方法45-1︰な、なんだってーっ!(リアクションは思い切り)
「あーっ!」
ゴッ!
「いったーい!」
正解はベッド下に落ちてたサロエが慌てて起きて頭ぶつけた、でした! なんも出題してないけどな!
「おはよう。どうしたの?」
ベッドの下から出てきたサロエに声掛ける。
「ガネ様、おはようございます。えーと、リレドさんから伝言預かってたのすっかり忘れてました。昨日は魔導具でいろいろあったんで」
その言葉に昨夜の記憶が蘇る。
「ガネ様とヘゲさんに、話があるから来てほしい。いつでもいいけど早めがいい、だそうです」
また、笑みを浮かべて男前な表情でワタシを見つめるヘゲちゃんの顔が浮かんだ。あれはヤバかった。なんか大人びて見えたし。
その日の晩。さっそくワタシとヘゲちゃんはリレドさんのとこを訪ねることにした。もちろんサロエも一緒だ。いつでもいいとは言ってたみたいだけど、ワタシたちの方にあんまり時間がない。今でさえ、もしひと騒動巻き込まれるようなことがあったら時間切れになりかねない。
向かう馬車の中、空気は硬かった。ワタシもヘゲちゃんも喋らない。
ヘゲちゃん、昨日の記憶あるのかなあ。それとも、記憶なくて何やらかしたか心配だからこんなおとなしいのか。
どっちにしても、いつものヘゲちゃんなら適当な効果でっちあげて誤魔化そうとしてるはず。“あれは着けるたびランダムに性格が切り替わるのよ”とかなんとか。どうしちゃったんだろ。
アシェトは結局、ネックレスの効果を教えてくれなかった。
“このネックレスの効果はな──教えてやれねえ。それじゃヘゲの成長には繋がらねえんだ”
なにそれ、って感じだ。あそこまでだらだら前置きしたんなら、普通は教えてくれる流れでしょうが! とはいえ、教えてくれなかったものはしょうがない。
ワタシに強引に迫ったヘゲちゃん。少し時間が経って冷静に考えるとあのときワタシは、正直ちょっと、いやかなりときめいた。普段からネタっぽくフラグとかヘゲちゃんエンドとか言ってたけど、実際にそうなってみるとあそこまで動揺するとは思ってなかった。
魔導具の影響受けてない素のヘゲちゃんだったら、受け入れてたかもしれない。
けどなあ。実年齢はともかく、ヘゲちゃん見た目10代前半、せいぜい半ばだからなあ。素で言うとさすがにストライクゾーンのボーダーよりアンダーな……。おや?
たしか初登場時、ヘゲちゃんて10歳超えるかどうかくらいに見えたんじゃなかったっけ。今だとどうやっても、そこまで幼くは見えない。
あのときのヘゲちゃん……ダメだ。今の顔しか浮かばない。あれ? おっかしーなー。見慣れてきたせいで、言動に引っ張られて最初より歳上に感じてるとか?
これが漫画だったら過去巻引っ張り出してきて、何巻のどこから変わったのかとか、じつは変わってないとか確認できるのに。他にもただ作者の絵柄変わっただけだったりとかあるある。
アシェトがヘゲちゃんの成長のためとか言ってたけど、これがそうか。違うな。少なくとも一昨日くらいまでは今の顔だった自信がある。過去ログ少ねぇよ。
あ、でもやっぱなんか成長してるよ。だって前ならもっと身長差あったもん。振り返ったってヘゲちゃんが背伸びしたって、あんな近くに顔が……か、顔が……。
おっといかん。どうも自分と向き合ってると思考が脇に逸れてくなあ。話を戻そう。
とにかくワタシは、えーと。あれが自然な状態のヘゲちゃんだったらありだった。そのままイベント絵回収して固有ルートに……って、これいつもどおりの思考だ! なんだろう。パターン化されてるんだろうか。
「アガネア」
「……うん」
なーにが“(溜め)うん”だ。なんて自分にツッコんでみるけど、どうにもダメだ。なんかすごい緊張する。どう話したらいいのかよく解らなくなってる。
「昨日のこと。あ、銃のこと」
「うん」
「あれ、あなたにあげるヤツだから。あれで相手と入れ替わって逃げる。ヒモはグリップの端にあるボタン押したら巻き取られて、また使える。射程は30メートルくらい。ないよりマシでしょう? どこかで撃つ練習しておいて」
「うん」
「それとネックレスのことだけど……もう、あんなことはしないでちょうだいね」
「うん」
お互いに嫌味も皮肉も説教も言い合いも無し。でも、もちろんこれまでみたいに険悪だとかそういう感じじゃない。
なんだろう。どうすりゃいいんだろう。コレ。
「カペッ。それにしてもリレドさん、なんの用なんでしょうね? 実はサプライズ送別会とか」
微妙な空気に耐えられなくなったのか、サロエがはしゃいだ声で言う。っていうか、最初の“カペッ”てなんなんだ。
「送別会じゃ帰って来られないじゃん。壮行会でしょ」
「事情を知らない悪魔からしたら、今回の件は休暇みたいなもの。そんな会を開くほどたいした話じゃないのよ」
ワタシたちの厳しくも暖かい言葉に撃沈するサロエ。ワタシとヘゲちゃんがお互いにやりあわないので、とばっちりで被弾したとも言う。
その後も弾むほどの会話はなく、ワタシたちはリレドさんのところに到着した。
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