電話してみた結果

 電話に出たのは久しぶりに聞く女性の声。

 あの対象モンスターはペットになるのかどうか……という仕事で派遣登録したニホンイセカイの棧さんだった。

 俺は簡単に用件を言う。

「あの、異世界温泉宿でおもてなしのお手伝いという求人を見たのですが……」

「ああ……」

 その話は順調に進み、数日後にはその仕事に決まってしまった。

 改めて派遣会社に契約の為、来社すると棧さんに。

「大変仲良くなられているみたいで安心しました。今後も当社では江東様のパーティメンバーはこのお二方に頼もうと思っておりますが」

「はい、そうしてください……」

 泣きたくなって来る。何で、こんな……結果になってしまったんだろう。もう全ての派遣会社がそうだろう。

 そのまま帰れば柊月に良かったですね! いつですか? いつ出て行くんですか? と言われ、また準備をし、一週間後には異世界での仕事を始める為に柊月の住むマンションを出て、荷物を片手に歩き出していた。

 今回はそのままあの『安全、安心、テレポート魔法陣!』がずっと聞こえる空港隣にあるテレポートの場所に行く。そこが集合場所となっていたからだ。

 集合場所にはティノとクレアの姿はまだなく、新しく担当になった二十五、六歳くらいの若井わかいさんという新人さんのような黒スーツ姿の女性が一人いた。

「おはようございます、江東さんですか?」

「はい」

 名前だけは知っていたが、彼女に会うのはこれが初めてだ。電話で聞いてしまったことを言って来るだろうか。

「あの……」

「はい」

 若井さんは素直に返事をしてくれた。

「あいつらには電話で言った事、黙っててもらえませんか?」

「え? っとぉ……ああ! パーティメンバーの件ですか? 棧から聞いております。すごい方々をパーティメンバーにしてますよね! 分かりました、言いません。ご安心ください!!」

 ああ、良い笑顔で言ってくれる。和むわ~、この人良い人だ……。

 そんなことを思っていると聞き慣れた声がして来た。

「ヨシキチ~! 待たせたわね~」

「あ、新しい担当さんですね。よろしくお願いします」

 ちゃんとしてる魔法使いの女の子と大声で元気にやって来た白髪浴衣姿の温泉の女神様……。

 またクレアはいつもの姿で大荷物だ。

 ちらっと若井さんを見る。大丈夫だ! とこちらを笑顔で見てくれた。それだけで良い。それだけでまたこいつらとやって行ける!

 異世界用のパスポートを用意し、順番を待つ。

 電話であの話を初めて聞いた時、俺は嘘、だろ……と思ってしまった。

 だって、もうこの二人以外にパーティメンバーを見つけられない気がして来た。

 というか、他の派遣会社に登録は出来ても、新しいパーティメンバーには巡り会えないとか……。

 それは俺がサキュバスに狙われているせいで、それってつまり……厄介だってことで、こんな大変な事に首を突っ込んで来る奴はいたとしても、ここまでレベルの高い温泉の女神様と魔法使いの女の子は他にいない。というか、何で俺がサキュバスに……って話知ってんの?!! 俺、話しましたっけ? という感じだった。

 だが、それを棧さんに聞くのは恥ずかしかったし、それよりも何、あのパーティメンバー……どんだけレベル上げして、どんだけスゲー冒険者になってるの?!!!

 チート転生した者も恐れをなす程とか……。

 怖い怖い!! こんな彼女達に守られている俺は……いったい、どんな人物なのだろう……。

 日本から異世界へのテレポートが終わった。

「うお~、すげー……」

「ここが『ラヴィサンクラシオン』と呼ばれる場所で、この奥に異世界温泉宿があります」

 添乗員さんみたいな若井さんの話を聞きながら、俺は日本の温泉地と変わりないように見えるこの道を歩く。

 全ては仕事の為。そこかしこに居るいろんな種類のかわいい獣耳さん達は後でじっくり見よう。

 じゃないと、このパーティメンバー二人が怒りそうだ。

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