ティノに支えられながら

 ここでもかぁ……と思ってしまう。

 エルフの娘であるロディアは温泉の女神であるクレアの言い付けを守り、エルフの樹を隅々まで案内してくれた。

「ちょ、待ち……」

「待ってはくれませんよ、江東さん」

 ロディアを先頭にクレアとリアムはすたすたと進んでいる。こんなにこの樹が広いとか聞いてない。あの捕まった時のロディアと違い、今のロディアは何だか厳かとしながらもちゃんと役割を果たそうとしている。

「いや~参りましたね! 江東さん。あたしも江東さんをおぶれると良かったのですが、リアムさんがおぶろうか? と言ってくれた時、どうしてすんなりとそうしてくれ! って言わなかったんですか?」

「お前、それ、俺に言うなよ。誰があんな奴の力を借りるんだよ」

「でも、キノコスライムをとっさに出したのはリアムさんですし」

「お前は見てただけか?」

「はい! ほんとステキでしたよ。何でしたっけ……何とかかんとかっていうのに所属しているだけはありますね! あれなら誰でも気を許すというか、頼ろうかなって思ってしまいますよ!」

 やけに、今日のティノはアイツの事を褒める。

「く、こんな……ところで、あいつの、良い所、聞きたくないねぇ……」

「だったら、歩いてください! 江東さん!! きっと皆待ってますよ。エルフの皆さんが住んでいる所はもっと上なのです」

「どのくらい上なんだ?」

「えーっと……かなり! です!!」

 具体的に言わないとか……覚悟しないといけないくらいのやつなんだろうか……。タオルで拭いても拭いても汗が出て来てしまう……というのはないのだが、辺りは朝へとなろうとしているのか白くなり始めていた。

「いや~それにしてものどかな所ですね~」

 余裕でそんな事言うとか……、ああ、これ絶対明日筋肉痛とかになりそう……もしくは数日後とかに筋肉痛が出そう……。

 そんな不安と闘いながら俺は樹を上っていた。木登りをするというのはないのだが、樹が時々風で揺れるというのもないのだが、しっかりとした幅広の樹の枝の道を少し歩いただけで疲れるというのがずっと続いている。

 これは何だろうと思って、歩き出してすぐにロディアに訊いたところ、人間が早くここから立ち去るようにする為の魔法という答えが返って来て、さらにワナワナとしたのだが、こういうワナワナがそういうのに関わるとクレアが教えてくれて、それはいけない! と思って、落ち着こうと他の事を考え出したのだが……どうにもならない。

「あ! 太陽の光が! 樹の葉が多くて分かりませんが、感じられますね~」

 こいつ、どこまで余裕なんだ?

 俺はちらっと深呼吸をし出したティノを見てしまった。

「ティノは良いな、辛そうじゃなくて」

「いえ、辛いですよ。こんな良い感じの空気を思いっきり吸い込めない江東さん、かわいそう!」

「何?! じゃあ、吸い込んでやるよ!! スーーーーーッ!!!」

 けっこうきつい。

「どうですか?」

「……んー……鳥の声が聞こえて来たな……」

「そうですね……早朝の森という感じです」

 当たり前の会話をしてしまった。

 いろんな種類の鳥達が一度さえずり、また静かになるあれは早く起きた者にしか味わえず、それも天候が良い時しかない。

 そんなのを聞いたからか、少し元気になれた気がして俺はまた歩き出した。

 もうクレアとリアムの姿が見えない。そんなに休んでしまったのだろうか、俺は。

「なあ」

 俺はそのことに気付かれないようにわざと先を行くティノに話し掛けた。

「何です?」

「リアムがさ、何か前に見た時とは違う感じに見えるんだ、俺」

 何となく、何故かさっきまでとは違い、歩きやすくなった気がする。

「ああ! あれはこの樹のせいですよ!」

「へ?」

 俺は立ち止まってしまった。驚いたのだ、そんな答えが返って来るとは思わなかった。

 見間違いではなかった。

「あたしも気になって、ここに連れられて来た時に他のエルフさんに訊いたんです。そしたらですね、リアムさんの中にある神の力が神の力によく似たエルフさんの使っている魔法と相まって、そうなってしまうということです」

「どういうことだ?」

「つまり、神の力にエルフさん達が使う魔法が反応している状態ですかね。だから神々しくなるようにしている! ということです!!」

「本当かぁ?」

 怪しい……絶対、信じられない!!

「まあ良いじゃないですか、この世界に不思議なことは付きものですよ!」

 それはそうだが……。

「じゃあ、何でクレアはリアムのようにならない? あいつの方が神だろう? 本物の」

「そうですね……、その魔法の力を受け付けてないのかもしれませんね。だって、クレアさんはマジがみ!! ですから!!」

「そうかぁ……何かまた疲れ出したわ……」

 そんな話を聞いたら……。

 俺はその後もてくてくと歩いて皆が待っている場所へと辿り着いた。その頃にはもう美しい夕焼けとなっていて、クレアに遅い!! と怒られながら、リアムが準備してくれたご飯を食べ、暗くなる前に案内するとロディアに言われた簡素な木の家に一人で入り、荷物を置いてもう寝よう……と思っていたところ、にょっと現れたロディアに驚かされ、う、うそだろ! なんて騒ぎながら、他のエルフに会うことなく、このエルフの樹に住むエルフの中で一番エライ! とされる長老に会うこととなった。

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