はじめましてお師匠さま

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◇ ◇ ◇ ◇



  次の日の朝、まだ眠い目をこすりつつ広間に行くと、嬉しいお客様が来ていた。



「おはよう、雅ちゃん」

「かなでさま! おはようございましゅ!」



 奏様が両手を広げてスタンバイしてくれたから、私もその腕の中に飛び込む。眠気なんか一瞬でおさらばだ。


 それと、お客様は奏様だけではなかったらしい。入ってきた時は障子の影になって気づかなかったけれど、男の子がもう一人。二藍ふたあい色の水干すいかん姿で、今の私よりもいくらか年上に見える。


 奏様の腕の中から出て、その子の前で膝をついた。



「はじめまして。みやびでしゅ。あなたはだぁれ?」

「僕? 僕は君の先輩だよ」

「せんぱい?」

「えぇ、そうよ。雅ちゃんが知っている歴史でいうと、江戸の頃、神籍に名を連ねた子で、千早ちはやっていうの。貴女あなたの神修行の指導役として連れてきたのよ」

「ほぁー」

「……間抜け面」



 ま、間抜け面言われたっ!

 ぐぬぬ。自覚があるだけに言い返せぬっ。



「千早、意地悪しないの。これは貴方あなたの修行でもあるんだからね?」

「分かってるよ。 それに、常世とこよの元主宰神の娘ということは、いずれ冥府を訪れることもあるってことでしょう? もしかすると、冥府の主になるかもしれない。となると、あの男の主になる可能性もあるってことだ。恩を売る相手として不足はない」

「……そうか。あの男が雅ちゃんに仕える可能性があるなら消しちゃまずいわね。しまった。解毒薬作っとかなくちゃ」



 ……なんだか怖い話してる気がするから、聞こえなかったフリをしておくよ。


 でも、特訓の先生かぁ。これでようやく本格的に神様修行が始められそうだ。

 なにしろ、今までずっと我流だったから、ちゃんと先生について学ぶいい機会かもしれない。神様を二人は知っているけれど、そのどちらも先生にするには難がある人達だったから。

 

 グギュルルルルゥ


 真剣な顔つきで話し込んでいた奏様と千早様の顔がこちらに向けられた。


 ……そうです。お腹の音の犯人は私です。だって、朝起きてすぐで、朝ご飯がまだなんだもの。

 桐生さぁん! 美味しい朝ご飯を所望します!



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