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「おおとりさん、おみまいー」

「陛下、このようなところまで」

「よい。楽にしろ」

「……申し訳ございません。不覚をとりました」



 帝様の姿を見て起き上がろうとした鳳さんを帝様が手で制した。


 悔しそうに眉をひそめ、唇を噛み締める鳳さんは元の顔の良さも相まって凄みがある。



「構わん。お前や夏生達忠義を変わらず尽くしてくれる者は得ようと思っても得られるものではないからな。たまの休みと思って過ごせ」

「ですが、このような時に」

「夏生達が上手くやってくれる。それに、怪我の功名と言うべきか、うみは粗方今回ので取り出せたようではないか」

「そう、ですね。ではそちらの方を」



 鳳さんと帝様がよく分からない大人の笑みを見せている。


 これは黙って見ておくだけにしておこう。



 鳳さんは右脚をグルグルと包帯で巻かれ、上に吊るされている。


 それ以外にも擦り傷が至る所にあるけれど、右以外に大きな傷跡は今は見られない。



「おおとりしゃん、どこがいちばんなおしたいですか?」

「いい。構うな」

「えー」



 そりゃ一番目立つ脚は治したらダメだろうけどさ。


 すぐにバレちゃうし。


 でも、擦り傷くらいなら大丈夫だと思うんだけどなぁ。



「ここは療養先には向かんな」

「え?」



 千早様が窓の外を見てそうポツリと言った。



 ま、窓の外に何かいるの?



 ついアノ人を見ると、扇を広げ、目をそらしている。



 そ、そんなに!?


 やっぱりパパッと治して退院してもらった方がいいんじゃ……。


 鳳さんが今度は取り憑かれちゃう!



「ち、ち、ち、ちはやさま! どうすればいい!? どうすればだいじょうぶ!?」

「落ち着け。この者も術師だ。自分の身くらい自分で守っているだろう?」

「でもー!」



 今は普段の状態じゃないじゃんか!


 そこを数で押し切られでもしたら……。


 まずいよね!?



 怖いけど! 怖いけどっ!!



「ちはやさま、ゆうれいへらしにいこう!!」

「は?」

「ここは病院ですから無理があるのでは?」

「でも、すくないほうがいいでしょ? だってそうしないとおおとりしゃんが……おおとりしゃんが……」



 叫びそうになった私の口に、鳳さんが側にある棚に手を伸ばして取った何かを放りこんできた。



 んん。甘い。


 瑠衣さんとこで売ってる鼈甲飴だ!



「……本当に黙るんだな」

「夏生か?」

「綾芽です。きっとこいつが来るだろうからってその袋と一緒に式を」



 綾芽? 今、綾芽って言った?


 まだ南のお屋敷の前で別れてから半日そこそこしか経っていないのに、なんだか色々ありすぎたせいでずっと会ってないみたいな気がする。



「おおとりしゃん、あめ、ありがとーございます」

「いや。ここは病院だ。騒ぐな」

「あい」



 確かに。ここは個室とはいえ、部屋を出ると他の人もいる。


 騒がず走らず大人しく。



「じゃ、じゃあ、いってみよー」

「……忘れるわけではないんだな」

「怖いなら行かなければいいのに」



 そういう問題じゃないんだよ!


 ほら、千早様! 早くこっち来て!!



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