新たな介入者

「はぁ!?もう部屋がない!?」

そう大声で驚くのはマロニスだった。

ホテルのフロント係はそのリアクションに困った。

「は、はい…さっきの14階の事件で1412号室と1421号室が国家防衛省からの命令で使用差し止めが来てまして…あと一部屋しかなくて…」

「どうにかならないんですか!?」

マロニスがフロントを乗り越えそうな勢いでフロント係に言った。

ここまで必死になるのは空いている一部屋が一人部屋で、無理やり入れば床に一人寝れるという話をホテルの従業員から聞き、スーザとマロニスとバンの男3人でジャンケンをしてマロニスが一発一人負けを期したからだ。

「まぁいいじゃないかマロニス君。君は女性2人のボディーガードということで…」

「だったらバン中尉がすればいいじゃないですか!!」

バンがマロニスを慰めると、マロニスはバンの眼前にまで迫り反論した。

「公平なジャンケンだ。妹を頼むよ。」

スーザはマロニスに手を出すなよ?と言わんばかりの圧でお願いした。

「あ…お、おう…」

マロニスはスーザの圧に負けた。

「じゃあお願いします。」

こうして部屋割りが決まった。

バンとスーザの2人は空いていた1384号室に、ユキとニーアとマロニスの3人はそのまま1420号室に泊まることになった。

「はぁ…なんで俺がボディーガードにならなくちゃいけねぇんだよ…それも年下の上司に…」

荷物を整理しながらマロニスがブツブツ独り言を言っていた。

「それもタダ働きで…」

ため息もプラスされた。

その頃ユキはニーアと一緒に風呂に入っていた。

140cmほどの2人が入るにはちょうど良かったためマロニスが2人いっぺんに入れた。湯船には、まだ12歳と13歳の大尉が並んで入っていた。

「ふぅ…」

2人は姿に似合わないため息をついた。

「ねぇニーア…」

「なに?」

ユキがニーアの過去のことを聞こうと呼んだが、触れない方が良いのではと頭をよぎり、聞き返したニーアに言い出せなかった。

「あの…さ…」

一歩の踏めないユキだったが、先に年上のニーアが察した。

「お兄ちゃんと会ってどう思う?とでも聞こうとしてた?」

読まれたユキだったが、悔しくはなかった。

「あ、うん。傷つくかと思って言い出せなかったけど…」

ユキは素直に思っていたことを言った。

「別にいいよ。私ね、ずっと写真みて頑張ってたよ。いつか会えるその日を願って。ずっとね。森で会った時に私のことを逃がしてくれたじゃない?その時にこの人になら全て話せるって思ったの。」

ニーアも全て話した。

それを聞き終えたユキはもう一つ質問した。

「あのさ…昔、スーザに抱きついて、『ダメ!』とか言ったことある?」

それを聞いたニーアは少し考えた。

「拉致される前の旅行で危険な遊びをしようとしたのを私が止める時に抱きついてダメって言った記憶があるわ。でもどうして?」

ニーアはそう言うと質問を返した。

「スーザがマロニスとゴーラスの昇格より上の階級に昇格したから間違いだって言って総帥の所へ行こうとしたのを私が抱きついて止めたのよ。そうしたらスーザの様子がおかしくなってね。その上私のことをニーアって言ったから、もしかして昔同じシチュエーションがあったのかなぁって思っただけよ。」

そうユキが答えた。

「あと一つ聞きたいんだけど…あの写真って…」

ユキが言いかけると風呂場の戸が勢いよく開いた。

そこにはマロニスがいた。

マロニスは床にあったタオルで滑り戸を開けてしまったのだ。

「き、き…」

ユキとニーアは悲鳴を出す寸前だった。

「あ…あの…」

「キャー!!」

ユキとニーア悲鳴と共に風呂場にあったものをマロニスに投げつけた。

「ご、ごめんなさい!」

マロニスは戸を閉める前にビンタももらって退散した。

「痛てぇー…」

風呂上がりにユキがマロニスの怪我した場所に消毒と絆創膏を貼り処置をしていた。

ビンタの時に出た鼻血は自分で処置済みだった。

「いきなり開けるからいけないのよ…」

ユキが他人事ひとごとのように言った。

「別に覗くために開けたわけじゃねぇけどな…」

マロニスがビンタされた右頬を手で擦りながら言った。

「それにお前らの身体見ても得しねぇって…」

マロニスがそう言うと今度はもう片方の頬が腫れた。

「ほい、すひまへんすいまへん…」

頬が腫れて聞き取りづらいが謝った。

「一言多いっての…それにさ…」

ユキが言いかけると電話が鳴った。

ユキは受話器を取った。

電話はフロントからだった。

「もしもし。」

「ユキ=ニーザ様ですか?フロントの者です。」

「はい。何でしょう?」

「至急、ニーザ様と話がしたいと言われる方から電話があります。お繋ぎしましょうか?」

外からの電話だった。

「はい。お願いします。」

そう言うとガサガサ音が聞こえたあと繋がった。

「もしもし、ニーザですが?」

「ユキか?」

その声はサーベルだった。

「サーベル総帥、どうしたんですか?」

「盗聴される危険性があるからここでは説明出来ない。明日部下を向かわせるからついて行ってくれ。以上だ。」

そう言いサーベルは一方的に電話を切った。

「ユキ、サーベル総帥は何だって?」

マロニスが聞いた。

「分からないけど話があるらしい。明日、サーベル総帥の部下が来るからついて行けだって。」

「ふーん。そうか。」

ユキがそう説明すると、マロニスは冷めた感じで返した。

その後3人はいつしか眠りにつき朝を迎えようとしていた。

次の日の朝、1420号室に泊まっているユキは部屋のチャイムの音で起きた。

ユキは床で雑魚寝しているマロニスを踏みつけてドアの方へと向かった。

もちろんホルスターに手をかけながらチェーンロックを外しドアを開けた。

「目覚めはどうだい?ユキ。」

そこにはファメスがいた。

「あ、おはようございます。今から行きますか?」

寝ぼけながら挨拶を交わしユキが聞いた。

「いや、結構時間があるから慌てなくていい。レディ達は時間がかかるだろうからな、その分早く来ただけさ。あと1時間半で支度できるか?」

ファメスがそう言った。

「わかりました。1時間半を目処に降りますんで、ロビーで待っててください。」

ユキは眠い目を擦りながら答えた。

「じゃあまた後で。」

そう言いファメスはドアを閉めた。

「誰だった?」

踏まれたマロニスが起きて聞いた。

「ファメス中将…ふわぁ…1時間半後にロビーで待ち合わせして下に戻った。ニーア、起きてー!」

ユキはそう言いながらニーアを起こした。

3人は出歩ける服に着替えた。

ユキは肩下までの髪をポニーテールにし、ニーアは首まである横髪を耳にかけヘアピンで留めた。

「おーい、そろそろ…」

マロニスが2人を呼びに部屋に戻ったが、2人の変貌ぶりを見て見蕩みとれていた。

「…なに?」

低めの声でユキが聞いた。

「あ、いや、そろそろ時間だから呼びに来たんだよ。い、急げよ!」

見蕩れていたことを隠すかのようにマロニスが焦りながら2人を急かした。

マロニスは自分の荷物を持ってロビーへ向かった。

ロビーに着くとファメスが待っていた。

「あの…スーザとバン中尉は…?」

周りを見渡し、2人がいないことに気づいたマロニスはファメスに聞いた。

「あの2人は別ルートでね。向こうでまた合流する予定だから。」

そう答えた。

しばらくすると2人も降りてきた。

2人はフロントにカードキーを返してファメスのところへと来た。

「あれ?マロニスは?」

ユキがマロニスがいないことに気付いた。

「マロニス大士は別ルートでね。もう先に本部に向かったよ。」

ユキはファメスの言葉に少し違和感を覚えた。

2人はファメスの運転で港に向かった。

港に着くとそこには大型客船が停泊していた。

「サーベル総帥が、レディには少しのんびりしてほしいと言ってチケットを取っていたんだよ。もっとも、レンドルンの事で渡しそびれていたそうだがな。」

ファメスがそう言うと3人は客船に乗り込んだ。

人通りの無いデッキを歩いているとユキがホルスターから拳銃を取り出しファメスの後頭部に突きつけた。

「ユキ!なにしてるの!?」

それを見たニーアはそう叫んだ。

「ユキ大尉、何をしてるんだ?」

ファメスがそう言いながらユキの方を向き直した。

「あなた…ファメス中将じゃないわね?」

ユキがそう言った。

「ドッキリか何かか?驚かすのは…」

「ファメス中将は…右利きじゃないのよ。左の胸ポケットにホルスターがあるようだけど?」

その男の話を遮るかのようにユキが言った。

「はぁ…参った参った。降参だよ、ユキ大尉。」

その声はファメスでは無かった。

「スーザもマロニスもファメス中将の部下のバン中尉も騙されるほどの変装術を持ってるということは、元レンドルン陸軍中将、ドーバ=ミクイレフかしら?」

「すべてお見通しか…あっぱれだよ。」

ドーバはそう言いながら変装を解いた。

「私達に何の用?私に会うだけではないでしょ?わざわざこんなお高いところに呼んだのだから。」

銃を突きつけたままユキが聞いた。

「その前にさ…俺は別にお前らの命を奪いに来たわけじゃないから、そのほこを可愛いお尻のホルスターに収めてくれねぇか?こんなところで見られたら、あんたらも困るだろ?ここが部屋だからこの中で話そう。」

ドーバはそう言い部屋の扉を開けた。

「さすが元キャリアね、レディの使いに慣れてること。」

ユキもそう言いながらホルスターに拳銃をしまった。

「マデランも12歳の少女にも拳銃を渡す国になったとは驚きだな。」

ドーバはそう言ってドアを閉めた。

「レンドルンも13歳の少女に拳銃渡してるじゃない。」

ユキは荷物を隅に置いてそう言った。

「結構高かったんだぜ?この部屋。」

ドーバはそう言って机の上のワインのようなドリンクを飲みながら椅子に座った。

「で、私たちに何の用?こんなクルーズのプレゼントを用意しただけじゃないでしょ?」

ドリンクを味わうドーバにユキが言った。

「うーん。美味しいぶどうジュースだな。」

ドーバはそう言うと立ち上がりベッドの上に腰掛けた。

「さすがはサーベル総帥がゴリ押しする新兵だな。天才と言われるだけのことはある。」

ドーバはそう言うと一呼吸置いて続けた。

「親レンドルン派のテロリストがこの客船を乗っ取ろうと画策しているのを、ちょっと小耳に挟んじゃってね。レンドルンが仕向けたとも言われかねないからさ。俺は退役軍人だからさ、ちょっと困るんだよね、部下の顔に泥塗られるのは。」

「だから、この船が制圧される前に止めろと?」

ユキが聞いた。

「ちょいと違うな。」

ドーバがそう返した。

「ならどうしてほしいわけ?」

ユキがストレートに聞くとドーバは深呼吸した。

「レンドルンの軍にいたキミなら分かるだろう。こういう時どうするのか?」

ドーバがニーアにあざとい質問をした。

「こういう時は…船ごと無かったことにするかもね。」

ニーアがそう答えた。

「おいおい、そんな物騒な事考えるのはキミの元上司だろ。俺は退役軍人だって言ったろ?」

ドーバが冗談のごとく笑い否定した。

「俺なら占拠される前にテロリストを殺して海に投げるな。そうすればどっかの島で見つかっても身元不明の死体として見つけられるだろうからな。」

そう自信満々に言った。

「あなたは参加するの?」

ユキが聞いた。

「いやいや、俺はもうおじさんだぜ?遠慮させてもらうよ。」

そうドーバが言うとベランダのドアを開けた。

「いい眺めだな。」

「もうこの船は出航したわ。逃げれないわよ。」

そうユキがホルスターに手をかけて言った。

「おいおい、言ったろ?俺はお前らを殺すつもりは無いって。」

そう言うとベランダのフェンスに寄りかかった。

「じゃあどうするのかしら?」

そう言いニーアもホルスターに手を掛けた。

「こうするのさ。」

そう言うとドーバは頭から外に落ちていった。

2人は急いでベランダに出て下を見た。

すると1隻のボートが客船から離れていった。そのボートにはドーバが乗っていた。

「チッ、やられた!」

ユキが悔しがりフェンスを思いっきり叩くとドーバは手信号をユキ達に見せた。

『敵は約10人、ハイジャックしてから追加で6人。健闘を祈る。』

最後にヒントを授け消えていった。

「ユキ、これからどうする?」

ユキにニーアが聞いた。

「仕方ない、取っ捕まえるしかないみたいね。」

そうユキが言った。

2人は部屋に入りどうすべきか考えた。

「まず、テロリストを見つけないとね。ドーバがあんな用意周到に私たちをおびき寄せるということはデマでは無さそうだし。」

ユキがそう言った。

「まずは徹底的に見て回って見よう。」

ニーアが提案した。

「今はそれしかやれることはないようだし。そうしてみましょう。」

ユキはニーアの提案に乗り、2人で探しに外へ出た。





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