動ではない。我々は大きな間違いを犯していた。我々は今すぐに変わり新しい未来を作らなければならない。我々レンドルン陸軍、海軍、空軍は結託し軍事クーデターを起こし新たなスタートを切っている!我々はマデランと同盟を結び革命軍を討ち取らなければならない!」

その宣言に記者たちはフラッシュを焚いた。

「この場を借りて改めて宣言する。ここに新政権、レンドルン民主主義国の樹立を宣言する!」

この言葉には記者も驚き一部は会場を後にし急いで情報を持ち帰る者がいた。

「我々、マデラン国民はレンドルン民主主義国の意思を尊重し、新政権の誕生を祝福します。そして共に平和を築きましょう!」

首相はマミル大佐と固い握手を交わした。

「我々はマデラン国民の皆さんに償いきれない罪を持っております。一生をかけ償い共に歩かせて頂く御恩を忘れません。」

そのニュースは全国に放送された。

新聞の見出しは『レンドルン、クーデターにより和解』と大きく出され、号外も刷られた。

テレビでは世紀の大事件として報道されていた。

そしてその数時間後、レンドルン連邦政府は降伏し、正式にクーデターによる新政権、レンドルン民主主義国の誕生が承認された。

国際共同体では審議がなされたが、結果承認し加盟が許された。

ここで、12年以上続いた戦争が幕を下ろすこととなった。

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