第4話 力ずくだ!!

 魚人を見てギルバードは怯えたが、どうにか平静を取り戻した。この分だと、海王を前にしたらショック死するんじゃないだろうか。

『ここからは、私が案内致します。海の城の城門前まで空間転移で飛びます。準備はよろしいでしょうか』

「ああ」

『それでは行きます』

 

 瞬間。


 景色は一変する。

 そこは青が支配する世界。

 小さな魚、でかい魚、サメやクジラなんかが泳いでいる姿も見える。

 海の中はまさに別世界だ。かつて瘴気で荒れていたここも、今は穏やかのようだ。


 俺たちの前方にはとてつもなく巨大な岩の塊がある。海の山。これこそが海王のいる”海の城”だ。

 城からは威圧的な感じが放たれている。これを前にして、ギルバードはさらに怖気づいている様子だった。


「さて、と。それじゃあ、まずは俺が先に行って、ちょいと海王と話しをつけてくる」

「ルナもいくですよ!」

「お前、またくっついて来てたのか……ま、いいか。それじゃアイ、ギルバードを頼む」

「はい……レオンさん、無茶しないでくださいね?」

「大丈夫大丈夫。前みたいにぶん殴ったりしねぇから。……たぶん」

 ここで海王と喧嘩にでもなりゃ、問題がややこしくなるだけだからな。慎重に、慎重にと。

「任せておきな」

 俺はギルバードの背中を軽く叩いたあと、海の城の巨大な門の前まで歩いて行った。



『止まれ、ニンゲン』

 魚人の門番2人が、俺の前に立ちはだかった。

「悪いな。ここ、通してもらうぜ」

『何を馬鹿な……』

『ま、待て! この方は……レオン様だ!』

『な、なんと!? し、し、しかし規則は規則……ううむ』

 

「なぁに、お前さんたちにゃ迷惑かからないさ。それにこの門を“一人”の力で開けられたら、人間でも勝手に通っていいんだろ、確か」

 まぁ、まず無理なんだがな、普通のやり方じゃ。

 これは『門の試練』といって、人間の知恵を試すものだ。そもそもこの海底にたどり着ける人間なんざかなりレアなんだから、そんな試練与えるなっつー話なんだけども。

 あの海王のおっさん、頭がかたいから仕方ねぇか。

 俺は門を見上げる。門を閉ざしている扉は分厚く、重々しい雰囲気を漂わせている。

 俺は扉に両手を置いた。


『レオン様……ま、まさか!?』

「そのまさかだよ。おらぁぁぁぁっ!!」

 俺は扉を押した。

 以前より重い感じがするのは、俺の身体がまだ鈍っているのか、門を重たくしやがったからなのか。


 そう。

 俺は以前も力ずくでこの扉をこじ開けたのだ。

 実はこの扉はひどく単純な方法で開けられるのだが……それでも俺は力ずくでこの門を開けた。人間という存在とあまり関わってこなかった連中にとっては、最も衝撃的なやり方だと思ってな。海王のおっさんは苦笑いしていたが。

 扉が動いた。よし。これくらいならばマカロンの力を借りなくてもいけるな。

『お……おぉ……信じられん。魔力の強化なしに、力のみで……』

『これが……”闘神”レオン様の力……』

 闘神って。ここではそんな風に呼ばれていたのか、俺。


 ――そして扉は、開かれた。

「開いたな。そんじゃ、通してもらうぜ」

『はっ!』

『レオン様に敬礼!』

 門番に見送られ、俺は海王のもとへと向かっていった。

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