鬼になったお花のおはなし

 むかーしむかし、あるところにそれはそれはきれいなお花がさいていました。

 そのきれいなお花は、とてもほこりたかく、だれもよせつけませんでした。

「だれもわたしのうつくしさにはかなわない」お花はそうおもっていました。

 そしてお花はとてもいじわるでした。ほかのお花をいじめてはわらっているのでした。

 

 あるとき、はげしい雨と風がふきあれました。

 雨と風は、ありとあらゆるものをふきとばし、ながしてしまいました。

 

 お花はたすけてとさけびました。

 けれどもいじわるなお花をだれもたすけてはくれませんでした。

 お花はなきさけびました。


 そこにひとりのニンゲンのせいねんがあらわれ、お花をたすけてくれました。


 お花は、ひとめで恋におちました。

 ニンゲンのせいねんも、お花のうつくしさにこころをうばわれました。


 ふたりはずっといっしょにいることをこころにちかいました。


 しかし、お花の『お父さま』はそれをゆるしませんでした。

 お花たちにとってニンゲンは、わざわいをもたらすそんざいだったのです。

 

 お花はニンゲンのせいねんといっしょにとおくのくにへとにげることにしました。

 ニンゲンのせいねんはそれをうけいれました。


 それをしった『お父さま』はとてもおこりました。そしてニンゲンのせいねんを石にかえてこなごなにくだいてしまいました。

 お花はなきました。ないてないて、そして『お父さま』をうらみました。

 にくしみが、お花を黒く、みにくくそめていきました。

 いかりにくるったお花は、『お父さま』をくらいつくしてしまおうとしました。けれど、『お父さま』を守るつよいつよいしょくぶつたちにはばまれ、お花はたおされてしまいました。


 お花はかれて、しぼんでしまいました。

 そしてくらいくらい川にながされて、ヤミにおちていきました。


「にくい。お父さまがにくい。ニンゲンといっしょになれない、おきてがにくい。しあわせそうにしているやつらがにくい。このせかいのすべてがにくい」

 

 そしてヤミのなか、お花は『おに』となりました。

 そのおにはいまもどこかでなき、いかりのこえをあげてはみんなをこわがらせているのでした。

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