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◆ ◆ ◆ ◆



―――綾芽や海斗、薫が雅におつかいの準備と心得を言い聞かせている頃。



「……はぁーっ。まったく」



 深い溜息もつきたくなるってもんだ。

 あいつら、結局仕事を増やしやがって。

 


「いいか、おめぇら。これは日頃たるんできたお前らの隠密性を取り戻すための訓練だ。チビに気付かれないよう、買い物の間護衛しろ。それから、材料の買い足しと荷物の受け取りもだ。……行け」



 目の前に座っていた奴らが一斉に立ち上がり、広間を出て行く。


 隠密部隊をこんなことに使おうだなんて、いつもの俺だったら考えもしなかったことだってのによぉ。


 俺もヤキが回ったか。ちくしょう。



「じゃあ、いく……いって、きます」

「うぉっ! 劉、おめぇ、まだいたのか……って、ちょい待ち!」



 いつの間にか背後に立っていた劉に驚いたのもつかの間、俺の目は奴が手に持っているモノに釘付けになった。


 それは……。



「なんだ? それは」

「……カメラ?」

「そんなもんは見りゃ分かる! 俺が聞きてぇのは、なんでそんな上等なカメラを今、おめぇが手に持ってんだってことだよ!」



 ……このカメラ、前に見たことあるぞ? テレビでどっかの野郎が話してやがった。


 手振れ補正は当たり前、現在の最新撮影技術を集合させた超高性能カメラとかで、現場で活躍するプロ御用達。そしてもちろん、アマチュアにとっては垂涎すいぜんの品だとか。


 それだけの代物。誰でも手が出せるほどの金額なわけがねぇ。



「これで、みやび、とる。あやめさん、めいれい」

「……綾芽ぇーっ!」



 あ、い、つぅー!

 申請があった経費と実際に請求が来た金額がやたら合わない月があったが、こいつのせいかっ!

 あの時、俺が城の経理からどんだけ文句言われたと思ってんだ!

 


「綾芽さんなら、さっきチビについて行きましたよ?」



 俺の叫びに、なんだなんだと顔をのぞかせてきた野郎が一言。



「……減俸げんぽうだ、このヤロー」



 職権乱用? なんとでも言え!


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