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 もう少し歩くと、立派な本殿が見えてきた。その脇には手水舎に社務所といった神社によく見られる建物が手入れをきちんとされ、綺麗で清潔な状態を保っている。


 本殿の脇では、ここの神職さんらしきお兄さんが竹箒で落ち葉を掃いているところだった。


 お兄さんは私達に気づくと、スッと姿勢を正し、ペコリと頭を下げた。


 そして、私達の隣にいるなんだかご機嫌な神様の様子に僅かに首を傾げたけれど、そのまま何も聞かず笑みを浮かべて私達を招き入れてくれた。



「こんにちは」

「すみません、遅くなってしまって」

「いえ。毎年ありがとうございます」



 さぁ、こちらへと手で促され、社務所兼住宅になっているらしい建物へ足を向けた。



 ……ちなみに神様はまだついてくる。


 自分の領域だからいいけどさ、お仕事はいいの? 参拝者、いたよ?


 なーんてちょっぴり心配になってきちゃうくらい本殿へ戻る気配はない。微塵もない。



 そうやって神様の心配してると、視線が上から浴びせられていることに気づいた。



「君が例の子かな? はじめまして。この青龍社の神職、神凪春道かんなぎはるみちです。よろしく」



 お兄さんは私の目線に合わせるために、わざわざしゃがんで挨拶してくれた。


 少し色素の薄い瞳が私をしっかりととらえている。



「はじめまして。みやびです。よろしくお願いしましゅ」



 お辞儀を簡単にすると、お兄さん、春道さんは口角を上げた。



「しっかり挨拶ができるなんて偉いね」

「むふふー」



 頭をそっと撫でられ、いいお気持ち。


 それに触発されたのか、神様も手を伸ばしてきた。


 けれど、その手が私に届くことはなく、あと少しのところで私の体は神様の手の届かないところまで移動させられた。


 キラキラ眩しい笑顔のお兄さんと、巳鶴さんによって。



「そろそろ仕事をなさるお時間では? この子達の相手は私が勤めますから、お気になさらず」

「……ほう」



 スッと細められる神様の切れ長の目。


 それを見るのは、見れるのは数限られた人だけ。それも、好感情ならともかく、そうではないだろう視線。


 だけど、お兄さんはそれを物ともせず、一切合切無視した。


 ……強い。



「さ、こちらへ。置くための場所はあけてあります」

「え、えぇ。雅さん、行きましょう」



 えっと、神様ってこっちで、お兄さんはここの神職さん、で合ってるんだよね? 逆じゃないんだよね?


 歩き始めているお兄さん達と神様、交互に目を動かし、神様の衣の袖をツツッと軽く引っ張った。



「おしごと、がんばってください」

「……愛いなぁ。仕事を頑張る者は好きか?」

「はい! だーいすき!」

「ふふふふっ。だーいすきか。そうかそうか」



 神様は私の返答に満足そうに何度か頷くと、そのままスタスタとどこかへ歩いて行ってしまった。


 大丈夫なのかなーあの神様、ホント。



「雅さん?」



 少し先で待っていてくれた巳鶴さん達の元へダッシュで駆け寄り、何でもないのだと首を振った。



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