怒るのも仕事のうち
1
□ □ □ □
それから約ひと月後。
世の中の皆さんは連休。私は毎日連休。
ちびっこ生活を完全に
綾芽はお仕事で出かけていて、二日経った今もまだ帰ってきていない。
地方視察らしく、出かける寸前まで誰が行くかでもめていた今回のお仕事。
結局のところ、夏生さんの鶴の一声で綾芽と綾芽の下についている人達が数人行くことに決まったのだ。
お仕事じゃなきゃ私も行きたいと立候補したところだけど、仕事なら仕方ない。一人でお留守番ってわけじゃないし、綾芽達のお仕事の邪魔もしたくない。
だから、せめてお土産だけはとしっかりおねだりしておいた。
良い子にしてれば買うてくるわって言ってたから、きちんと良い子で待ってるんだぁ。……おかしいよね。いつも良い子でいるはずなのに。
――あぁ、それにしても。
「ひまだー」
暇だ暇だ暇だ。
畳の上をあっちに転がり、こっちに転がり。
本は読んでしまったし、テレビも面白くないのしかやってない。探検も入ったら駄目だと言われている所以外やり終えてしまった。
「そういえば」
「ん? なんだ?」
非番のおじさん達がお
このお屋敷は大半の部屋が
あまりにも暇すぎる時に聞こえてきたそんな声に、ぼんやりと耳を傾けた。
「綾芽さん達、今日戻ってくるらしいな」
「あぁ。予定を二日も早く繰り上げたんだと」
「まぁ、おちびもいることだしな」
「それな」
なんと! 綾芽が帰ってくるとな! いいこと聞いたぞ?
壁に耳あり、障子にメアリーならぬ私あり、とはこのことよ!
急いで起き上がり、ふと何気なく机の上に目をやった。
――あぁ、駄目だ。
思い出した。思い出してしまった。一日一個までと言い渡されているというのに、半分以上が空となってしまったお菓子箱の存在を。ちなみに、そのペースで一ヶ月食べ続けても半分行くか行かないか。半分以上が空になることなどまずありえない。
誘惑が天使と悪魔を召喚し、悪魔が競り勝った。その結果がこれだ。
「そろそろ戻ってくる頃だろうから、車移動しとかねぇと」
「やべっ! 忘れてた! 鍵どこやったっけ!?」
「あー……確か、玄関の鍵かけに」
そろそろ戻ってくる、だって?
こんな畳でごろごろしている場合じゃない! お菓子箱の中身をすぐにでも補充! 帳尻合わせられれば何もなかったことと同じこと!
ふふっ。みんなのお手伝いをして、少しづつ貯めた豚さん貯金箱のお金を使う時がやって来た。
ひぃ、ふぅ、みぃ、よ、っと。
両替してもらったお札が……うん、大丈夫。結構ある。
貯金箱の中からカエルさんがま口にお金を移してっと。盗られちゃいけないから、シャツの中に押し込んで……うん、完璧。
部屋を出て、玄関まで続く廊下を小走り気味で歩く。
誰かに言ってからがいいかな? でも、皆も忙しそうに動き回っている。さっきの非番のおじさん達も、もういないしなぁ。
……コンビニ、近くだし、すぐ済むし、一人で行っても大丈夫だよね?
あっ! そういえば、門のところにいつも交代で立ってる人いた! その人に声をかけていけば大丈夫じゃーん。
玄関で靴をはいて、いざ! 行ってきます!
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