第31話
その夜、隆輝達4人はミーティングルームに緊急召集をかけられる。
前日に出動があった事で訓練が休みになるのが通常である事から、休息モードとなっていた4人は、すっかり不意を突かれた形となった。
「さて、今日はなぜここに集められたでしょうか?」
4人の気持ちを知ってか知らずか、香織は満面の笑みを浮かべているが、その様子に、むしろ4人は不安を感じずにはいられなった。
「今日は昨日の反省会を行うわ」
「げっ」
香織の言葉に隆輝は思わず声にならない声を上げる。
「あら飛沢、何か思う所がある様ね」
隆輝は顔をしかめながら溜息を吐くと、意を決して手を上げようとするが、それよりも早く香織は口を開いた。
「まあ、まずは昨日の映像を確認しましょうか」
その言葉に隆輝は出ばなをくじかれた思いをしつつ、大人しくモニターに目を向けた。
映像が始まると昨日の今日という事もあり、例え視点が変わろうと、その都度その都度の記憶がある為、特に目新しさは感じなかったが、始めて自分が戦っている姿を客観的に見た隆輝と晶には、何とも言いようもない違和感を覚える。
特に晶は、所々映像内の自分の動きに対し、納得がいっていない様で、時折険しい表情を見せていた。
しばらくすると香織は、2メートル以下級のNM18体を殲滅したところで、映像を止める。
「今までの所で、何かあるかしら?」
香織の問いかけに、皆考え込むが、すぐさまアイリが手を上げ、香織も発言を認める。
「4人になって初めての戦闘でしたが、フォーメーションや連携は問題なかったと思っています。ただ一瞬の気の緩みから、私や晋一が攻撃を受けたのは問題であったと思います」
「では、今後はどうすればいい?」
「もっと、集中して臨みたいと思います」
「人間なんて集中力が切れる時間は必ずあるわよ。今回はそのタイミングでやられたようなものだから。もっと現実的な対策はないかしら?」
アイリはその言葉に、少し考えるが、すぐに口を開く。
「ああいうう場合でも、常に対処できる様に首位にを警戒出来る態勢を維持すべきかと思います」
隆輝は、その時の事を思い出すが、確かに4人で会話している時、他のメンバーをみており、周囲への警戒が薄れていた事を自覚する。
「飛沢はどう思う?」
「確かに、あの時は会話に意識を取られて、周囲への警戒を怠っていたと思います。なのでアイリが言うように、視線だけでも周囲に気を配れるようにならないと、と思います」
「じゃあ、次の訓練からその事も意識出来るわね」
香織の言葉に4人は返事を返した。
「さて続きを」
香織はそう言って映像を再生するが、途中で隆輝のヘルメットが故障した際に、通信装置だけではなく記録装置も破壊されていた為、有翼型との戦闘は隆輝が連れ去られたところで終了となった。
「それで飛沢、どうやって有翼型を倒した?」
香織の言葉に、隆輝は記憶を辿りながら、ビルに叩きつけられそうになったのを回避した事から、屋上での戦い、閃光弾を用いてNMを貯水タンクに激突させた事を出来るだけ分かりやすいように伝える。
「無茶するわね」
聞いていたアイリも思わずそう呟くが、晋一や晶も同様に呆れた様な表情を見せていた。
「しかし、閃光弾を使ってタンクに衝突させるって、よくそんなアイデア浮かんだわね」
香織の言葉に、隆輝は苦笑いを浮かべる。
「なんで俺、そんな事したんですかね?」
隆輝の言葉に、香織も他のメンバーも更に呆れた様な表情を見せる。
「本当に呆れた。まあ、咄嗟にそういう事が出来るなんて、ある種のセンスと言っていいのかも知れないけど」
そこで香織の表情が厳しいものに変わるが、隆輝もそれは予想していたようで、慌てつつも、香織の言葉を遮る。
「分かってます! 頭に血がのぼって1人で突っ走ってしまった事は、反省しています」
香織は険しい表情のまま、無言で隆輝を見つめるが、そこで晶がおずおずと手を上げる。
「あの」
「何かしら、桂木?」
「そもそも私が怯んでしまった事で、先輩が捕まってしまったので、原因は私にあると思います」
「いや、晶は悪くないだろ」
隆輝は晶の言葉をすぐに否定するが、意外にも晶は憮然とした表情を隆輝に向ける。
「なんですか、先輩は格好つけたいのですか?」
「そんな訳あるかよ。晶こそ余計な事言うな」
「はい、それまで」
香織が緊迫する隆輝と晶の間に割って入ると、流石に2人とも口を閉ざした。
「一ノ瀬と東城は何か意見はあるかしら?」
「
「だな」
アイリの言葉に晋一が同意すると、香織も隆輝と晶から離れる。
「じゃあ、今日はここまでね。じゃあ解散!」
香織の言葉に4人はそれぞれミーティングルームを後にするが、帰り際に隆輝は晶を呼び止める。
「悪かったな。でも俺は晶が悪いなんてこれぽっちも思っていないからな」
隆輝の言葉に晶は、一瞬口を尖らせるも、すぐに表情を緩ませる。
「分かりました。でも私も足を引っ張らない様に努力しますから」
そう言うと晶は早足でその場を去り、残された隆輝は苦笑いしながら、大きく息を吐いた。
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