新たな戦力革命軍

「ついに動くときが来ましたか…」

年老いた男が影で見えない男に言った。

「我々以外の正義など、私には必要ない。」

そういいパイプをふかした。

「革命軍!?」

大声で驚くのは海軍中将ケーンだった。

「あの、国境を持たない国と呼ばれた革命軍が…」

あまりの動揺で言葉を失った。

「もし、この艦隊襲撃が、革命軍のものだとしたら…」

「世界の均衡は崩れるな…」

革命軍はしばらくうんともすんとも言わない軍隊で、当初は「新しい、素晴らしい、住み良い正義の国」を目指し悪政国家に対し抗議を重ねてきたが、5年前の統一指名党首で選ばれたモンギン=トラファルトは「力による支配で国を作る」というかなり強引なやり方だった。

しかし、国際共同体からの制裁により軍需は衰退、占領した地域が取り戻されるなどし、活動が一時止まっていた。

黙り込む幹部に一報がどどいた。

「ケーン中将!これを!画面に出します!」

通信兵が大声で言った。

画面に出てきたのは白い背景に水色で独特な模様の映像だった。

『皆さん、こんにちは。私は統一革命軍総帥、モンギン=トラファルトです。今日はみなさんにお教えすべきことがございます。あなた方のお住まいの国の海軍、主力戦力部隊、第4艦隊を我々の兵器で撃破いたしました。』

「これは…どういう事だ!」

映像を見てケーンが驚いた。

「我が国の全ての地域に届くテレビ局の電波にこの映像が流れています!」

通信兵が大声で答えた。

『我々の目的は、人を殺すことではない…素晴らしい世界を自分たちの手で掴み取ることです!皆さん、素晴らしい平和な世界…求めてみたくはありませんか?この戦争ばかりの世界を変えてみたくはありませんか!?自分たちの手で作った国家…必ず素晴らしい国家になると、私は思います。まずは…この世界を戦争へいざなうこの軍隊を…無くしてしまいましょう…』

テレビはここで途絶えた。

ケーンは画面が切れるやいなや首相を見た。

首相は目を瞑り、無言だった。

すると海軍の電話がいくつも鳴り始めた。

「ケーン中将!漁師が軍港を乗っ取ろうと暴れていると情報が!」

「こっちも、陸軍から救援要請が!」

「空軍からも基地に大量の人間がなだれ込み、滑走路を占拠して使えないため離陸ができないと通達が!」

1人の通信兵から一気に拡散して行った。

「…くっそ!革命軍の狙いはこれか!」

あのテレビが流れてすぐに国民が暴徒化し始めていた。

戦争続きによりスラムが増え、女性まで徴兵しようと画策しているという悪意に満ちた話が回っていっている国内を革命軍は利用した。

「軍港には第96部隊を!陸軍には120から139部隊を!空軍には36から73部隊を送れ!但し、武装していない人間には一切弾丸を撃ち込むな!」

それを聞いた兵たちはバタバタと動き始めた。

「総帥閣下!全ての出入口を封鎖し、4階までの階段を防御用の有刺鉄線柵をありったけ積んで5階に待機中であります!」

大佐が報告に来た。

「どうしますか…?」

困った声でユキが聞いた。

「どうもこうも…滑走路が使えない以上、籠城ろうじょう以外に選択はないだろう…」

そういいバルコニーの地べたに座りため息を深くついた。

海軍本部ではケーンが、全細胞をフルに使い考えていた。

「ケーン中将、私に良い考えがございますよ。」

ケーンはその声のする方を向いた。

「お前は…」

声の主が影から出てきてその姿を露わにした。

「お久しぶりですなぁケーン中将。」

過去悪名高き陸軍少将ホバラリルだった。

「ホバラリルっ!貴様の出向くところではないっ!」

ケーンはホバラリルに罵声を浴びせた。

「ケーン中将落ち着いてくださいな。良い話を持ってきたのですから…」

そういいホバラリルは部下に持たせていた書類をケーンに渡した。

「作戦書です。もちろん海軍にも協力願いたい。」

ニヤニヤしながらそう言った。

「どうしますか中将。ホバラリル少将の案は…」

「仕方あるまい。」

小声で聞いた通信兵を無視してケーンがホバラリルの案に乗った。

「話が早いなぁ…さすが本部中将。」

ホバラリルはケーンに背を向けて部屋を出た。

その頃空軍基地では作戦が練られていた。

「…という訳で、この作戦を実行する…」

大会議室で400人の兵を前にサーベルが作戦を伝えた。

「さぁ、散れ!」

『はっ!』

その声を境に全員散り散りとなってしまった。

ユキはその頃、4階から布を繋げたロープで降りていた。

降りると普通に歩いて飛行機のある格納庫に向かった。

ユキは可愛らしい女の子で歩いていた。

「子供まで戦争に行かせるのかっ!」

「恥を知れ軍部!」

「こんな為に税を払ってんじゃねぇぞっ!」

不満もいいところの罵声だった。

その時1階のバリケードが解体された。

「俺達も仲間だ!」

そういうのはバン中尉だった。

「俺達も上層部のやり方に不満を持ってるんだっ!今から俺達は…ストライキを行使する!」

そういいファメスとサーベルを拘束した。

その頃ユキはがら空きになった格納庫で戦闘機を起動させていた。

「表からここまで走って3分…エンジン始動から3分で離陸までとなると…」

そう呟きながら離陸前確認を済ませていた。

「よし…エンジン始動っ…」

ユキはエンジンのスターターを押した。

すると戦闘機はエンジン音をけたたましく鳴らして動き始めた。

「戦闘機の音だ!滑走路に行けっ!」

ユキの予想通り数百人の人間が走ってきた。

格納庫の扉を機銃で壊すとブレーキを解除して誘導路を無視して滑走路に入った。

「フルスロットっ…!」

スロットルを最大にして滑走路を走り始めた。

そのまま機体は空へと上がった。

「ふぅ…危なかった…」

そう安堵すると機体を第4艦隊撃沈地点に操縦桿を倒した。

機体は地獄へ向かった。


「おいっ!さっき戦闘機が離陸したぞ、何をした!」

男はサーベル達に聞いた。

「わしは知らぬの。耐えかねた兵が逃げたのであろう。」

サーベルはシラを切った。

「けっ!総帥なのに非武装か。」

サーベルの身体検査した男が言った。

「わしは戦闘はせんのでな。」

サーベルはその言葉を川布かわきりに何も言わなくなった。

『陸軍は基地からの撤退を余儀なくされ、空軍上層部が拘束されている模様です…』

『首相は事態の説明を緊急会見で行いましたが、依然として一揆は収まる気配を見せず…』

『こちら海軍基地では港が武装した市民により制圧されており…』

様々なテレビニュースが飛び交った。

「ふっふっふっ…今こそ動く時だ…」

トラファルトは沢山あるモニター画面でニュースを観ながら笑った。

海軍では事態が収まらないまま指揮を執っていた。

「陸軍には追加であと三部隊行かせろ!」

ケーンの顔には焦りが見え始めていた。

(どうしたらいい…もう行かせる部隊は限られてきたぞ…)

心の中でその言葉が指揮を揺るがせていた。

「それじゃぁ、いつまで経っても…」

ケーンの背後からなまりのある声が聞こえてきた。

不意にケーンは後ろを見た。

「中将のままだげぇの。ケーンぞ。」

そこには歳を召した老人がいた。

その姿を見たケーンは素早く敬礼した。

2階にいたオータムも敬礼した。

「ケーン中将、この方は…?」

通信兵がおもむろに聞いた。

「ランド=ディクティーマー元軍部元帥殿だ。」

その言葉で全員兵が敬礼した。

ランドは手を挙げすっと下ろした。

全員敬礼した手を下げ気を付けしていた。

「三権分化で、わしはもう退役軍人だがのぉ。」

その言葉に少しわからない顔を全員していた。

「ランド殿は、十年前の三権分化により軍の最高指導者は元帥から首相に移ったときの最後の元帥だ。」

それを察したケーンは補足を入れた。

「わしが退いた時、ケーンはまだ准将だったのぉ…あ、そうか…君たちの教わった階級では実質上少将と言った方が良いかのぉ。」

ランドは頭を掻きながら言った。

「それはともかく、ランド元帥殿はなぜここへ?」

ケーンがランドに質問した。

「オータム准将に呼ばれたんじゃ。あ、今は大将総帥…だったかの?」

頭の引き出しを探っている言い方で答えた。

「ランド元帥殿、こちらです。」

そう言うとランドはオータムのいる2階に向かって歩き始めた。

「君たちは引き続き作業に当たってくれ。方針が決まり次第すぐに指示する。」

『はっ!』

オータムからの指示で静まりかえっていた部屋がまたドタバタとうるさく動き始めた。

「いつの間にか人の上に立って指示できる男になったもんじゃのぉ、オータムよ。」

階段を上がってオータムのそばまでやってきたランドがそう呟いた。

「ランド元帥殿こそ、その歳になってもまだこの階段を登れるなんて、昔と変わりませんなぁ。」

しっぺ返しのように言葉を当てあった2人は目をしばらく合わせていた。

「…で、わしに何をしてほしいのかの?」

本題に入ろうとしたのはランドだった。

「この不意打ち、カウンター取りとも呼ばれたあなたなら、何か秘策でも作れそうな気がしたので。」

オータムはより真剣な表情でそう言った。

その頃ユキは地図を開いて飛行路を考えていた。

「ここから150マイル…ここまで2000フィートで進むとしたら…ダメだっ!燃料が足りない…」

ユキは頭の思考回路をフル回転させて考えた。

無線機なんて持ってくる余裕のなかったユキにとっては往くも帰るも詰んだ光景だった。

その時、右から戦闘機が来るのが見えた。

「やばいっ!見つかった!」

そう言うとユキは操縦桿を左に倒し高度を下げた。

戦闘機はユキの背後に付き追ってきた。

しかし、射程内に入っても撃っては来なかった。

「なんだ…?」

その隙を見たユキは戦闘機の後ろに付いた。

「ここであの映画のひねり込みが使えるとは…」

そう言うとユキは射程内に戦闘機を捉えた。

「よし…っ!」

引き金を引こうとした時、戦闘機はバンクを振った。

その後ユキの隣に並行して飛行し始めた。

「流石だユキ大尉!」

戦闘機から顔を出したのは若い男だった。

「あなたは!?」

戦闘機の爆音に負けないような声で言ったが、男には聞こえていなかった。

すると男は手を軽く動かして暗号をユキに送った後、機体を陸方向に倒した。

「『右30°で着陸体制…』だな。」

ユキもその男を追うように機体を陸に向けた。



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