最初に見た客は混浴へ

 疲れたぁ~……。

 男湯、女湯、混浴……今日はこの三つニャ! 明日は違う所のお風呂掃除ニャ! なんて言っていたが、この風呂掃除、どっと疲れる。

 明日は暇そうなティノを捕まえて一緒にやろう。寮の部屋に早く戻りたい。

 だが、その寮はこの宿の裏手にあり、そこまで行くのも億劫おっくうだ。こういう時、テレポートができればな……と思うが。そういえば、ティノのテレポートはまだ一回も見ていないと気付き、やってみてくれ……と頼んでみるか! と思ったところに早速一人の女性が来た。

 おや? 知らない女性。

 ということは……お、お客様!?

 俺はそれまでのだらん……とした状態からピッと立ち、ごゆっくり! と言うべきか悩んだ。

 何故ならその女性はチラチラと周りを見回し、さっと男湯と女湯の外れにある混浴と書かれた暖簾のれんをくぐって行ったからだ。

 お、俺! 初めて見た!! 混浴露天風呂に入って行く女性!!!

 それもあの女性、低めの位置にお団子ヘアーをしている十九歳くらいか?

 茶髪で灰色の目を持ってて、体格の良いスマートな女性!!

 ついでにあのふわっと久しく嗅いでいない匂い。

 香水の匂いだろうか、少し爽やかそうな、いや、薬品……湿布の匂いにも似ている気が。

「何やってるニャ?」

「いや、この世には噂だけではなく、本当の事があるんだな……と思ってな」

「そうかニャ、それで終わったかニャ?」

「ああ、終わった」

「じゃあ、今日は終わりニャ。お疲れニャ」

「ああ」

 俺は突然やって来て、女湯と混浴の出入り口を見張るように立って居るユベシが居なくなるのを待った。

「何してるニャ? 帰るニャ」

「いや……」

「何だニャ? まさか! 覗こうなんて思ってるニャ?!」

「思ってない、思ってない!!」

「だったら、早く帰るニャ。お客様の身の安全はこのユベシが守るニャ!」

 この場合は仕方ない。

「分かったよ、そんなことを言って仕事をサボるのか……なんて思って悪かったな」

 ちらっとユベシの顔を見れば少しぎくっとしていたが、ここを離れる気はないらしい。

 少しティノの様子でも見てから寮に行くか。そういえば、寮って……。

「なあ?」

「何だニャ?」

「寮の場所は教えてもらったから分かるんだが、俺がこれから暮らすことになってる部屋って、どこ使えば良いんだ?」

「一緒にいらっしゃった女神様と魔女さんと一緒の和室三人部屋ニャ!」

「へ?」

 それって……。

「ああ、羨ましいニャ!! だニャ! フシシッ!」

 といたずらっぽくユベシは笑った。

「嘘だろ?」

「ウソじゃないニャ。本当の事だニャ。もう温泉の女神様もあの魔女さんだって承知済みニャ」

「う、そ、だ、ろーーーーーー!!」

 俺は走っていた。こんな事あって良いはずがない。だって、あのパーティメンバー二人と一緒って! それって……夢のようだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます