第12話 私じゃないのね
部屋に帰ってギルドカードを眺める。
うふふ、白いギルドカード。まだGクラスの見習いだけど今日から冒険者。自己紹介の時は『冒険者のエルといいます』と言うのだ。ギルドカードを掲げてクルクル回る……
ふっ、カード受け取った時は人目があったし、なんだか貰って直ぐ浮かれてると思われるのも嫌だったが、宿の部屋で独り小躍りするの……馬鹿みたいだからもう辞めとこう。
さて裏表示だがスキルは通常隠すモノだ。パーティやクランでは連携を図るため教えあうことがあるが普通は教えない。いくつかジョブを載せるくらいでいいかな。加護って載せるとバグるのかな。
この世界は多神教でそのうちの一柱を信仰する国もあるがオルフェリアは多神教だ。エレーニアは月一くらいは神殿へはお祈りにいってたけどそれくらいで加護はつかないだろう。加護にどんな効果があるのかわからないけどそのうち調べてみよう。
一応表示するのはジョブから
剣士・槍士・狩人・獣使い・魔術師・薬師・釣り師・料理人
魔法属性は
光・風・火・水・土
と言う感じにした。ジョブは多いけどレイディ連れてるから獣使い系いるのよね。
次はインベントリの所持品チェック、と言っても全部取り出すことは出来ないので、明日に備えて装備の確認をする。
先ずは武器。
1.腰に差してる鉄のブロードソード
ごくありふれた鉄剣だ。学園の授業の為に購入したやつ。
2.愛用のレイピア
3.アダマンタイト製のエストック
レア武器だな。貴族令嬢には刺突武器がオススメされる。得意かどうかは別で扱いの優雅さが求められるからのようだ。これも初心者冒険者が持つには高級品だ。しばらくは出せないな。
4.木剣
鉄芯が入った細身の木剣……コレ学園の備品じゃね?授業の時使ったやつ。返してなかったか、後で返そうとインベントリに入れて忘れたな。もう、うっかりさんなんだから。
5.鉄のグレイブ
実用向きなものだけど一般的に使われる槍と穂先が違い薙刀の様だ。長柄武器として学園ではサブウエポンとして使用していたやつ。
6.ミスリル製の槍
またレア武器。柄までミスリル製、柄には蔓植物の様な意匠を凝らしてあり高級感を醸し出す……使えんな。《斬性強化》の付与つき。
7.長弓
学校の授業用にと購入したごくありふれた長弓。一応革の矢筒と木の矢20本程、鉄の矢30本、ミスリルの矢55本程あるがミスリルの矢は当分死蔵だ。
8.妖精の弓
ゲームならSレアとか
9.グルカナイフ2本
なぜこんなものまで……ああ、一時期学園で鉈などの代わりにグルカナイフを持つのが流行った。藪の打ち払いから解体までいろいろ使えて便利。一見鉄製だがミスリルに鉄をコーティングして鉄製にみせてる。何気にレア武器。
10.
鉄製10本、ミスリル製が10本。
11.鋼のマンゴーシュ
“飾り気のない短剣”って思ってましたがマンゴーシュでした。余りエストックと両手使いの練習はしてなかったよう思うのだけど。
12.アダマンタイトのソードブレイカー
なんつー物まで持っておられるのですか?いつ使うんだ?対人用だよな、ソードブレイカーって、襲われる前提なん?しかしアダマンタイト製か、高いんだろうなぁ。ああ、パパンからのプレゼントだ。
いやあ、たっぷり持ってますな。クローゼットから慌てて持ち出さなくても十分だったか?、しかしレア武器多くて使い所に悩む品揃えだよ。
次は防具。
1.
………パパンからのプレゼントだ。《重量軽減》と《防御力倍化》と《敏捷倍加》の付加付き。パパン、いくらしたんだよこの一式。令嬢に持たせる防具じゃないよ。いつ着るんだ。どういう状況設定での購入なん?
2.ワンショルダーの革のブレストアーマーと革のガントレットと革のレガース
今つけてる一式。去年ママンに買わされたやつだな。ショルダーガードなしのワンショルダーなのは弓も使ってたから。でもこれ替えにもう一式あるんだよ。体操着の替えのノリ?当分これでいいよね。
3.鉄のバックラー
あんまり使わないな。メイン刺突武器の剣士は盾は持たないよね?
防具は少なめだった。でもエレーニアは魔術職で後衛じゃないのか、そういえば杖がないぞ。(あれ?そういえば魔法の発動体無しで使ってるよ)なんなんだ、この前衛装備、弓もあるけど。もう、オールラウンダーなのね。本当に貴族の令嬢なの?この国のお妃になるには近接戦闘も必須なのか?
あ、後衛って事はローブとかアクセサリーも防具になるのか。なんかあったよな。姿変えの指輪に防御力はない。
4.リバーシブルマント
フード付き片面は羊毛、片面は角鹿の毛皮で作られている。角鹿は毛皮は撥水効果がある。まあ普通だな、やや高そうではあるが一般的と言っていいだろう。
5.ファイヤーリザードの革のマント
炎耐性あり、防寒効果あり。また高価そうな。
6.身躱しのローブ
ジャイアントシルバースパイダーの糸とミスリル鋼糸で織られた布を使用。《温度調節機能》付加付き。基本属性中級までの魔法攻撃を防ぐことができる…………をい、パパン……なんじゃコリャ。
パパンのプレゼントは武器も防具もレア加減が半端ないぞ。エレーニアはどんな危険地帯に足を踏み入れるというのじゃ。
う~ん、こうしてみればパパンの異様とも言える愛が感じられるのだが、それだけに最後のパパンの態度が解せんな。まいっか。
7.防音のイヤリング
半径1メートル内の音を外に漏らさない。内緒話用。
8
ありとあらゆる攻撃を防ぎ跳ね返す。一度使用すると魔力チャージに10時間かかる。パパンからのプレゼント。
えーっと…なんだかなあ、武具チェックしただけで (精神的に)疲れたのでも一回お風呂入って寝よう。
翌日朝食はトースト、スクランブルエッグ、カリカリベーコン、サラダでした。なんか日本のモーニングな朝食感が半端ネェ。
冒険者ギルドに行く前にレイディの所に行く。ちょうど厩舎の掃除をしていたベン青年とお喋りしていた時良い話を聞いた。
商業ギルドの話だ。
商業ギルドの登録はランクにもよるが最低の5級で年会費1万メルで露店を開く資格が得られる。税率8%
4級は会費年5万メル、他国との小規模行商権が得られ、税率は6%
3級は会費年10万メル、店舗権(個人では無く商会として登録ができる)が得られ、税率は5%
2級は会費年50万メル、国内に支店を出せる(店ごとの登録が不要)税率は3%
1級は会費年100万メル、他国との大規模商業権を得られ、入国時の関税免除。税率は2%
細かい規則はもっとあるけど商人になるつもりはないのでおおよそを教えて貰った。詳しいなぁっと思ったら「いづれ独立して自分の店を持ちたい」そうだ。うん、夢は大事だ。
冒険者ギルドの買取税は10%なのでお得かもしれない。今後突如金策が必要になったとき露店開いて売り捌けるし、うん、いいかも。後でいってみよう。
やはり朝は人が多いな。まだ9時になってないのに。今から依頼受ける人達で一杯だ。各カウンターに結構な人数が並んでる。ん?買取カウンターの横にテーブル出して座ってるのランダさんだ。
14〜5歳の男の子と何か話してる。もしかしてあそこで受付やってるのかな?行ってみよう。
ランダさんの前にいるのはさっきの少年と似た格好の少年が二人、近くには受付が終わったのか話をしてる14~5歳の女の子二人とちょい歳上っぽいの青年のチームなのかな?もしやハーレムチームか?女の子の一人はショートソードと弓を持ってる狩人スタイル、もう一人の女の子のはローブに杖の魔術師スタイルだ。おお、結構二人とも可愛いぞ。
あ、空いた、じゃ次行こうかな。まずは挨拶から。
「おはようございます、ランダさん」
「ああ、おはよう。来たんだね」
ニッコリ微笑む肝っ玉母さんなランダさんに、申請書を渡す。さあこい!
「はい、よろしくお願いします」
「じゃあ新人冒険者は「此処はテメェらみたいな小娘が来る所じゃねぇ! とっとと帰りな!!お嬢ちゃん」」
キタキタキターーーッ!
ランダさんの声を遮る怒声!待ってました、テンプレ!ガバッと勢いよく振り向くとそこにはガラの悪そうな髭ズラのオッさんとぽっちゃりと言うよりやや巨体な割につぶらな目の男と、細いと言うより骸骨っぽいオッさんの3人がコッチを…………
コッチを……………
……………
コッチじゃなくてさっきの女の子二人とお兄さんに詰め寄っていた………
「ええええぇぇっ」
思わず叫んでしまった。私の声にガラ悪3人組と、女の子とお兄さんの3人が一斉にコッチを向く。だって、だってぇぇぇ、仕方ないじゃん。これって一生に一度だよね、新人冒険者なんて呼ばれる時期はあっという間に過ぎるんだよ!なのになんで…
なんで…
私じゃないの~~~!
私を見て『なんだ此奴』みたいな顔をしたガラの悪そうなオッさんはもう一度女の子の方を向く。
「冒険者業は子供のお遊びじゃねえんだよっ」
怒鳴り声に女の子の二人は身を寄せビクッと怯える。そこにかばうように青年が前に出る。
「僕達は真剣に冒険者を目指してるんだ、お遊びなんかじゃない」
「そうよ、遊びなんかじゃないんだから」
「兄さん…」
青年の後ろから狩人スタイルの子が叫ぶ、魔術師タイプの子は大人しそうだ。どうしよう?割って入るか?無理矢理テンプレの流れをこっちに…とか考えてると、後ろから“パンパン”と手を打つ音がした。
「はい、そこまでだ。グーザ、ギルドハウス内でイザコザは禁止だよ」
ランダさんが止めに入った。グーザと呼ばれた男はふんっと鼻息荒く青年を睨め付ける。ランダさんは今度は青年らに向かって話す。
「冒険者ってのはこんな連中だが命張って依頼をこなしてるんだ。あんたら甘く見てたら怪我じゃ済まないよ。辞めるんだったら今のうちだ」
「「「やめません」」」
3人綺麗にハモった。それを見てランダさんはふっと笑う。
「わかったよ、じゃあ新人連中は移動するよ、ついといで」
そう言うと一瞬ちらりと視線をずらした。ふとランダさんが視線をやった方を見ると、ガラ悪3人組が爽やかな笑顔を浮かべギルドハウスを出て行くのが見えた。アレ?もしかして。
ランダさんをジト目で見ると、私の視線に気付いたのか顔を上げフッと不敵に笑う。
「ほら、あんたもだよ」
ランダさんは振り返らずスタスタとホールを歩いて行くので、その後ろをぞろぞろ新人冒険者がついて行く。
冒険者ギルドハウスの奥にはだいたい訓練場がある。
C級冒険者パーティの『風の牙』と名乗る4人の冒険者がそこにいた。
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パパンの愛が詰まった贈り物
パパン(`・ヘ・´)「エレーニアには傷一つつけさせないっ」
ママン ( *`ω´) 「…あなた!」
パパン o(≧▽≦)o 「だって凄いんだよ、この付加がねぇ~」
ママン (´-ω-`)=3「また何処ぞの商会の口車にのせられて……はぁ」
なんてやりとりがあったとかなかったとか………
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