第三十五話 調理器具作成

 翌朝、宿の食堂で朝食を食べたあとルカの分の昼食を買ってから部屋に戻り、今日の予定を伝えることにした。ちなみに朝食も部屋で食べても構わなかったのだが、腐った女店員がルカが部屋から出てこないのを不審に思って変な噂(俺が幼女とよからぬことをとか、兄妹揃って相手をなんてこと)流しやがったから一応部屋から出てるとこも見せておくようにした。


 こいつ、獣人とか気にならないどころか最近はルカにまで変な目で見てきてるんだよな。腐ったうえにロリ百合とか最悪だろ……なんでこんなのが宿の店員やってるんだろうな……この腐ロ百合店員が!


「ダンジョンに行きたい気もするんだけど、レポートを終わらせたいのとこの魔道具|(スマホ)の検証もしておきたい、それにラウの方もまだちょっと不安があるし、ある程度の闘気が使えるようになるまではダンジョンには行かず、ブロンズランクの依頼をこなして行こうと思ってる」

「おう、兄貴! がんばるぜ!」

「ルカは算術の勉強をしてもらおうかと思ってるけど、無理だけはしないようにな」

「はい、リン兄さん」


 ラウには冒険者として肉体労働、ルカには頭脳労働ができるように育ってもらいたいからしばらくはこんな感じでいいな。って、ラウのレベルっていくつだっけな?


「ラウ、ちょっとおまえを鑑定して見てもいいか?」

「ん、ああ、いいぜ」


 ラウのレベルは16になっていたが、新しく能力を得てはいなかった。


 西門の先の人の気配がない場所まで移動し、ラウにキラービーとグレーウルフを狩らせ、俺は周りに人がいないことを確認し、スマホのアプリを色々試す事にした。


 よし、誰もいないな。まずは『魔法アプリ』から行くかな。


 『魔法アプリ』+[魔力操作]で『ストーンショット』の軌道を操作し木々を縫うように飛ばして次に『ストーンショットx3』を別々の的にした木にそれぞれ当てるなどということを試す。

 今度は『具現化アプリ』+[魔力操作]で『ハンドガン』の銃弾を操作しようとしたが失敗。次にもう一丁『ハンドガン』を出し、先に出していた『ハンドガン』を投げてそれを撃ってみると傷すらつかなかったが、何発か当てていると制限時間前なのに光となって消えてしまった。


 んー、具現化した物にはどうやら耐久力みたいなのがあるみたいだな……これだと剣とか具現化して打ち合ってたら耐久力が切れて剣がいきなり消えてバッサリ斬られてしまうなんて事もあるかも知れないな。さて、次は気になってることを試してみるか。


 『錬金アプリ』で『倉庫アプリ』内の水を『魔法アプリ』を利用してお湯にできないかあれこれと試してみると成功し、そして『倉庫アプリ』内に『錬金アプリ』専用のスペースのようなものができて、その中で他のアプリを利用して錬成できる方法を発見することができた。


 これ、説明にはなかった方法なんだけど……裏ワザ的な何かなのかな? でも、これはかなり使えるな……あれ? これ使えばもしかしたら料理とかも錬成で作れんじゃないか? 確か『倉庫アプリ』にボアがまだあったはずだな。


 試しに、まずボアのモモ肉を錬成で一口大に切って焼き上げ塩を加えてみるとボア肉の塩焼きが完成した。


 おお! できたぞ! ……出来はしたが、なんかすごい魔力消費してるな。これなら普通に調理した方がいいような気がするな。一応味見して――あ、ちょっと早いけどラウを呼んでついでに昼食にしちゃうか。


「こっちの肉の味はどうだ?」

「んー、塩だけだとちょっと物足りないかも知れないです。肉もちょっと硬いかもです、」


 ラウもちゃんと敬語っぽくしゃべれるようになって来たな。って、今は肉の感想だな。う~ん、俺もラウと同じ意見なんだよな、手持ちの調味料が塩しかなかったからこの味付けで仕方ないにしても、肉の焼き加減のせいか分からないけどちょっと硬い。これなら普通にたき火で焼いた方がいいか――まてよ、いっそ調理器具を作ってみようかな。

 カセットコンロと見たいのでもいいけど、例えば鍋の底に火の魔石を組み込み、外側は熱くならず内側にだけ熱が行くように調整して、上の方に火の魔石へ魔力を送れるような装置と魔力供給の切り替えスイッチもつけて、さらに魔石を電池のようにはめ込んで使えるようにすれば魔力が無くても使えるはずだな。ちょっと面白いかも知れないな……帰りにギルドと雑貨屋で材料を仕入れるか。


「兄貴? また変なこと考えてんですか?」

「ん、いや、ちょっと思いついたこと……って『変なこと』とか言うなよな!」


 午後からもラウには狩りを続けさせて、今度はシューティングゴーグルの機能を使って三つの的を『ストーンショットx3』でマルチショットして当ててみたのだが、当てるだけならシューティングゴーグルの機能を使わないよりも格段に楽ではあったが、やはり[魔力操作]でポインターの軌道を変えるのが難しくほぼ直線にしか飛ばせなかった。

 その後も『魔法アプリ』で色々試行錯誤している内に、散弾銃のようなショットガン系と大砲のようなキャノン系の魔法を作ることに成功した。


 さて、今日はこのくらいにして、買い物もしたいし早目に帰ろうかな。


 ギルドで依頼の受注、報告のついでに火の魔石を買い、雑貨屋で他にも色々購入し宿に戻り食堂で夕食を買ってから部屋に戻り三人で夕食を食べた。


「それじゃ、ラウはこれから勉強な。俺はちょっと作りたいものがあるから、ルカはラウの勉強を見てやってくれ」

「うー、勉強……」

「はい! お兄ちゃんのことは任せてください!」


 俺は、調理用魔道具としてグリル鍋とホットプレート、それに一応カセットコンロも作ることにした。

 まず鍋の底と下部に火の魔石を細かくして混ぜ込むように錬成し、鍋の外側を遮熱版で包みさらにその外側をコーティングして触っても熱くならないように加工、鍋の上部へ火力調節ダイヤルと魔石をセットするケースをつけて一応魔道具・鍋ができたが上部に色々つけたせいで重心が高くなりすぎていたので鍋の底におもりを増設して完成とした。

 ホットプレートは基本構造は鍋と同じ感じですぐにできた。

 コンロの方はカセットコンロをイメージして外側を作り、火の魔石から熱ではなく火が出るように調整し五徳をつけて、本来カセットボンベを置く位置には魔石を設置できるようかこうして完成した。


 なんか思ったよりすごくいい感じの物ができてしまったな。これ……やっぱりこんなのこの世界には存在しない魔道具だろうな。人目があるところだと使わない方がいいかも知れないな……やりすぎたかな?


「なー兄貴~。それ、なんなんだよ?」

「……料理に使う魔道具だよ」

「え! 魔道調理器ですか! 魔道コンロというものがあるとは聞いたことがありますが……かなり高価なものだったはずですよ」


 ルカ……この子はなんでこんなに知識があるんだろうな、頭もいいし、話し方もしっかりしてる。ラウとは大違いだな! 本当に12歳なのかとおもってしまうな。って、それよりこういう魔道具あるんだな、魔導調理器か。じゃ、俺が作ったのはさしずめ『魔導鍋』『魔道プレート』ってとこで、最後に作ったのはまんま『魔道コンロ』でいいならコンロだけは人目が合っても使えるかもしれないな……あ、普通の鍋とフライパン買ってなかったから明日にでも買っておくか。


 魔道調理器の作成を終え、今まで書きためていたレポートをまとめる作業に入ることにした。


 なんかスカスカのレポートになっちゃったけど、今の所調べようもないからとりあえずこれで我慢してもらうしかないよな。


「ラウ~、ルカ~、そろそろ寝ようか?」

「はい」

「やっと終わる……」

「ラウ、お疲れ。明日も今日と同じとこで狩りするからな」


 翌日は雑貨屋によって鍋などの調理器具と、市場で調味料や野菜類を買ってから昨日と同じ狩場へ向かいラウは昨日と同様に狩り、俺はボアを狩って草原の隅にちょうどいい場所を見つけたので魔道鍋で煮込み料理を実際に作ってみることにした。 


 よし、ここなら魔物も出なそうだし人も来ることないだろう。さて、定番だとシチューとかか……もうちょっと凝ったもの作ってみるかな?


 下ごしらえは、まずボアの骨を軽く砕き水の入った魔道鍋に野菜類といっしょに入れて加熱、キャベツの葉をはがし魔道コンロを使って鍋に湯を沸かし軽くを茹で、次に『錬金アプリ』でボアのひき肉を作ってからそれに野菜のみじん切りや香草、調味料などを混ぜ合わせて茹でたキャベツの葉で包む。

 魔導鍋で作ったスープをこしてそのスープにトマトペースト乱切り野菜に香草を入れてひと煮たちしたら調味料と肉をキャベツで巻いたものを入れてあくを取りつつ煮込み、小麦粉水をいれてとろみをつけたら最後に塩を入れて味を調整して『ロールキャベツのトマト煮』の完成。


「ラウ、昼ご飯だぞ~」

「兄貴、もうちょっと待ってください」


 まだ魔物が結構いるようだったのでラウを手伝い魔物を一掃してから昼食を食べることにした。


「えっと、兄貴。これはなんて料理何ですか」

「普通にしゃべっていいぞ。これは俺がいた世界で食べた事のある料理をマネて作ってみたものだ。ラウは肉が好きらしいから肉を多めに使ってるぞ」


 食べることを躊躇していたラウが肉と聞き、一気にかぶりついて食べ始めた。


「兄貴! これうめぇな! キャベツの塊かと思ったら中にやたら細かい肉が入ってたぜ! このシチューみたいなスープにも肉がごろっと入っていてトマトの味が染みててうめぇ」

「好評なようで何よりだ。ルカにも食べさせたいから一個取っておくからな~」


 ラウは一心不乱にガツガツとロールキャベツを食べていて俺の言葉は耳に入っていないようだったので魔道鍋からお椀にロールキャベツを一つとトマトシチューを少し取り分けて『倉庫アプリ』に入れておいた。


 午後からラウはそのまま狩りで、俺は残ったボア肉を香草焼きにしたり、スマホのアプリを色々試したりしながら、ラウの様子を見ていると短剣に闘気を纏って戦えるようになってきていたみたいだったので、明日からダンジョンに行こうかと考えていた。

 夕方になったのでギルドに行き、ブロンズランク依頼の受注と報告をして、帰りにスープとパンを買って宿に戻り、昼に作った料理も出して三人で夕食を食べた。


「リン兄さん、この肉をキャベツで巻いた料理トマトのシチューが絡んで美味しいです!」

「口に合ってよかったよ」

「それもうめぇけど、俺はやっぱりこっちのボアを焼いたやつがいいな」


 ルカにも好評なようで安心したよ。ラウ、こいつは本当に肉が好きだな。もう肉焼いて出すだけでも喜んで食いそうだな。


「あ、ラウ。明日からダンジョン行くぞ」

「お、いよいよか。楽しみだぜー!」

「その意気でこの後の勉強もしっかりしろよ~」

「リン兄さん、大丈夫です! お兄ちゃんにやる気がなくても勉強させて見せますから」

「ルカ……もう少し兄ちゃんに優しくなってくれ」


 さて、明日からダンジョンだからレポート仕上げちゃっとくかな。


 レポートをとりあえずまとめ上げてから就寝し、翌朝はいつもより早い朝食を食べたあとに、万が一ダンジョンに泊ることになってもいいよう、ルカには金貨一枚を渡してからダンジョンに向かった。



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