交錯

昼過ぎ、郊外をユキは走っていた。

段々森に入りハードなジョギングをしていた。

すると横の薮から物音がした。

ユキは腰のホルスターに手をかけ、音のした方を見た。

するとユキは気配を感じ取り拳銃を出して後ろを振り向き構えた。

そこには自分と同じくらいの少女が拳銃を構えていた。

迷彩柄でレンドルンの軍服を着ていた。

両者ともに拳銃を相手の額に向けている状態だった。

「あなたはだれ?」

ユキが質問した。

「あなたこそ。顔を見てもレンドルンではなさそうだけど。」

少女も答えた。

するとユキは少女の一瞬の隙をつき拳銃を腕で跳ね足を引っ掛け倒した。

ユキは倒れた少女に銃を突きつけた。

「あなたの名は?所属を答えなさい!」

ユキが聞いた。

「私の名は、アユ=バンデム、レンドルン連邦海軍大尉よ。」

アユは渋々答えた。

するとユキは拳銃の照準をアユから外し、地面に落ちた拳銃を拾いアユに差し出した。

「今立ち去れば命は助けるわ。拒否したり、その拳銃を構えたら命はないと思って。」

そうユキがアユに忠告した。

「…わかったわ。」

そう言い残し森に消えていった。

そこで気づいた。

自分は国境のある森にいることを。

「やばい…出ないと…」

そうやって外に出た。

ホテルではスーザが外でジョギングしていた。

森を右手に崖の下の道を走っていた。

その時藪から物音がした。

スーザは藪に銃を構えた。

するとユキが出てきた。

「ユキ!?なんでそこから…」

スーザは驚きユキに手を伸ばした。

「知らないうちに国境近くを走ってたみたいで。さっきの襲われかけたから逃げてきたのよ…」

ユキはスーザの手を掴み道に出た。

「ユキもジョギング?」

スーザがホルスターに拳銃を直しながら聞いた。

「そうよ。身体が訛ってるから。」

手をパンパンしながらユキが答えた。

おもむろにスーザが腕時計を見るとお昼過ぎだった。

「もうランチの時間には遅いけど昼飯食べに行かない?」

スーザが提案した。

「そうね、喜んで。」

そう言いユキとスーザは走り出した。


「このことを知ればスーザはどう思いますかね。」

ファメスはコーヒーを片手に書類に目を通した。

「まぁワシを殺しにくるだろうな。」

サーベルがコーヒーを一口飲みカップを置いた。

「あの時、軍を撤退させなきゃレスト島の悲劇は免れたのでは?」

ファメスはそう言いコーヒーを飲んだ。

「仕方あるまい。予算が降りず、撤退するように大臣から言われたのだからな。それに、もう3年経っておる。時間が解決するだろう…」

サーベルがコーヒーを一口飲み飲んだ。

「まぁ、サーベル総帥がそう言うのであれば…」

そこまで言いかけてファメスはコーヒーを飲み干しカップを置いた。

「もう2時か…そろそろ出航の準備をせねばな…」

そう言うとサーベルは思い腰を上げた。


「ではお前は負けたというのか?」

そういうのはレンドルン海軍大将レムだった。

「面目ない限りです…」

アユが恐縮しながら謝った。

「もうよい。体制が整うまで、あと4日はかかると上は言っている。それまでお前は休んでおけ。」

レムがアユにそういった。

「…イエス、サー!」

そう答え自分の部屋に戻った。

部屋に戻り勢いよくベッドに突っ込んだ。

「お兄ちゃん…」

そう言い手の中の写真を眺めた。


その頃ユキは遅いランチを食べていた。

「おいひぃ〜!」

ユキがパクパクとデザートのパフェを食べていた。

「はぁ…こんなに変わるとは思ってなかったよ…」

スーザは出会った時とは違う少女な一面に困惑していた。

おもむろにスーザが財布を取り出すと写真が落ちてきた。

それを拾ったユキは態度を一変させた。

「これは!?」

ユキが写真を指差しスーザの目の前にで見せた。

「妹だよ…3年前の旅行先で撮ったんだ。はい、これ。」

店員に会計を済ましながら答えた。

ユキはひどく驚いた。

なぜならさっき自分に銃を突きつけた少女がこの写真の少女に酷似していたからだ。

「それがどうしたって言うんだよ。」

スーザが写真を受け取りしまいながら聞いた。

「さっき鉢合わせしたレンドルン兵士とそっくりなの。顔が。」

ユキがさっき起きたことを話し始めた。

「そうか…」

まるで忘れたいと言わんばかりにスーザは冷静を気取り席を立った。

「悪い、先に寄りたいところあるから先に戻っててくれ。」

スーザはそう言い残し店を出た。

「スーザは知らなかったのかな…」

ブツブツ独り言をユキが言っていた。

外に出るとユキは声をかけられた。

「ユキ。」

その声の方へ振り向くとノールが居た。

「あっ、ノール大佐。」

その姿をみてユキは姿勢を正した。

「いや、構わんよ。」

ノールはそう断った。

「アンスタツに行ったのだと思っていましたが…」

ユキが聞いた。

「行くはずだったがね。アンスタツからドッグが2隻分しかないと言われてね。しかも軽巡用のドッグは一つだけしかなくてね。被害のひどいアンダーが行くことになったんだよ。サーザーはこっちの整備士に修復を依頼してね。こっちに当分の間停泊することになったんだ。」

ノールは歩きながらそう話した。

「あの…メルディー少佐は…?」

ユキがサーザーに収容されたメルディーの事を聞いた。

「メルディー少佐は随分強いヤツでな。あんな重傷の体で歩けるんだそうだ。民間の病院で今治療中だ。」

ノールがメルディーの状態を教えた。

「それにしても、あの奇襲の時の君の操縦には感服したよ。」

ノールがユキの操縦テクニックを褒めた。

「いえ、父の飛行訓練をいつも見てましたから。」

ユキは自分を謙遜した。

「サーベル総帥もファメスも感動しただろう。あの技を。」

ノールが意味深な発言をした。

ユキもそこが気になった。

「あの技とは?」

「実はな、君がレンドルンの戦闘機を攻撃したやり方は君のお父さんと、ハングリッド=ドンレールというサーベル総帥と同期の飛空士しか出来ない技だったんだよ。」

ユキは無意識にやったあの技が自分の父親や、サーベル総帥と同期の飛空士しかできないと知り驚いた。

「今は、2人が故人になって出来る人物が居なくなったからな。2人はまた見れて感動してるはずだ。俺もその1人だがな。」

そう懐かしそうにノールが話した。

その頃マメスの艦橋では新たな作戦が練られていた。

「基地の西側からボスフォラスが艦砲射撃を行います。その後偵察機と戦闘機が確認し、降りられるようなら降りて殲滅を行う、という作戦です。」

ファメスが本部から来た将校相手に説明した。

「では艦砲射撃したボスフォラスはそのまま基地に岸付がんつけしていいのだな?」

ボスフォラス副艦長のターズ=ファーストが質問した。

「敵の攻撃が予想されますがそのまま岸付けしても構わないと思われます。」

ファメスが説明した。

「奇襲を仕掛けたレンドルン海軍の戦艦共はどうする?また来ないとも否めないぞ?」

本部大将のトトレス=ガルゼがファメスに聞いた。

「スパイからの情報によりそれは無いと思われます。」

ファメスはそう答えた。

議論を続ける男どもの船には冷たい雨が打ちつけていた。

「たぶん…あいつは生きてる。ただ…」

「レンドルンの兵士になってた…ってことか。」

その頃ホテルではスーザとマロニスが話していた。

「ユキと同等に戦えるほどになったのか…」

マロニスがそう呟いた。

「とにかく、あいつに早く会わないと…」

スーザが写真を眺めながら言った。

「おいおい、敵陣に突っ込むつもりか!?」

マロニスがそう言うスーザを止めた。

「どんなに短気でもそんなことはしねぇよ。」

スーザはそう言い返し立ち上がった。

「でも…必ず取り戻す!絶対に!」

マロニスからは背中しか見えなかったが、スーザが何かを考えていることはそれだけでも伝わってきた。

4人が泊まっているホテルにも冷たい雨が降り始めた。

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