15
◇ ◇ ◇ ◇
ぴちょん、ぴちゃん、と水が
あれ? 斎場に水音なんてするものあったっけ? いや、ないよそんなの。
じゃあ、ここはどこだろう? 目を開けてみたらいいんだろうけど、なんだか開けたくない気もする。
「起きたかえ?」
「……っ!」
その身体中に
ゴクリと
「い、いざなみさま」
目を開けた私を
ひ、ひえー! 私ってばまたこっち側に連れてこられちゃったの!?
辺りを見渡すと、暗い
もはやホラーでしかない。いつぞや見せられたホラー番組よりもよっぽど怖い。
「大神様、いかがでしょう? ご満足いただけましたか?」
「うむ。後でそなたにも
「ありがたき幸せにございます」
こいつだっ! 思い出したっ! 最後に見た!
音もなく現れたのは黒布を被った男の人。人
……ともあれ、せっかく大儺の儀が上手くいっていたのに、この男の人に台無しにされた。
この恨み、はらさでおくべきか! 否! はらすべし! この男の人の目的がなんなのか分かんないけど、そんなの私の知ったことか! 食事を横取りする大罪よりも重い! 極悪人ぞ!
「そこへなおれぃ! 成敗してくれる!」
前、東のおじさん達と見てて禁止された、時代劇の主人公のお裁きが役に立つ時が来た。きっと町奉行さんもこんな所で真似されるとは夢にも思っていまい。
ふんす、と、鼻息荒く男の人に対して怒りの視線を投げつける私を、伊邪那美様は面白そうに見ている。その視線に気付いていながらも、今はこちらが先。
一方、私に
無視か、無視ですか。そうですか。
……そっちがその気ならこっちだって。
「いざなみさま、このひとにごほうびはいりません」
「何故じゃ?」
「だって、みんなのまえでどーどーとさらってきたし、あそこにはかみさまたちもげんろーいんのひとたちもいました。きっとすぐにおむかえがきます」
あの場で私を攫うのは悪手だったんだよ。でもまぁ、攫うのに良手はないけどね!
それに、この男の人の目的がただ私をここへ攫ってきて伊邪那美様に引き渡したかっただけとは考えにくい。
だって、こうして伊邪那美様に訴えている時に余計なことを言うなみたいな雰囲気が
「ふむ。だが、そなたが戻らなければいいだけのことであろう?」
「……いざなみさまは、どうしてそんなにわたしのことをおそばにおいておこうとおもわれるのですか?」
「気まぐれじゃ。そなたは見ていて面白そうだからの。退屈はせぬだろう」
出た! 神様特有のゴーイングマイウェイ! 周りは見ないぜ、もちろん後ろもな!ってやつ!
だけどね、忘れちゃ困る。私にも不本意極まりないけど、その血が流れてる。つまり、なにが言いたいかというとだね。
「じゃあ、いざなみさまがこちらがわへあそびにこられたらよいとおもいます!」
「ほぅ!」
たまーにこういう爆弾発言なるものをしてしまうのです。大丈夫。なかなかなことを言っている自覚はある。ある分、アノ人達よりもマシだと言い張りたい。
それに、だってほら、毎回攫われてちゃその度に皆に心配かけちゃうもの。来てもらえれば、まぁ、皆を驚かせるとは思うけど、おいおい慣れていただいて。なにより、伊邪那美様も
「それは
「だって、ホイホイあそびにきてるかみさまだっているんだから、いざなみさまだってきていいはずです。それとも、おいやですか?」
「いいや。それは確かに良い案じゃ。行こうぞ。久方ぶりの地、胸が
ルンルンと小躍りしそうな伊邪那美様はさておいて、私のこの提案には男の人も静かに驚いていた。まさかここから出す発言を私の方からするとは思わなかったのだろう。何のつもりかと問いただす視線の突き刺さること突き刺さること。
「なら、いざなみさま、このひとにごほうびはひつようないですよね!?」
「そうじゃな」
「なっ!」
話がそれたと思わせといてのリターンズ、効果
「それに、用もない」
「大神様! それはあまりに酷いことではございませぬか!? この娘を連れてきたからこそ、今の約束を結ぶことができたのです! お考え直しくださいませ!」
「……ふむ」
何を褒美にもらおうとしていたのかは知らないけど、貴方が得をするようなことは許してやらない。絶対に。
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