第13話 冒険者デビュー


 冒険者ギルドハウスにはだいたい訓練場がある。

 ここイチニの冒険者ギルドの訓練場には

 C級冒険者パーティ『風の牙』の4人の冒険者が新人冒険者が来るのを待っていた。

 バスタードソードを持った戦士の男性はリーダーのルードさん。双剣の男性はレンジャーのゲッツさん。あとは弓士アーチャーの女性のカナンさんと魔術士の女性のアイラさん。バランスのいいチームだね。男女比2:2か、誰と誰がカップルかな?いや、まさかのレンジャー受けの戦士攻?フッ。腐った想像してしまった。


「魔術士は1人か、じゃ、そこの娘はアイラに任せる。弓持ってる子はカナン頼むわ。ショートソードの坊主はゲッツな、あとは俺んとこだな」


 私は腰に剣を装備しているので剣士扱い。まあ魔法は学園でみっちりやっているので今更教えてもらう必要はない。魔法については貴族が通う学院の方が高度な教育を為されている。素養のある子供を集めて教育する国営の魔法塾や私塾のようなものもある。


 あ、教えてもらうんじゃなくて実力見るんだったんじゃ、まあいいか。



「おう、じゃあ、そこの木剣使って一人づつ俺に打ち込んでこい。他人の戦いを見るのも勉強だ、よく見ておけよ」


 そんな感じで始まった。何度か打ち合いルードさんがアドバイスをくれる。そして打ち合う。そんな感じで少年二人とハーレムチームの青年と順に済み最後が私の番になる。


「お願いします」


 練習用に用意された剣は両手持ちバスタードソードタイプと片手持ちロングソードタイプだったので刺突タイプの剣が無かったからロングソードをチョイス。挨拶したあと剣を正面に構え空いた手を後ろ腰に添える。ルードさんは適当に正面に剣を構えているように見える。隙がありそうでない。誘ってるっぽいな、こちらからいかないといけないのか、仕方ない。


「いきます、はっ!」


 気合いとともに真っすぐ踏み出し木剣を突き出す。振り払われるのは眼に見えてるのでそのまま突っ込むように見せかけフェイント。剣を引いてルードさんの手を狙い再度突き出す。だが読まれていたようで、ルードさんは剣を下げ刃で受けとめた。重さのあるバスタードソードに木剣は軽く弾かれる。数度繰り返し突き出すが全て払われ最後は大きく左に弾かれた。木剣を弾かれた勢いのままくるりと身を回し右下から切

 り上げる。しかしこれも軽く躱されてしまった。その後も悉く躱し、弾かれ、避けられた。C級は伊達じゃない、うん。


「オーケーお嬢ちゃん。どこかで正式に習ってたのか筋はいい。残念なのは剣が軽いってことか。普段はエストックみたいな刺突武器を使ってるのか?刺突武器に重さは求められねえし。スピードがあるから手数を増やすといい。攻撃がマンネリ化しない様心がけな。後はモンスターは大概真っ直ぐ突っ込んで来る奴が多い、晒す、躱すを取り入れろ」


 ルードさんはニカっと笑いアドバイスをくれた。私は乱れた息を整えながら礼をする。


「ありがとうございました」


 ふと周りが静かなのに気がつく、周りの新人君たちがぽかんと口を開けこっちを見ている。何だろう?そこにルードさんが声をかけた。


「まあ、何事も練習あるのみ、実践は鍛錬をどれだけこなしたかが影響する。怠けりゃ命に関わるってこと忘れんな」


「「「「はい、ありがとうございました」」」」


 こんな感じで初心者講習?は終わりランダさんが現れた。


「あんた達は『冒険者ギルド』の冒険者だ。Gクラスの見習いだが今後の活躍を期待してる。命を粗末にするんじゃないよ。頑張って稼ぎな」


 ランダさんの激励をもらって解散となった。













「ルード達もお疲れさん」


「ああ、ランダ、お疲れ。なあ、なんか今回毛色の違うお嬢ちゃんが一人混じってねえか?」


 練習用の剣を木箱に戻しながらルードが言う。それを聞いたゲッツも


「最後の娘だろう?隙のない剣筋で、それに刺突武器…腰に差してたのはブロードソードだったが、多分普段はエストックやレイピアなんかの刺突武器を使ってるんだろうな」


 初心者冒険者の前衛であれば一撃に威力のある剣を好むものが多い。とりあえず振り回して当たれば…と言うものだ。非力な女で前衛となれば(非力じゃない女性もいる)ショートソードやロングソードなどが多く選ばれる。

 刺突武器を好んで使うのは貴族子息令嬢に多く見られ、護身用か儀礼用として使う者が多いのだ。突進してくるモンスターに刺突武器は不向きとされている。


「物腰もそこはかとなく優雅だしまさか貴族のお嬢様かい?」


 カナンが会話に加わる。爵位はあっても領地のない法衣貴族の次男三男などが家督をつぐ必要が無く、冒険者になる事はあるが、貴族令嬢が冒険者になると言うのはあまりない。ただ王都の学園では授業の一環として冒険者登録をしてダンジョンに挑むと言うのがある。その後冒険者になる貴族の坊ちゃんもいるにはいる。


「ま、他人の事情を詮索しないってのも冒険者のお約束だ。さて成績でもつけるか」


  『風の牙』は新人の実力評価を用紙に記入していった。














 

 

 

 これで依頼を受ける事が出来る。早くウェイシア王国に行きたいけどGランクの見習い冒険者が国境超えるのも変だろうからランクEくらいにあげたほうがいいと思うの。


 冒険者ギルドで依頼を受けてからレイディ迎えに来よう。

 朝来た時に比べると人が少なくなっている。もうあらかた依頼を受けて出発したんだろう。さて低ランクの依頼書は…ランク別でボードに貼り分けられてるのか、Gはっと……この端のやつか。



 薬草採取(G)


 解熱草10本あたり 300メル

 品質査定有り

 薬師ギルド

 随時受付

 

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 毒消し草10本あたり 400メル

 品質査定有り

 薬師ギルド

 随時受付

 

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 ロキ草10本あたり 350メル

 品質査定有り

 薬師ギルド

 随時受付

 

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 ビオ草10本あたり 200メル

 品質査定有り

 薬師ギルド

 随時受付

 

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 リン草10本あたり 200メル

 品質査定有り

 薬師ギルド

 随時受付

 

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 オロ草10本あたり 300メル

 品質査定有り

 薬師ギルド

 随時受付

 

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 ヒール草10本あたり500メル

 品質査定有り

 薬師ギルド

 随時受付


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 ロキ草は鎮痛薬、ビオ草は止瀉薬、リン草は咳止め、オロ草は傷薬、ヒール草はポーションの材料か。薬草は随時受付ばかりだな。一度に受けられるのは三件までだから随時のやつは採取してから受けるほうがいいかな。



 倉庫の片付け(G)

 時給200メル 片付けが終わるまで

 3名

 スクルト商会

 

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 皿洗い(G)

 時給150メル 期間要相談

 1名

 ウサギの尻尾亭

 

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 うわやっす、時給安いなランクGってこんなのか?冒険者っぽくない。ゴブリン討伐とかはもっとランク上なのか。えっとランクFの依頼は裏っ側か。


 納品(F)

 角兎肉キロあたり450メル

 5匹又は5キロ以上

 品質査定有り

 ウサギの尻尾亭

 

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 納品(F)

 角兎肉キロあたり400メル

 5匹又は5キロ以上

 品質査定有り

 ピットの肉屋

 

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  納品(F)

 角猪肉キロあたり800メル

 1匹又は10キロ以上

 品質査定有り

 ピットの肉屋

 

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  納品(F)

 コッコ鳥肉キロあたり300メル

 5羽又は3キロ以上

 品質査定有り

 ピットの肉屋

 

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  納品(F)

 角兎の毛皮1匹あたり500メル

 5匹以上

 品質査定有り

 グルフ工房


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  納品(F)

 角鹿の毛皮1匹あたり1000メル

 5匹以上

 品質査定有り

 グルフ工房

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 この辺りも狩ってからでもいけそうなやつばっかりだな。まあ、角猪と角兎の肉と毛皮辺りにしておくか。3枚の依頼書を剥がし受付に並ぶ。ロッタさんのカウンターだった。


「こんにちは。この依頼を受けたいんですが」


 差し出した依頼書をロッタさんが受け取り挨拶を返してくれる。


「初めての依頼受注ですね、ギルドカードをお願いします」


 言われてバックから出すふりをしてインベントリから出して渡す。


「カードは鞄に入れるより首から下げて服の中に仕舞うほうがいいですよ。肌身離さないようにしたほうが紛失しにくいですから」


「そうですね、革紐でも買ってそうします」


  忘れてた。こう言うのは首からつるのがテッパンだ。インベントリの方が本当は安全なんだけどね。


「お独りで三件の受注ですか。期限は3日ですから注意してくださいね。失敗すると1割の違約金が発生しますから」


 角兎肉で言うとキロ400メル5キロ以上の納品だから200メルの違約金ってことか。一食あたり300~500メルとしたらまあ食事一回分ないくらいかな?

 そうだ、狩場についても聴いておこう。


「ロッタさん、この辺りのオススメの狩場はありますか?」


「西門方向の森はゴブリンやオークが出るのでオススメしません。薬草などの密生地がありますがチーム推奨ですね。南門方向の草原には角兎がいますよ」


 ロッタさんは説明しながら依頼書とカードを返してくれた。じゃあ南門から出て西門から帰って来るルートで行くか。


「ありがとうございます、では行ってきます」


 昼食用に何か買ってからレイディ迎えに行こう。




 南門を出るとき従魔の首輪は毎回返してもいいけど邪魔くさいのでそのままで行く。入門待ちをしている人達にビビられるが、


『おっ散歩、おっ散歩、ご主人とおっ散歩~なのヨ』


 レイディが楽しそうだ。昨日も一日中厩舎だったからね。門を少し離れてからレイディに乗り草原に向かう。眼下に冒険者発見、アレはさっき一緒に講習を受けたハーレムチームだ。彼らも角兎狩りかな?なんかこっち指差してなんか言ってるっぽいが、離れた方がいいだろうから進路を北西にとる。


 これだけ離れりゃいいかな。ただっぴろい草原の北西は森に、西は国境に続いており森の手前で着地する。


「レイディは空から角兎を探してね」


『あい、りょーかいなのヨ』


 頭をワシャワシャすると「Gyua!」っと一声鳴いて飛んでった。さあ兎狩りと行きますか。

 毎度 《エリアサーチ》からの《ウインドバリア》で獲物捕獲し《ウインドカッター》のコンボでサクッと行きます。


 あ、レイディが上空から獲物発見キラーン、急降下ヒュゥゥゥ、前足で掴んでガシュッから急上昇ギュイィィン して行った。


 そんなわけで1時間ほどで12匹の角兎ゲットです。一部レイディの狩って来た角兎の毛皮は爪の跡がつき売り物には不向きですが、まあいいでしょう。12匹の解体に時間がかかってしまった。

 さて次は角猪。角猪は森に生息しているので森に向かう事にしよう。



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今のエルの価値観は一般とは少々ズレています。

通常新人冒険者が止まる宿などは朝夕二食付きで一泊1000メルあたりが相場。大部屋だとも少し安い。生活費は1日1000~1500メルあればやっていけます。エレーニアの泊まっている宿は貴族も泊まるそこそこ高級な宿でしかも1人部屋です。

食事も一食100~300メルですね。(大根1本10メルだったのに)

エルは一食に倍近くかけていいもの食べてます。令嬢仕様が抜けてません。

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