訓練と新たな仲間

1725年10月

この月で戦争が始まって12年となった。

とある建物から2人の男が訓練している兵たちを見ていた。

「15、6の子どもの中に12歳の、しかも女の子がいると目立って見えるな。」

そういうのは空軍の空母戦艦「マメス」の艦長、サーベルだった。

「君が打心するほどの子だったな。周りの子達と同等に訓練できておるわい。」

サーベルはうなずきながら言った。

「はっ、寛大な受け入れ感謝致します。サーベル総帥。」

背を固くし感謝したファメスだった。

「あの子の飛行訓練は確かマメスで行う予定だったな。シャークを使うといい。」

サーベルはそういった。

「え?しかし、あれは…」

ファメスは驚いた。

J-1000、通称シャークは試験飛行も終えていない新型でまだ戦地に繰り出しておらず、その上極秘としてファメスより下の兵にはまだ教えられていないものだった。

それをスラム育ちの子どもに乗らせるなど前代未聞だった。

「私は偏見が嫌いでのぉ…君よりずっと前から色んな将兵を見てきたのだ。あの子は…必ず我が国に勝利をもたらす、勝利の女神になるじゃろうなぁ…」

そう言うサーベルをファメスは唖然あぜんと見るしかなかった。

「明日にもあの子の乗艦を認めよう、オークへ打心しておく。シャークは厳戒態勢、見えない形で夜中にマメスへ運び込みたまえ。君指導で構わん。では頼んだよ。」

そう言うとサーベルは建物へ向かって歩き始めた。

「今日は孫の誕生日会でな…何がよかろうか…」

そう独り言をいい戻った。

ファメスは敬礼して送った。

「いちっ!にっ!…いちっ!にっ!…」

まだ幼げ残る男達と幼いとしか言えない女がランニングしていた。

「バントラ、どうだ?」

ファメスがグラウンドに出てきた。

話し相手は教官でファメスと同期のバントラ大佐だった。

「まぁぼちぼちってとこかな。陸上での離着陸は全員クリアだったし、低空侵入も完璧だ。だが空母の発着艦はどうだろうな…」

バントラは生徒の優秀さを口にしたが明日の飛行訓練のことでは口を濁した。

「訓練は4日間だろ?安全なんだろうな?ゴリアル海は一触即発の海域なんだろ?」

そう心配の言葉も出した。

「護衛艦の“アンダー”と“サーザー”も付いてくるし、3日目からは戦艦“ボスフォラス”も参加すると海軍から連絡も来た。」

その心配を払拭するようにファメスが説明した。

「あいつの親はボスフォラスの副長だからな。しかし、護衛艦2隻はクルーザー級だし、あの子達はまだ戦闘訓練をしてないからあなどっちゃいけんぞ?」

バントラが走る生徒を眺めて言った。

「バカ、あのマメスが沈むなんてことないだろ。」

「まぁそれは神話みたいなものだからな。」

笑い話のごとく2人が話していた。


その日の夜、寝る直前に生徒達に指示書が手渡された。

「明日からは最後の訓練だ。空母からの発艦、着艦、そして戦闘訓練も行う。向こうの教官に馴染むように心の準備をしとけよ。以上!」

そう言われて全員部屋に戻った。

「わくわくすんな!いよいよ明日だっ!」

興奮して言うのはマロニス3等飛空尉だった。

「そういえばさ、明日の部屋は女も入るらしいぞ?」

二段ベッドの上から言うのは、マロニスと同じく3等飛空尉のスーザだった。

「それまじ!?めっちゃイイじゃん!」

マロニスが喜ぶのもつかの間。

同室のゴーラス3等飛空尉が机に向かって言い始めた。

「でも、その女はスラム育ちらしいぞ?」

「マジかよ…あっ、でも何でここにいるんだ?」

マロニスが疑問を抱いた。

「なんでもファメス中将殿がスカウトしたらしいぞ?」

そうスーザが言った。

「どんな女か楽しみだな!」

マロニスは少し期待した。

ユキは古い家族写真を抱きしめ祈った。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます