エピローグ

 マウスが残した手紙は二つあった。一つは少女、雪に書いた手紙。

 そしてもう一枚は、姉である柚子に書いた手紙。その手紙には真実が書かれていた。その真実は、マウスが最後まで心の奥に留めていた想い。その想いが姉弟である柚子に、手紙として伝えられた……。


柚子へ

 突然いなくなってごめんなさい。柚子が、僕のことを連れ戻そうとしていたのはもちろん知っていました。とても嬉しかったです。けど、やっぱりそれはできなかった。それは、柚子も知っている通り、僕は、もう、誰かと生きていくのが嫌になったからです。僕は全てに疲れたんです。誰かに気を使ったり、誰かのために頑張ることが。だから僕は一人になりたくて、ああいう生活を好んで続けていました。けど、僕は最後に変わってしまいました。そう、あの子です。あの子が僕を変えてしまったんです。もしかすると、あの子が僕を変えてくれたのかもしれません。

 ここにすべての真実を書きます。僕はあの子に恋をしました。僕はこの手紙を書く前日、罪を犯しました。それは人を愛するという事。仕方のないことです。ですが、その相手はまだ子供だった。きっと、彼女はそのことを悪いとは思わないでしょう。けれど、僕がこのまま一緒にいても、あの子のためになりません。けれど、勘違いしないでください。僕はそれを悲観に思ってなどいません。むしろあの子に感謝しています。最後に、人を愛することができたことに。僕は本当にあの子を愛してしまいました。その想いに偽りなどありません。

 柚子には最後にお願いがあります。それは、きっとあの子は町を出るはずです。だから、それを見守ってほしいのです。あの子はまだ小さい。きっと、あの子の両親であるおじいさんやマキさんも、それを許さないでしょう。だから、そうなったときは、柚子があの子を見てやってほしい。最後のお願いです。これ以上、僕は言いません。

 最後に、もう一度謝ります。突然いなくなることを許してほしい。

 さようなら。

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らくがきの町 ライオン @lion0829

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