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◆ ◆ ◆ ◆
だいぶ順調にいってる、か。
この分だと、あと二週間くらいで都に戻れる。
これが昔だったら徒歩、良くて馬だってんだもんな。車に電車に新幹線っつう文明の利器はすげぇぜ。
「おい、食ったら出るぞ」
「はい」
半分以上寝ぼけてんのか、返事があったのは劉だけだった。
海斗はそれでも
「劉、他に起きていない者はどれくらいだ?」
「はんぶん、です」
「……叩き起こせ、と言いたいところだが」
劉が立ち上がりかけたのを目で引き止めた。
この宿に着いたのは
綾芽はともかく、仕事では体力知らずの海斗がここまで疲れてんだ。ここらで多少は休息も取るべきだろう。
「さっきのはやめだ。昼飯食ったら出るぞ。一体どれだけ朝昼兼用になる奴が出るのかは分からんがな」
「はい」
「それと綾芽! 服だけはちゃんと着ろ! ヤローの
まったく、チビじゃあるまいし、なんでこんな大の大人の服の世話までしなきゃなんねーんだか。
「夏生さん、うるっさいわぁ」
「誰がうるさくさせてると!?」
「あーもー、携帯鳴ってはりますよ?」
「あぁ?」
チッ。はぐらかしやがって。
……鳳?
「もしもし?」
『雅がいなくなった』
「は?」
雅が? ……また?
『十中八九、黒幕の手中だと父親が怒り狂っている。神が二柱がかりで結界を
しかも、今回は前回に輪をかけて酷い。
前は自分の知り合いだったからか、雅の父親は全くそういうのは見せなかった。
それが今回はそうらしい。
「陛下はご無事か?」
『陛下と橘なら問題ない。だが、父親は
「持ち
『分からん。抑える方法はあるか?』
「抑える方法ったってなぁ……」
雅はたぶん、今までの様子を聞く限り危害は加えられない。ゆえに、解決すべき最優先事項はこっちだ。
それにしても、あのフリーダムな神が言うことを聞くなんて……あ。一人、いるじゃねぇか。
陛下という呼称に反応した二人が視線を送ってくる。
「雅がまたいなくなっちまったらしい。しかも、今回は十中八九、例の黒幕の
「抑える方法にあてあるのか?」
「雅の母親がいる。おそらく、いや、確実に奥方の言うことなら聞くはずだ」
「あぁ、なるほど。確かに。……綾芽?」
海斗が向かいに座る綾芽の様子を
目を開き、一点をただ見つめるだけで、さっきからうんともすんとも言わない。
『おい』
「あ、あぁ。雅の母親なら止められると思う。だが、顔も知らん。しかも、こっちの人間じゃないらしい」
『他にいないというなら仕方ないだろ。問題はどうやって連れてくるかだが……顔を知ってる? 名前は?』
鳳が電話の向こうで何やら話し込み始めた。
そして、こちらでも動き始めた奴がいた。
「夏生さん、自分、ちょっと抜けますわ」
「は?」
「綾芽、お前どこ行くつもりだよ」
「決まっとるやろ? あの子の母親連れてくるわ。自分なら顔も名前も大体の場所も知っとるもんでな。海斗、後頼んでもえぇ?」
「おー」
全くちょっとどころじゃない雰囲気させといて何言ってやがるんだか。
ただ、確かにタイムロスができるより、行けるならすぐにでも行ったほうがいい。海斗もそれは分かっているようで、ごねたりしない。
「まったく。あの養い子にしてこの養い親あり、だな。……あんま無茶すんじゃねーぞ?」
「はいはい。おおきに」
綾芽は手を軽く振って部屋を出て行った。
本当はチビを探しに行きたいだろうが、感情にとらわれず、周囲に影響が出る上での優先順位を間違えることはなかった。
「海斗、出れるか?」
「おう! もう大丈夫だぜ!」
「よし、それならお前は先に動ける奴らだけ連れて残りへ向かえ。俺はまだ体力が戻らない奴らと残って情報を整理する」
「りょーかい! 劉は?」
「劉は残す」
「おっけ。じゃあ、ちょっくら準備して出るわ!」
海斗もバタバタと部屋を出て行く。
……あぁ、早くゆっくり温泉につかりてぇなぁ。
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