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 楽しい時間はあっという間に過ぎ、夕日も地平線の彼方に沈んだ。


 瑠衣さんは屋敷に泊まる気満々でいたみたいだけど、結局薫くんからの猛反対と夏生さんからの許可が下りずに泣く泣く帰って行った。



 「さて、えぇ具合に夜も更けてきたわ」

 「……む」



 なんだか嫌な予感がする。



 綾芽がお風呂上りに私の頭を乾かしてくれながら漏らした一言は、私の危険物察知センサーにひっかかった。


 でも、このセンサー、この頃働かないんだよねぇ。


 昨日も隣の部屋にアノ人いたのに、なんの反応も見せなかったし。



 「はい、もうえぇよ」

 「ありがとー」



 綾芽がドライヤーを鏡台に置き、私の手を握った。



 「じゃあ、行こか」



 ……え? あの、どこへ?


 ご飯も済ませたから食堂ではない。


 トイレもお風呂の前に行ったから違う。



 「どこいくの?」

 「んー? 大広間や」



 大広間。


 そういえば、食堂前にある大広間からたくさんの人の声がするような。


 さっきの一言といい、あんまり行きたくないような。


 

 ……な、夏生さんからのありがたーいお説教、とかじゃ……ないよねぇ?



 大浴場から出て大広間へ向かおうとしていた時に、丁度海斗さんも向こうから何やら大量に持ってやって来た。



 「あ、綾芽! 遅ぇよ。もうみんなスタンバってんぞ!」

 「堪忍。この子の頭乾かしてたんよ」

 「ほら、チビも行くぞ」



 ……聞きたくない。聞きたくないけど、聞いておかなきゃ後悔する。



 「かいと。そのてにもってるの、なぁに?」

 「ん? あぁ、ろうそくだよ。いるだろ?」



 人がたくさん集まってる大広間で、夏の夜長にろうそくが大量に必要な集会。

 


 「……」



 「あ、逃げた」

 「廊下走ったらあかん。危ないで!」



 逃げてない。


 本能に正直な勇気ある撤退と言って欲しい。



 「ひゃくものがたりはんたーい!!」



 やるなら皆だけでやってくれ。


 だーかーらー……この手を離してくれぇい!!




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