第50話

「ただいま帰りましたー。」


 優等科の教室のドアを陽気に開ける。

 ミシェルを待っていたのは・・・どんよりとした何にも例えようがないほどの、最悪の雰囲気だった。

 ラルトスは教壇に突っ伏してぐうぐう寝ている。


「ど、どうしたの?この雰囲気は・・・。」


「ミシェルぅーーー、助けてーー・・・。」


 まだ、みんなプリントを解き終わっていないようだった。

(なるほど・・・だからこんなどんよりとした雰囲気なのね・・・。)


 正午まで残りは20分。このままだとミシェル以外、楽しい楽しい補習が待っている。


 メドアサニアのプリントをのぞき込んでみた。そして、驚く。

 もうプリントを解き始めて2時間以上経っているというのに、1問目すら解けていないのだ。


「10×3-4÷3・・・。ただの計算だよね、1問目って。メドアサニアちゃん、この問題をとけないの・・・?10歳だから、かけ算、わり算、ひき算ぐらいはお家でやったことあるよね。で・・・切るよね?」


「なにそれ。こんな変な記号みたことないんだけど。」


 きょとーんとした表情で答える。

(だめだ、こりゃ。基本がわかってない。)


「メドアサニアちゃん・・・補習、頑張ってね。」


 ミシェルにはこう言うしかなかった。


「終わったーー!」


 ここで意外な声を上げたのはライトだった。

 ライトのプリントを寝ているラルトスの代わりに受け取って、解答を見てみる。


(全部、間違ってる!!もしかして、適当に答えを書いた??)


呆れた表情でライトを見る。


「これ、適当でしょう?」


「しーーーっ!ラルトス先生に聞こえるだろ!?ってか、当たり前じゃん!こんな変な文字、読めないし!なんでミシェルは読めるんだよ。これ何語?」


「日本語・・・だと思うけど、何故だかわからないけど私には読めたわ。」


 答えを若干はぐらかす。


「ふわあ、うるさいわね~。あら、もう12時になるじゃない。あー、よく寝た。」


 ラルトスが起き、うーん、と伸びをする。


「プリントの方は・・・時間内の提出をしたのはミシェルとライト・・・?ライト、これ間違っていますねえ。全部。ってことはミシェル以外は補習ね!残念だわ。もっと解けると期待していたのに。」


 精一杯の嫌味を言われた気がする。どうしてこの先生はこうなんだろう・・・。


「あー楽しみだわ。補習の時間が。」


 ラルトスがウィンクをパチン、とする。


「ライトもしっかり来るのよ。その補習が嫌だといって、嘘を書くような根性をたたき直してあげるわ!このラルトス様がっ!!」


「えーーーーー!」


「キュイ――!」


 ライトとユリの声が響き渡った。

 他の生徒たちはしゃべる気力さえも失っていた。


 あまりにもみんなの出来が悪かったため、昼からの補習ということになり、ミシェルは残り半日自由のみとなった。


(こんなに自由でいいのかしら・・・?)


 そんなことも若干思っていた。


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