第16話 クロード辺境伯爵領の街エオカ
10時過ぎにイチニを出発したがお昼には国境についてしまった。グリフォン連れは目立つのでレイディには飛んでってもらうことにした。
よく考えたら追っ手が来るかもしれなかったのでイチニの冒険者ギルドで行き先を告げたのは不味かったかも知れない。
父が連れ戻しに来てどこかのヒヒジジイの後妻とかに…よくあるネタだよね。うん、逃げよう。
腰にブロードソードと後ろにグルカナイフ、荷物はマジックバックに背負い袋で『歩いて来た冒険者ですよ〜』感を出す。
国境の検問は冒険者ギルドカードで入国税免除、冒険者の移動は推奨されているのだ。
あとウェイシア王国は領ごとの入領税はない。その代わり身分証のない者からはたんまりお金をとる。
入領税は民を安易に移動させない為のものだがウェイシア王国は移動をさほど厳しく禁止している訳ではない。
政治が安定して入れば民は逃げない。逃げるということはそこの領に問題があると判断される。
ただオルフェリア王国に比べ各々の領土が広すぎてウェイシア王国は移動が長距離で引っ越しは大変なのだ。
ウェイシア王国は国中に多くのダンジョンを有する為ダンジョン関係の税収が国を潤しているので、民一人当たりの税が安く暮らしやすいのだろう。
オルフェリアが暮らしにくいというわけではない。
魔獣、魔物から民を守る為領兵やお抱え騎士達は日夜頑張っているのだ。ウェイシア王国はその辺りは冒険者に依頼する。だからかどうかは知らないが冒険者ギルド本部はウェイシア王都にある。
ウェイシア王国はダンジョンが関係するのか解らないが魔物の生息する地域が少ない。
たまにスタンピード起こしてダンジョンから溢れでることもあるがそこは冒険者の出番、兵は対魔物より対帝国配備なのだ。
ウェイシアの北にあるガガート帝国、ここは常に領地拡大を狙い周辺国とイザコザを起こしている。
帝国の西の国々は帝国に対抗する為連合国家になったほどだ。ウェイシア王国とオルフェリア、南のリュミエール神皇国は三国同盟を結び帝国に対抗している。
世界情勢知識もバッチリだね。さてそろそろレイディ呼びますか。街道から脇の森に入る、街道が見えなくなったあたりで《サモン》発動。
魔方陣が光った。
『御主人~お待たせなのヨ』
なぜか角兎を咥えて現れたレイディ、ちょうどいいからお昼にしよう。
咥えていた獲物を解体してからレイディに返す、追加で角猪肉もたしておく。
最近ずっと一緒のせいか、解体後のほうが美味しいことに気付いたレイディ。
おとなしく待っている。そりゃ骨や毛皮のない身だけのほうが絶対食べやすいし、肉の味もダイレクト。だがたまには内臓や骨も食べさせないと食の偏りは不健康ですからね。
ゆっくり狩をしつつ街道沿いを行く。夕方にはにはダンジョンの街エオカに着くかな。クロード辺境伯爵領には4っつのダンジョンがありそのほぼ中央に位置する街がエオカで交易の街、冒険者の街でもある。エオカからそれぞれのダンジョン【四季】【迷宮】【魔窟】【試練】へ辻馬車も出ている。
【四季】のダンジョンは春夏秋冬の階層があり季節の素材が取れる。特に最初の春階層はダンジョンの中でも低レベルで冒険者はまずはここから挑戦するよう冒険者ギルドが推奨している。
【迷宮】のダンジョンは文字どおり中は迷路のようになっている。ここはトラップが多いが
【魔窟】のダンジョンは魔物が多い。魔石やドロップ品目当ての冒険者が潜るようだ。
【試練】のダンジョンは階層を進む毎に魔物が強くなる。腕試しというか『試練の何回層までクリアした』と冒険者の力量の証明になっている。
城壁に囲まれた街エオカが見えてきた。なんとか日暮れ前に着いてよかったけど門の前は結構な行列だな。かなり手前で着地してレイディを歩かせる。
さすがダンジョンの街、冒険者が多く、従魔を連れている人が他にもいるので、驚かれはしてもイチニのようにビビる人は少ない。
『御主人、あれ食べていいなのヨ?』
冒険者が連れているシルバーウルフを見てレイディが言う、あ、ビクンと震えたシルバーウルフの毛が立った。
『ダメ、人といる魔獣は従魔なの、手出したらお仕置きして帰らせるからね』
周りに聞こえないよう念話で会話。レイディは振り向いてイヤイヤをする。
『食べない、あたち食べないなのヨ』
ヨシヨシ、イイコイイコしておく、レイディはスリスリしたそうだが背後に乗っているので位置的に無理だからこっちから抱きついてスリスリしておく、ん?何か視線が、まあいっか。
そろそろ門が近いのでレイディから降りて手綱をひく。手綱と言っても首元のハーネスに着いてて轡も馬銜もないんだけどな。
「冒険者か、カードを提示願おう。そのグリフォンは従魔か、なら五万ウルが必要だ。従魔の説明はいるか?必要なければ奥の奴に金を渡して従魔の首輪を受け取ってくれ」
両替するの忘れてたよ。ウェイシア王国の通貨はウル、1ウル=1メルなのでメルでも受け散ってくれる。あとで両替に行かないと。
ちなみに門横にある両替商は手数料5%高い。他に両替してくれるのは冒険者ギルド3%、商業ギルド1%だ。
あとで商業ギルドに行こう。
門兵も多少仰け反ったが慣れた対応だったのでサクッと進む。従魔の首輪を受け渡して来た兵士に厩舎のある宿でオススメはないかたずねると、従魔専用に預かってくれる厩舎があると、冒険者ギルドの経営でギルドハウスに隣接しているそうだ。さすが冒険者の街、そこへ行こう。
「グ、グリフォンですか、1日2回の餌込みで1000ウル、餌なしで500ウルですっ」
おお、ちゃんと大型従魔の料金表もあった。じゃあ餌なしで契約する。
宿はギルド経営の冒険者専用の宿があるらしいのでそこに行く。ギルドハウスの裏手、いわゆるアパートな感じ。
冒険者ギルドの施設はメルで支払いができる、3%上乗せされるけど。
1階に酒場件食堂と銭湯のような風呂、共同トイレ。2階から5階までが部屋。宿の料金は部屋単位で2階はベッド等の家具付き個室で1日1000ウル、3階は小さな家具なし個室で1日500ウル、4階は家具なし大部屋800ウル、5階は家具なし広め大部屋で1日1000ウル。4、5階はパーティーでシェアするようだ。4階で三、四人、5階で五、六人で分けるとかなり安くなる。大部屋は厩舎より安い計算になるのか。
まあ冒険者なんて夜寝に来るくらいだし食事と風呂は別料金だしね。ここでいいか、2階の家具付き個室にしよう。
魔道オーブンのせいで持ち金かなり減ったがこれくらいは大丈夫。
結構広いかな、八畳くらいのへ部屋にベッド、壁には作り付けのクローゼット。窓側の壁には作り付けのカウンターテーブル。かなり広いから魔道オーブンとコンロ置いて料理もできる。
衝立の向こうに洗面スペースもあって排水可能だ。水は無いから裏の井戸で汲んでくるみたいだけど魔法があるからオッケーだ。
トイレは洗面台の横に・・・壷だ。壷が置いてある。朝外に出しておくと新しい壷と交換してくれるシステム。
うーむ、水を流せても
お金持ちや貴族の屋敷にはスライムを利用した浄化槽システムが導入されている。塔は湖に垂れ流しだったな。
夕食作ってもいいけど邪魔くさいから下で食べよう。レイディにも角猪肉もってってあげるか。
ギルドの食堂は味より量!って感じ。定食は一食200から500ウルでお安い。2〜300メルの定食がよく出るようだ。うん、明日から自分で作ろう、大味で今ひとつお口にあいませんでした。
さて、明日は情報収集兼ねて街をぶらつくので今日はお風呂に入って寝ることにしよう。銭湯?
行きませんよ、お部屋で昨日買った桶風呂に入ります。
朝、爽やかな目覚め・・・とは言い難い。まあ、イチニの宿とは金額が10分の1なのでベッドの硬さは仕方ない、そのうち慣れるさ。レイディに餌をあげたら冒険者ギルドハウスに行こう。
大きいな、イチニの倍ほどあるのでは?冒険者の為に開拓された街だからかな。
開け放たれた大きな入り口を入ると体育館並みにデカいフロアです。受け付けカウンターも10箇所はある。おお、酒場併設、これぞ冒険者ギルドって感じですね~。一つだけ孤立したカウンター、まるで百貨店のインフォメーションのようだ。
こ、これは……
「冒険者ギルドエオカ支部へようこそ、ご用件はレイナが承ります」
お胸様の立派な受付嬢ではございませんか、エオカの冒険者ギルドカ・ン・ペ・キ♡
「エオカに来たばかりでギルドに初めて来たのですが」
レイナさんがにっこり微笑む。
「では当支部について説明させて頂く前にギルドカードを確認させていただきます」
言われた通りカードを渡す。何か魔道具のようなものにカードを差し込むと、数秒後プッとカードが吐き出された。
レイナさんはカードを確認してから差し出す。
「お名前はエルさん、ランクはE、パーティー、クランの登録は…なしですね。所属エオカで登録されました」
名前:エル・年齢:17歳・性別:女
出身地:ディヴァン領、オルフェリア王国
職業:魔法剣士、冒険者
所属:ウェイシア王国、クロード領、エオカ支部
ランク:E
賞罰:ー
あ、所属が変更された。
「では、説明させていただきますーーー」
冒険者の所在、生存確認の為に依頼を受けない場合最低月1ギルドでカードの更新(今みたいに魔道具に通す)をする事。
ギルドには直営の【宿】【厩舎】【道具屋】【武器防具屋】【買い取り屋】があり冒険者はサービス価格で利用できる。
右側が依頼ボード、左はお知らせボード。ギルドからのお知らせ等の他パーティー、クランの募集や一時メンバーの募集などもあり、利用したければインフォメーション(ココ)に言えばいい。
ダンジョンはEランク以上であれば入れる。
各ダンジョン前にはダンジョン村にギルド出張所があり、依頼達成手続きや買い取りも行なっている。
ギルド二階には図書館、会議室、各種講習会場、いわゆる教室がある。ギルド裏の鍛錬場の使用申し込みも二階にある。
エオカを離れる際は必ず知らせる事。
「以上、何か質問はございますか」
「いえ、ありがとうございました」
「またのご利用お待ちしております」
レイナさんすごい、口が回らないとここの受付嬢は大変だ。さて、ちょっと依頼ボードをのぞいてみるか。
ここでもF、Gは薬草採取か掃除とか荷運びとか冒険者っぽく無いやつ。
D、Eはダンジョン素材の納品系が多いな。ランク上げるならDランク受けないと。
Cは護衛系が多い。ダンジョンからの品をあっちこっちに運ぶからか。来たばかりでどっか行く気無いから却下。
A、Bはダンジョンの希少種の素材や強豪種の素材、レアアイテム……ダンジョン出土品、なんかいいもの出るかな?まあ依頼受けずにとりあえず潜るか。でも明日から、今日は街を観てぶらぶらしよう。
ダンジョン攻略の必需品買わないかって?そんなのインベントリに入ってますが何か?
去年ママンと魔の森のダンジョンに行った時の荷物とかそのままだよ。
ママンは私がインベントリ持ってるの知ってるからママンの荷物も入ったままだった。今見つけた、と言うか気づいたよ。
まあしいて必要なのはポーション類か、万が一ダンジョン内で魔力切れ起こしたら困るから揃えとこう。
魔力切れなんて起こしたことないけど。トラップで魔法が使えないってのも想定してね。
二階の図書室とやらでダンジョンの情報仕入れるか、それが終わったらお昼どこかで食べよう。
宿の食堂で食べる気しなかったんだ。
というわけで街ブラです。さすが冒険者の街、小洒落たお店はなくボリューミーな定食屋か、屋台が多い。屋台の方が少なめでいい。定番の何かの串肉焼き屋台が香ばしい匂いを放っている。
お昼は串肉焼きと美味しそうなフルーツ売ってたので色々買っちゃいました。
ポーション自作するのに小瓶いるな。道具屋で探すかな。それとも直接ガラス工房行くか、いや陶器の瓶のほうがいいかな、窯元直売店とかあればいいな~。
瓶&壺専門店みたいなのがあった。ここでヒールポーション用とマジックポーション用に青と赤のガラスの小瓶を買う。一輪挿しか香水瓶みたいで可愛い。コルクの蓋付き。
当て所なくぶらぶらして、人の流れに乗って移動すると色々なお店が並ぶ商店街通りから一本奥に入った露天商街になった。こうゆうとこは掘り出し物があったりする。怪しいものも一杯ありそうだけど。鑑定レベル上げできそうかも。
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