ご先祖様のむっつりスケベは尋常じゃなかった


これは異世界窃視シーパーズアイを持つ者に対して語られる口伝なのだが、リストレア家が栄えたのは、ほんとうに救いようのないほどにだったからだ。


ご先祖様の話をしよう。

家系図ではリストレア家はもともと羊飼いである。

俺の異世界窃視シーパーズアイは、初めは異能力シギルとして狼少年のロンギガスアイと呼ばれていた。

狼少年のロンギガスアイは遠くのものを観れるのと同時に、サーモグラフィの様に色で心を識別する。


羊の心の状態をケアするのも羊飼いの役目だからだ。


一応、羊毛としては名の知れたブランドであり、貴婦人からの評判は上々だった。


国王陛下が居る城から離れた丘の上に自宅を設けて、1ヶ月に一度城へ品物を届けるのが仕事だった。


城下町に品物を届けると、彼は街をウロウロし始める。


隠された果実を見るためだ。


それはふくやかだったり、若若さが憂いだものだったりする。

見えるか見えないかギリギリのライン、突然の雨で少し透けた甘美極まる下着、街の娘が果物を手に取る時に、屈んだ時に見える艶やかな谷間。

色別で見るとギリギリで艶めかしい身体のラインも見えたらしい。


彼は内心でニヤつきながら、キリッとした顔立ちで狼少年のロンギガスアイを唱え、威風堂々と城下町の女の子の、夢うつつのを眺めていた。



顔立ちは良い方らしく、彼が通ると新しい羊毛が入ったことを知らせ、娘たちは彼に群がった。

この口伝をいつも聞いていて釈然としないのだが、そのくせ恥ずかしがり屋ですぐに娘たちから逃げた(逃げつつまた谷間を見ていた)。


ただ弱いくせに勇気だけはあるようで、女性が襲われるところを半殺しにされながら助けたり、貧しいものには余り物の羊毛を与えたり、たくさんの人々に優しくふるまった。


そのせいか、危害を加えることもなく、城下町での評判は上々のものあった。

男にもモテたらしいが、俺はコレはもう聞きたくなかったので知らない。



そんなこんなで王宮貴族からの信頼得ることになり、舞踏会と言う名のドレスショーにお呼ばれされた。


ここには他の城からの特に若い貴婦人や、がお呼ばれる一大イベントである。



王宮には衣替所と、化粧部屋とが別れていた。


彼は化粧部屋に案内されると

「あちらでご婦人方はお着替えをなされている。化粧係、衣新調等、各自ここで待機するように」

とそれぞれの召使らしき人間が場所を案内した。



衣替所の近くに通されると、彼は頭を抱えた。



今まさに、王宮貴族の生の着替えを見える一生に一度のチャンス。

しかし、これまでのキャリアを全て棒に振るうだろう。

ダメだ、ダメだ。


魔導兵もいるんだぞ。すぐに気づかれる。


何もかも失うぞ。よく考えろ。



彼は頭をあげると、衣替所の扉に僅かばかりの隙間があることに気付いた。



・・・何もかも失う?


いや、俺は元々はただの羊飼い。

罪を背負った後は、また他の城下町近くの丘で、羊と一緒にゆっくり暮らせばいい。


今大切なことは何だ。


男として、威風堂々と胸に誇り持ち続けることが出来ることは何だ!!


一生に一度の若い貴婦人たちの着替えを視ることだ!!



・・・お前の異能力はなんのためにある。



「今日、この日のためだ。」



彼は自問自答しつつ最後にそうつぶやくと、ゆっくりと魔力を眼に込めながら、心の中で強く唱えた。



狼少年眼ロンギガスアイ!開眼!」

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