第2話

 片手に参考書、片手にカバン。

 私、上野沙紀は道路を猛スピードで走っていた。

(あーだからこーなる。こーだからあーなる。)

 数学の説明を読みながら、走る、走る。

 沙紀はぎりぎりセーフで教室に入った。


 教室の中からは、

「何で来たんだろう?」

「テスト受けるだけで成績がいつも4とかせこいよね。いつも学校来ないくせに。」

「また勉強してるー暗ッ。」

 なんて声が飛び交っている。


 そう、私は根暗。勉強しか頭にない。自分の見方をしてくれる人なんて誰もいない。

 別に悲しくなんかない。なのにどうして泣けそうになってくるんだろう?


「上野なんか来なくていいのにな。」

「まじ、死ねばいいのに。」


 この言葉にはさすがの私でもすごく傷ついた。私は望みどおり、死んでやろうと思った。


 テストが始まる10分前。教室はシーンとしている。教室だけではない、学校中が。

 私は静かに屋上へ向かった。


 屋上から眺める景色は最高だった。私の目に映る景色はこれが最後だ。

 怖い。怖い。怖い。

 涙があふれてくる。お母さんに申し訳ない。でも、もう耐えたくない。


 「今までありがとう」


 そう言って、沙紀は屋上から飛び降りた。


 *   *   *


 「おいっ!沙紀!沙紀!死ぬんじゃないぞ!」

 父さんの声だ。ごめんね。もう生きる気力はないよ。じゃあね。


 私は2016年10月16日9時20分に息を引き取った。


*   *   *


 まぶしい光だ。目をそっと開けてみる。視線の先には川が広がっていた。

「すごい大きな川。どこにつながってるんだろう?」

「永遠じゃ。」

 (え?だれこのお爺さん。仙人みたいな人だ)

「儂は神の化身・・・とでも言っておこう。死んだ人間は必ず儂に会うことになっておる。」

「はあ。」

「その川はな、三途の川だ。それを渡り切ったら分かれ道があるのだ。」

「分かれ道?」

「そうじゃ。右に行けば転生、左に行けば生まれ変わり、ますっぐ進むと永遠修行の道だ。」

(転生と生まれ変わりの違いって何だろう…?)

「転生は記憶が残ったまま、異世界に生まれること。生まれ変わりは地球に生まれ直すこと。」

「へー、」 

(さっきから心読むんじゃないよ!変な考えまで読み取られたら大変じゃない!)

「変な考え?」

(し、しまったあ!!)

「・・・お願いがあるんです。」

神の化身のお爺さんには隠しても無駄だと思ったので話すことにした。

「私、友達に囲まれた生活をしてみたいんです。生まれて一度もトモダチを持ったことがないから。」

「・・・ふむ。じゃ、お前さん転生するがよい。お前さんの努力次第で友達が増えもし、減りもする。そんな世界へ転生させてやろう。」

「い、いいんですか?」

「いいも何も。決めるのはおまえさんだ。残されている記憶を有効に使って願いを叶えるんだな。」

「ありがとうございます。」

「ただ、一つ警告しておく。今度自殺したら永遠の修行の道に強制送還される。もう生まれ変わりすらできないからな。気をつけなさい。」

 その言葉を聞き、私は三途の川を渡り切り、右の道、転生の道を選び、進んでいった。


*   *   *


「奥方様!おめでとうございます!!可愛い女の子がお生まれになりましたよ」

(生まれた?私が。記憶があるから言葉もしっかり理解できる。まだ目も開けれないし、しゃべれもしないけど。)

「可愛い娘ね。あなたの名前はミシェルよ。ミシェル・フランソワーズ。よろしくね」

(ミシェルか・・・。可愛い名前。なんかもったいないな。)


こうして私はフランソワーズ家の次女として異世界転生を果たした。

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