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□ □ □ □



 巳鶴さんによる海斗さんへのお説教タイムだけど、十数分経ってようやく終わった。


 それから当初の目的どおり、私達は再び薬草園に戻ってきた。


 巳鶴さんは日光にあたると肌がすぐに赤くなってしまうらしい。それでも外にでないとは言わず、日傘を差して私の隣にしゃがみ、色々教えてくれている。



「じゃあ、これはなぁに?」

「あぁ、即効性のある睡眠薬になる薬草ですよ」

「へ、へぇ……そっか」



 いつ使うのかは聞かないでおこうかな?


 だって、笑顔がまぶしい巳鶴さんの後ろ。海斗さんが真顔で首をブンブンと左右に振ってるもの。



「……ふぅ」



 巳鶴さんからどれが薬草なのか教えてもらえたおかげで、最初とは段違いに作業がはかどるはかどる。


 最初は雑草と薬草の区別が分からなかったからとんでもなく多く感じたけど、薬草の方が少し多いくらいだったんだねぇ。


 そういえば、先週もしてもらったって言ってたっけ? それなのにもうこんなに雑草がはびこっているとは……雑草パワー恐るべし。


 うんせ、どっこいしょっと、なかなかにしつこい雑草の根を引っ張り抜こうとしていた時だった。



「……ぎゃあぁぁぁ! くさいぃぃぃぃ!」



 力を溜めるために大きく深呼吸した時にその凶行は行われた。


 なんぞ!? これはなんぞ!?


 鼻にくる嫌な臭い。

 その臭いの元から顔を全力で反らして、薄ーく目を開いて臭いの正体を確かめた。

 

 むっ。なんか見たことあるぞ。確か……ドクダミ?


 元いた世界の家の庭にも生えていた。

 可愛い花をつけるけど触っちゃいけない、触ると臭いが手につくからって、庭を世話してくれてたおっちゃんが言ってたっけ。



「確かに、嗅ぎ慣れないと臭く感じるかもしれないですね」

「さっきの仕返しだ」

「まったく、大人気おとなげない」



 顔だけじゃなく上体まで反らしていた私を巳鶴さんが後ろから支えてくれた。そして、そのまま困ったように溜息をつき、私達の横に立つ海斗さんを見上げた。


 へへっと笑う海斗さんに、そんなにさっきのお説教は応えたのか、と反省。


 ……するのは寝る前、綾芽に今日あった出来事話す時で十分じゃ!


 海斗さんのすね、弁慶の泣き所を目がけて目いっぱい手刀をお見舞いした。



「痛っ! ちょ、タンマ! そこはダメ!」 

「にゃっはっはぁっ! たんま? しらないことばでしゅね」

 


 脛をかばって地面に倒れ込んだ海斗さん。身長のハンデがなくなり、こうなってしまえば後はこちらのものだ。



「まっ……あっ、くっさっ!」



 逃げないようにマウントポジションをとり、ドクダミを海斗さんの鼻にこすりつけた。


 報復? その通り。


 

「二人とも。仲がいいのは分かりましたから、そこらでおやめなさい」

「えー」

「貴女ならまだしも、海斗さんみたいな図体のでかい方がここでのたうち回ったら、周りの薬草が傷つくでしょう?」

「ちょっ、俺の心配はっ!?」

「薬草の二の次です」

「……俺の扱い酷すぎんだろぉ」



 はいはい、そんなこともあるある。男の子だもん、泣いちゃダメ。


 そっと海斗さんから降り、何事もなかったかのように草むしりに戻った。



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