第23話 色々トレーニング
宿に戻ってから魔法の練習をすることにしました。
まずは《魔力感知》と《魔力操作》これはアス君だけでなくリュートにもやってもらう。
リュートの魔法適性あるし今は呪いのせいでほぼ使用不可能だけど。
身体強化とかにも役立つからやったほうがいい。MPもそこそこあるしいずれ初級から中級は使えるようになると思う。ただアス君のように本を読んで頭で理解するより身体で感じた方が早いんじゃないかなと。
リュートが頭が悪いって言ってるんじゃないよ。多分アス君は魔技神の加護があるから理解が早い。
ではまずは体内魔力を感じるところから。身体の中を流れている魔力が見つかったらそれをおへその下辺りに集める。集めたら魔力をまた身体中に流す、と言うのをしてもらう。
さすがアス君は一発クリアー、リュートは「ムムムムム」って唸っている。
30分経過し、アス君はスムーズに魔力をコントロールしている。魔法が苦手なはずの獣人族なのにすごいね。やはり魔技神の加護がかなりいい仕事してます。
リュートは魔力感知ができないようなのでお手伝いします。呪いがなければきっとできたと思う。
リュートの両手握ってを広げた状態で魔力を流します。
「私の魔力を右手から流して左手から回収するから、リュートの身体に負担がかかるといけないから最初はちょっとずつ、魔力が感じれた時点で一旦やめるから教えて」
「ワカッタ」
では行きます。少量からスタート。
「?」
徐々に増量。
「ン?」
もういっちょ。
「ウッ、ハ、ァ?」
何だか色っぽい声出してませんか?まあいいです。さらにドン!
「ハァ、ンン?ハゥ」
・・・これでどうだ!
「!、フアァァァッ」
・・・ハイ終了デス。色っぽい虎獣人誰得何でしょう?
「キタ、ナンダコレハ。身体ノ中ヲ嬲ラレルヨウナ?」
まあ、《魔力感知》というのはのはきっかけさえ掴めればなんとかなるもので。
はい、今のもう一回やりたくはないです。
「じゃあ今度は独りでやって見て」
「アア、ヤッテミル、ムムムムっ、アッ!コレカ、温カイモノガ」
「そのままお腹の真ん中に集めてこれる?」
「ヤッテミル。ハアアァ…ン」
リュートにはこのまま一人で練習続行してもらいましょう。何か直視できません。
じゃあアス君は次のステップに行きましょう。
「魔法を発動するのに大事なことは二つあります、それは何かな?」
「魔法をイメージしゅる事、魔力を『鍵となる言葉キーワード』とともに放出しゅる事」
「正解。呪文はイメージする為の補助だからイメージさえうまくできれば必要無いけど、最初は呪文ありで行きましょう。呪文は【イメージしやすい言葉】を自分で考えればいいわ」
そう、呪文はあくまでイメージの補助。そして人によってそれは違う。なのになぜか学園では中二病全開な呪文が流行っていたのだ。
例えば《ライト》
「その輝きをもって暗き闇を払え!」 だの
「陽の光の如く全てを照らせ!」 だの。
誰得なの、その呪文。言ってて恥ずかしく無いかもしれないが聞いてて恥ずかしいわ。
アス君は全属性の素質があるので部屋の中で練習するには《ライト》がいいでしょう。
《ウォーター》は水浸し、《ファイヤ》は火事の元、《ソイルコントロール》は土が無い、《ウインド》も室内は風に煽られモノがどこに飛んでいくか解らない。
見本の《ライト》を唱えアス君の前に浮かべる。これを見て自分の中でイメージを固めてもらう。
「明るくなれ《ライト》」
あ、よかった。アス君は中二病気質じゃあなくて。しかし何も起こらない。もう一度。
「明るくなれ《ライト》」
ウリュ君の目の前で何かがパチンと弾けた。
「おしい、もうちょっとね。魔力を手のひらに集めてそこから出すような感じでやってみて」
アス君は水をすくう様な形で両手を合わせる。
「明るくなれ《ライト》」
アス君の手の上に小さな光が灯った。それは5秒ほどで消えてしまったが成功には間違いない。
「できた、オネーしゃんできました」
成功した喜びに飛びついてきたアス君、思わずぎゅーって抱きしめました。うう、しゃーわせです。
「スゴイナ、アス」
ああ、リュートの方に行ってしまった。ぴょんぴょん飛んで喜ぶアス君をリュートはまるで高い高いをするように抱き上げて一緒に喜んでいる、満面の笑みを交わすケモ耳兄弟。いやんもう
このまま《ライト》で《魔力操作》をあげていこう。
私は二人が頑張っている間にオヤツを作りましょう。今日は魔道オーブン使ってクッキーでも焼きますか。
抜き型はないので棒状にしたクッキー種を包丁でカットする。ココアとプレーンの二色を市松模様に組んだ種も作る。これを魔道オーブンで焼いて出来上がり。クッキーだけじゃ足らないかな?
ん?何か後ろが静かだ。さっきまでリュートの「ハアァ…ン」やアス君の呪文を唱える声が聞こえてたのに。
振り向くと二人が魔道オーブンを凝視している。私が振り向いたことに気がついたアス君が恥ずかしそうに頬を染める。
「甘い匂いがしてきたので…」
「スゴク甘イ匂イ?」
まだそれほど香りが……ってさすが獣人か、嗅覚が人間より数倍いいのね。意外にリュートは甘党なのか。
「クッキーを焼いてるの、じゃあお茶にするので机の上を一旦片付けましょうか」
アス君は勢いよく机の上に出していたノートやペンをリュックにしまい込む。リュートは机を拭きアス君はカップを準備する。このカップはさっき買って来たばかりのもの。リュートのはドラゴンの姿が浮かし彫されている。アス君はペガサス、私のはグリフォンだ。私のを選んでくれたのはアス君♡
柄のないコップは100ウルだが装飾のあるカップは200ウルと倍だ。私が払うと言ったのに二人は「自分で払う」と譲らず、初めて稼いだお金で買ったのだ。
クッキーも焼けたようだし、新しいカップでティータイムしましょ。
初依頼を受けてから今日で5日め。午前中は依頼をこなし午後は勉強と訓練を繰り返し、角兎程度なら二人だけで狩れる様になりました。
二人とも《気配察知》のスキルを持っているから私の《サーチ》の補助がなくとも獲物を見つけるのが早かった。
まあ狩人のジョブ持ってたし。
リュートは毎日の鍛錬の成果か筋力が★★★★★まで回復してほぼ普通に動けるようになった。この辺も獣人のポテンシャルの高さのおかげかな。
魔法の方もアス君は初級は全属性マスター、ただし連発は魔力枯渇を起こすのでNG。
リュートは今のところ《ライト》と《ウインド》だけだが、《魔力纏》を覚えた。これは魔力を身体に張り巡らす事で身体機能をあげるもの。今のところ1.2倍が30秒間ってとこだけど、これで角猪も狩ったのだ。
猪突猛進で突っ込んできた角猪を寸前で躱しすれ違いざま頚動脈を切ると言うのを二人の前で見せたのだ。するとリュートが《魔力纏》で瞬発力をあげ角猪を躱し、筋力をあげ首に爪の一撃を叩き込んだのだ。
見てたこっちは叫びそうになったよ。心臓に悪いってもう。
しかし馴れないうちは急激に筋力アップすることで後で“ヤツ”が襲ってくるのだ。
「イテテテテテっ」
そう、筋肉痛。リュートは《魔力纏》を使う度のたうち回ってる。だからもう少し筋力が上がるまで無理せず『使用する様言いました。
順調に依頼をこなし1日2~3万メルは稼ぐ様になった。それぞれ1割のお金は好きな様に使うよう言ったのだが、食事代を自分で払うと引かず、その為相変わらずギルド宿一階のお安い食堂で夕食を食べている。
朝は私が部屋で作っているのだが、その分も出すと言うので朝食分はチームのお金から出すと言うことになった。お昼は狩りの獲物や採取した野草メインで作ってます。
リュートは肉好きゆえか解体が上達した。まあ狩人という基本があったから。アス君は薬草などの見分けが上達、一度教えた薬草などは間違えない。リュートの方はは時々雑草が混ざってたりするが(笑)
食事をしっかり取る様になったのでアス君は血色も良くなり(リュートは獣顔なので血色がわからない)、二人とも少しふっくらして来た。と言ってもまだまだ細いが。
リュートはアス君の倍は食べるのだが、前衛だし朝夕の鍛錬もするせいか消費も激しい。
夕食は3人同じものを頼んでアス君と私からおすそ分けする。そうすると少し情けなさそうな顔をするものの「余っちゃうから」「残すのはもったいないし」なんて言うと、照れくさそうに「マア残ノハ勿体無イシナ」とたいらげる。
それを横目で見つつアス君と視線を合わせるとにっこり笑い合うのだった。ああもう、これだけで満腹です。
明日は1日お休みにしてゆっくりしよう。二人の技量もそこそこ上がってるしそろそろダンジョンに行こうと思う。3人になったし食事を作り置きしたりポーション作ったりとすることはあるけどね。
「何が食べたい?」
「クリームシチューとオムライしゅ」
「生姜焼キ、肉炒メ」
「あ、ハンバーグも」
二人はほんと肉好きだねえ。ちなみにカレーは彼らには香辛料が効きすぎだったみたいで『カレーのプリンス』レベルなら大丈夫だった。弟も小学2年まではおこちゃまでいつも二種類のカレーを作ったものだ。
ふむ、汁物は鍋ごとインベントリという手もあるな。追加の鍋買いに行くか。
翌朝ゆっくり朝寝坊した後はブランチをいただく。二人には好きにしていいと言ったのだが、リュートは庭で鍛錬、アス君は調薬を手伝ってくれるというので教えつつ作ることにした。
「ヒール草をすり鉢ですりつぶす時はゆっくりと擂粉木を回してね」
「こう?」
ゴリゴリゴリ
「こんな感じで」
アス君の背後から被さる様に擂粉木を持つ手に自分の手を重ねて回すスピードを調節する。ふふふっ
こり、こり、こり
「こうでしゅか?」
「その感じで、早くやり過ぎると熱を持ってしまうからポーションの効果が落ちちゃうの」
「うん、わかりました」
一生懸命こり、こり、こりって、するアス君かわいい、ハッ。自分もちゃんとしないと。
1時間ほどでヒールポーションが30本ほどできた。
マナポーションは材料が足らない。マナ草がこの辺りにあまりないのだ。魔素の濃い魔の森かダンジョンに生えてるんだけど。【四季】のダンジョンに行ったらマナ草を採取しよう。
次は作り置きの食事だね。リクエストに答えてシチュー、ハンバーグ、オムライス作ろう。ついでにおやつにクリームたっぷりロールケーキね。
ここでもアス君お手伝い。ジャガイモの皮むき手伝ってもらいました。ピーラーあるから大丈夫。
「むけました」
はや、もしかしてちょっと《ステータス表示》
職業ジョブ
剣士 Lv.★
拳士 Lv.★
狩人 Lv.★★★
盗賊 Lv.★
野武士 Lv.★
農夫 Lv.★★
娼妓(禿) Lv.★★
漁師 Lv.★
掃除夫 Lv.★
弓士 Lv.★★
魔術師 Lv.★★
薬師 Lv.★
料理人 Lv.★
この前より増えてる。弓士はクロスボウ使って角兎仕留めてたからか?でも薬師と料理人って、さっきのほんの数時間で習得したの?
ジョブってそんなに簡単に習得できるものだったかしら。うーん、考えてもわからないし、ジョブ補正つくからいいか。
「うっ、タマネギが目にしみましゅ」
ずっきゅ~~ん
アス君は私を殺す気ですか、はあはあ、色即是空空即是色、般若波羅蜜、ふう
「タダイマ、何ヲシテル、エル?」
「な、なんでもない。お茶にしようか」
「やったー!今日のオヤツ何かなぁ。あ兄しゃま手を洗ってくだしゃい」
「下デ洗ッテキタ」
「じゃあ、テーブルの準備手伝ってくだしゃい」
二人ともすっかり元気になったね。毎日楽しそうにしてるしよかった。
それじゃ、お茶いれましょう。
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注①鼻粘膜、鼻血の好発部位の事
お読みいただきありがとうございます。
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