第15話 ランクアップしたので移動します

 商業ギルドハウスは割と近く、と言うか通りを挟んで向かい側にあった。

 冒険者ギルドも依頼の無い素材も買い取ってくれるが買取税(手数料込)で10%引かれるので依頼関係無しだと商業ギルドに売る方がお得かもしれない。今後突如金策が必要になったとき露店開いて売り捌けるし、うん、いいかも。早速いってみよう。




 商業ギルドの入り口前で建物を眺める。ギルドハウスは五階建てのレンガ&木造造り、立派です。冒険者ギルドのように入り口開けっ放しではなく、しかも入り口横には見張りの兵士が立っております。入り口前に立つと質問されたのでギルド登録したいと言うとドアを開けてくれた。


 中に入ると二重ドアだったので自分で開けて入る。


「いらっしゃいませ。ご用件をどうぞ」


 入り口直ぐ右側にカウンターがあって受け付け嬢が二人座っていた。

 おお、お胸様の立派な美人の受付嬢はこんな所にいらっしゃったんですね。少しタレ目の青い髪のお姉さんと、プラチナブロンドを綺麗に結い上げたお姉さん。声をかけてきたタレ目のお姉さんの方にギルド登録したいことを伝える。


「ではこの廊下を真っ直ぐいかれたら右側の1番のドアからお入りください。」


「有難うございます」


 礼を言って進んでいくと廊下の左右にナンバリングされたドアがいくつかあった。その一番手前、1番ドアをノックすると「どうぞ」と返事があったのでドアを開け中に入る。


 そこは八畳くらいの部屋でカウンターで向こうと仕切られており、カウンターの向こうでは二人の男性が仕事をしていた。


「登録希望ですね、おかけください。商業ギルドイチニ支部にようこそ。まず級についての説明をさせて戴きます」


 5級は年会費1万メルで屋台や露店を開く資格が得られる。ギルドとの売買手数料8%

 4級は会費年5万メル、提携商業ギルドのある他国との小規模行商権が得らる。手数料6%

 3級は会費年10万メル、商会登録をし店舗単位での商業権が得られる。手数料5%

 2級は会費年50万メル、複数の店舗を持て、店舗ごとの登録が不要。手数料3%

 1級は会費年100万メル、他国との大規模商業権を得られ、拠点の国への入国時の関税免除。手数料2%


 年会費とは国に収める税金でもある。収益に対し税をかけるシステムは無く人頭税、店舗に対する税というわけだ。

 売買手数料とはギルドに商品を売った場合の手数料、ギルドはここからも税金を収めるのでベンさんは税金と言ったのかな。ギルドから購入するときは購入側が手数料等をはらうことはない。

 4級迄は個人登録、3級以上は商会登録になるので従業員が個別で登録する必要はない。


 内容はベン青年に教えて貰ったものに多少補足修正された感じだ。5級希望であることを伝えると判定球で犯罪者チェック後申請書を渡された。


 名前、年齢、出身地、拠点?


「あの、拠点は特に無くあちこち移動するつもりなんですが」


「では登録地として『イチニ』としてください、後、5級はオルフェリア国内のみですから他国へ移動して商売をされるのでしたら、4級登録かその国での5級登録をする必要があります。二国目の5級登録は半額が適応される国とされない国があるのでご注意ください」


 ウェイシア王国に行ってからそこは考えるか。とりあえず5級でいい。


 最後に商売内容、扱う商品か、『魔石、素材、薬品、食糧の販売』っと、こんなとこかな。

 書きあがった申請書と登録料の1万メルを渡す。


「はい、では暫くお待ちください。」


 ギルド職員は書類とお金を受け取り奥の扉から出て行った。5分程で戻って来るとキャッシュカードサイズのプレートを渡される。冒険者ギルドカードと同サイズだね。


「記載に間違いが無ければ魔力を通してください。そうすればカードが認証されます」


  名前:エル・年齢:16歳

  出身地:ディヴァン領、オルフェリア王国

  拠点(登録地):オルフェリア王国、デュナン領、イチニ支部

 

  5級(オルフェリア王国) 登録:春の第二月

  賞罰:ー


 うん、間違いない。(春の第二月ってのは4月の事)魔力流して完了っと。なぜか月の呼び方は日本と違うんだよね、ライターがファンタジー感出したかったのかな?


「お疲れ様でしたこれで登録終了です。更新月は毎年春の第二月ですが翌月の春の第三月までに更新されなければギルド登録が無効になり、再登録時は1万メルが加算されますのでご注意下さい。

 それでは貴方の商売に女神の幸運が訪れますように」


「有難うございます。あの早速なんですが魔石や素材を買い取ってもらいたいのですが」


「それでしたら廊下を奥に、左の6番のドアへどうぞ」


 ギルド職員に礼を言って6番に向かった。その部屋はかなり広く、カウンターの奥に棚が一杯あって荷物預かり所か倉庫の様で沢山の人が働いていた。

 

 作りたてのギルドカードを見せてここまでの道中に仕留めたモンスターの魔石や角鹿の角や兎、猪、鹿、豚の皮もだす。

 肉はレイディのご飯なので売らないよ。

 学園時代の死蔵素材や、ママンクラリッサ従魔2匹レイディとカルラで去年の夏休みにパパンに内緒で魔の森のダンジョンに行った時の素材も残っているんだ。一部売っちゃおう。

 置いていかれたクリストフは拗ねた。(あとで知ったパパンがベソをかいたのはママンだけが知っている)


 ギルド職員はマジックバックには驚かない、商売人の必須アイテムだからね、マジックバックは。

 しかしちょっと出しすぎたかな、マジックバックから出すフリしてインベントリから次々出していると商業ギルドの職員があわあわしてる。まいっか。


 査定が終わって全部で20万メルほどになった。


 さあ、宿に帰ってゆっくりお風呂に入るかな。




 金の猫足亭まであとちょっとと言うところで名を呼ばれ振り返るとウイリアムさんが駆け寄ってきた。


「ちょうど良かった、宿にお訪ねしようとしていた所だったので」


「今晩は、ウイリアムさん、」


「今晩は、エルさん、明日我々は出発するのでご挨拶に伺いました」


「わざわざ、有難うございます」


「いえ、助けていただいたお礼もお渡しせず申し訳ないのはこちらの方です」


 ん?お礼?盗賊の罪状が確定したら報奨金もらえる事になってるよ?5人分でお幾らくらいになるのかわからないが。


「命を救っていただいただけでなく、お嬢様の事も含めてのお礼です」


 ご令嬢がウェイシア王国の貴族であったことを話さなかった、と言うより今後の口止め料も含むって事かな?ここは受け取った方が向こうも安心するだろう。


「有難うございます、荷物を無くし何かと入り用でしたので遠慮なく戴きます」


 ウイリアムさんの差し出す小袋を遠慮なく受け取った。


「エルさん、ウェイシアのクロード辺境伯領に来ることがあれば是非寄ってください。ではこれで失礼します」


「道中お気をつけて、さようなら」


  爽やかにウイリアムさんは去っていった。そして…


 臨時収入ゲットだぜ。ココで開けるわけにいかないので中身は後で確認しよう。では今度こそ宿に戻ってお風呂〜



 ウイリアムさんがくれた小袋の中は5万メル。結構入ってたよ。これでさらに懐具合があったかくなった~




 

 

 翌日の午前中にEランク依頼の【ゴブリン5匹の討伐】と【グリーンウルフ1匹の討伐】と【コッコ鳥三羽の捕獲】コッコ鳥は鶏を一回り大きくした野生の鳥。肉じゃなくて捕獲なのでランクがEでした。

 午後から再度【ゴブリン5匹の討伐】と【グリーンウルフ1匹の討伐】を受けランクアップ条件をクリアした。まあグリーンウルフはインベントリに入ってるからねえ。


 ランクアップしたしお金も増えた。明日はウェイシア王国に向けて出発しようと思うので、お買い物に行くつもり。

 盗賊の報奨金については今朝連絡をもらったので依頼に行く前詰所に寄った。ついでに入街税も返してもらった。報奨金は7万メル貰ったし、魔道具見に行く予定だ。




 メインストリートを北に行くと職人街だ。武器防具系は必要ないけどちょっとウインドゥショッピング。店舗に中が見えるほど透明度の高いガラス窓ないけどね。店先に並べて販売してる。ふと木工関係のお店の前で立ち止まる。


「これは…」


「商売人が塩漬作るのに使う桶だ。嬢ちゃんにゃ縁がなさそうだがな」


 立ち止まって見ていたら店の親父が声をかけて来た。楕円形の大きな桶は高さ縦横がちょうど足を伸ばして入れるバスタブサイズ!しかも塩漬時の不要な水分を抜く為の栓が付いている。コレは買いでしょう。これがあれば野営でもお風呂に入れる!しかも蓋つきなので半身浴も可能!風呂なし宿でも問題なし。


「おじさん!これ売って下さい」


 店主は驚きつつも快く売ってくれた。速攻インベントリに収納する。「デケエマジックバックだな」とさらに驚くが商業ギルドに登録してる行商人でもあると言えば納得した。

 いい買い物した。ついでに洗面器サイズの木桶、木製の皿、深皿、カップ、フォーク、スプーンを3個づつ購入した。


 そして魔道具屋でオーブンを探す。ありました、魔道オーブン。高っ、パネエな魔道オーブン。小さい方(と言っても電子レンジよりひと回りデカイが)50万メル大きい方が100万メル。大きいのは高さ60センチ横幅1メートル位ある。チクショウ、美味しい食事は生きる為のエネルギーだけではなく気力の元、ここは奮発する。

 ドライイーストも買ったし、小麦粉と米もゲットしてるし、米粉パンも作れるぜ。


 値切って見たら40万メルになった。ラッキー。後は買い忘れないかな、まあ、あったとしてもレイディであっという間に飛んでいけるから問題ないけどね。


 あとすることは、テンプレと言えば“奴隷を購入”か、でもこの辺りで奴隷制度あるのガガート帝国だけだ。犯罪者は鉱山送りだし、オルフェリアやウェイシアで奴隷もてないからなしだな。どっちにしろ必要ないんだよね、野営中はレイディと結界魔法でなんとかなるから見張り不要だし、おいおい考えよう。色々するとしてもウェイシア王国に行ってからにしよう。











「 え、ウェイシア王国に行くのかい?」


「はい、イチニでは冒険者登録してクラスをあげるつもりでいたんです。ウェイシア王国のクロード辺境伯領にあるダンジョンに挑戦したくて。あそこはEランク以上じゃないと入れないってききましたから。昨日Eランクになったので早速行ってみようと思います」


 朝の10時にると依頼受注の混雑も収まり人が少なくなる。それを見越して今日はゆっくり目に冒険者ギルドにやって来たエルは、イチニを出る前に挨拶をと、ちょうどカウンターにいたランダに声をかけた。


「そうかい、残念だけどエイデ辺境伯領にはダンジョンはないからね、一山当てたいって冒険者はダンジョン目指すもんだ。無茶しないで頑張っておいでよ」


 本当に残念そうにしつつランダはエルを励ます。エルとしては『魔の森』にあるダンジョンに挑んだ経験があるし、学園が管理する10階層の修練ダンジョンも制覇しているのでダンジョン自体は初めてではない。



「イチニも楽しかったです。オルフェリアを出るのは初めてなので色んな所を見てみたいと思ってます。ランダさんお世話になりました」


 ぺこりと頭を下げる。


「またイチニにおいで、あんたがどんな冒険者になって戻ってくるか楽しみにしてるよ」


 外に出るとレイディがおとなしく待っていた、一応ハーネスを付けて騎獣用スペースにくくりつけている。街の人に対する『ちゃんとつないでますよー、大丈夫ですよー』アピールの為であるが、革の手綱如きレイディの力では簡単にちぎれるのだから拘束としての意味はなかったりする。











「登録からたった3日でEランクねえ、グリフォンをテイムするだけの実力があるんだから当然と言えば当然か」


「この国でグリフォンテイムしてる有名どころってどれくらいいましたっけ」


 ランダ、ロッタ、ギブソン、ロブスが昼食がてら休憩をとっていた。


「確か近衛騎士団第二隊の隊長さんと魔術師団にもいたよな。後はSクラス冒険者の『疾風』だろ。貴族でテイムしてるのが何人か。確かディヴァン侯爵夫人もそうじゃなかったっけ?」


「あのお方はヒッポグリフだ、確か令嬢の方だろ、王太子の婚約者で」


「そーいや王太子の婚約が破棄されたって話し、本当らしいな。公式発表はまだされてないが」


「ディヴァン侯爵令嬢って、オルフェリア王立学園でもずば抜けて優秀で文武魔全てトップクラスってきいたけど、それなのに婚約破棄されたの?」


「裏情報じゃ王太子が別の女に手出したって」


「うわー、最低」


「ロッタ、やばい事口にするんじゃないよ」


「でも、ディヴァン侯爵令嬢はそれ以来公の場に姿を見せないとか」


「「「「…………まさか……」」」」


  いくらなんでもいづれこの国の王妃にと育てられた侯爵令嬢が冒険者になるか?なる訳ないよな。そんな思いが4人の思考を支配した。


「「「「ははははは…」」」」



 婚約破棄はゴシップとして結構なスピードで情報が拡散した。公式発表はされていなくとも卒業記念式典という公の場での出来事、人の口に戸は立てられぬと、一部では速文使って情報がばら撒かれたりするのだった。







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この世界の月の呼び方


春の第一→3月、第二→4月、第三→五月。夏の第一、二、三は六、七、八月。

秋の第一、二、三は九、十、十一月。冬の第一、二、三は十二、一、二月です。

卒業記念式典は三月にあったという設定。

学校は四月から六月、九月から十一月、一月から二月の三期。七、八、十二、一、三月はお休みという設定。

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