第二十五話 三次試験Bチームメンバー

 説明の後のグループ分けで俺はBチームになり、とりあえずチームごとに席を移動してメンバーと顔合わせと自己紹介をすることになった。


 一人目「僕はライル、剣士だ。武器は両手剣のブロードソードで魔法はあまり得意じゃない」見た目金髪で長身の爽やかイケメンのおっとり青年。もう見た目『主人公』って感じだ。


 二人目「私はディア、弓士よ。武器はもちろん弓、回復魔法が得意だから回復は任せてね」茶髪でショートの中肉中背で年齢は微妙な年齢とだけ記しておく。『おばさん』と言ったら矢が飛んできそうだ。思ったとしても言わないけどね?


 三人目「俺はガウラ、重戦士だ。武器はバトルアックスで、魔法は使えん」背のちょっと低いどっしりした体形でいかにも戦士と言った感じの厳つい中年男性。一瞬ドワーフかと思ったのは内緒。


 四人目として「俺はリン、魔槍士です。武器は槍ですが、どちらかというと魔法の方が得意です。一応は全属性使えます」俺の姿を見て三人に子守かよってがっかりされちゃったよ……見た目子供だし仕方ないと自分で自分を慰めた。むなしい。


 それはいいとして、職業的なのは何か良く分からないから魔槍士とか適当に言ってみたが通用したようだった。あと、他のメンバーを見て魔法メインと言った方がバランスがいいだろうと思い、魔法の方が得意だと言っておいた。ま、闘気も使えないから実際魔法中心で戦う方が楽だしね。

 話し合いの結果、敬称不要で呼び捨てにし、やっぱりと言うかリーダーはライルに決まり、他のグループもリーダーを決め終わった所でダンジョンに入る順番を決めるクジをリーダーが引くことになった。


 クジの結果、ダンジョンに入る順番はC、B、Aとなった。


 ダンジョンに入る順番も決まったし、これからどうしようかと思っていたら追加説明があるからすぐに席に着けと言われた。

 明日いきなりCグループからダンジョンで試験と言う事は無く一日の備期間を設け、明後日から三日間の午前中を試験期間としてダンジョンが貸し切りとなり三日間の試験が終わるまではゴラウを出ることを禁止される。理由はチームでの連携などの実戦練習をすると後のグループが有利になりすぎるためと言う意味合いがあるらしかった。

 ただし、話し合う分には問題がなく、作戦を立てるなり相談するのにギルドの一室を使ってもいい。しかし、演習場での練習などは許可しない。例外として、翌日ダンジョンで試験のあるグループは演習場で3時間だけ練習してもいいということ。

 最後に、試験の際は防具は自前の物でいいが、武器と盾はギルドが用意したものの中から選んで使わないといけないと言われたので、スマホが無ければ魔法が使えないからやばいと思い、魔道具(スマホ)の事を簡単に説明し、使っていいか聞いてみたら構わないとの事で助かった。説明の後、実際にどんな武器を貸し出しているのか見せてもらい、それぞれ自分の得意とする武器を確かめた。


 翌日は朝から会議室に集まりフォーメーションなどの確認を行うことになった。


「それで、どうしようか? 普通に考えれば僕とガウラが前衛でディアとリンが後衛なんだけど」

「ふむ、まぁ当然だな。俺は、魔法とか使えねぇからどうせ前衛しかできんしな」

「それでいいんじゃない? あ、でもダンジョンって弓が使えるほど広いかな?」

「あー、俺も魔法はいいけどギルドで貸して貰える槍だと長くて振り回せないかも知れないから武器を短剣二本に変えようかと思ってる」

「私も弓の他に短剣を一本持っておこうかな?」


 フォーメーションは前衛にライルとガウラ、回復も使えるということで中衛にディア、後衛に俺というのを基本とし、戦法はというと、前衛は前面の敵に集中し、中衛が回復中心の弓での援護射撃、後衛は後方確認と魔法による援護攻撃を基本戦法とし、状況によってフォーメーションと戦法を変えていくということで話を詰めていった。

 ちょっとライルと話し合っていたらいつの間にかディアとガウラが口喧嘩を始めていた。


「ちょっとー! それって私が弱いってこと?」

「ふん! 本当のことを言ったまでだろ! いちいちうるせぇんだよ」

「二人ともやめろよ。仲間だろ?」

「「うるさい!こんなやつ仲間じゃない(ねぇ)」」


 ライルが何とかしようとしているが二人に同時に怒鳴られてしまった。なんかライルがこっちを見てきたような気がするが気のせいだ。


 ライルへの怒鳴り声がハモってるな……『息が合ってんじゃん』なんて言ったらこっちに矛先が来そうだから言わないでライルに任せておこうリーダーだしな! がんばれ我らがリーダー! 心の中で応援しているぞ。あれ? なんか救いを求めるような目をしてこっちを見てくるが気のせいだな。うん、絶対気のせいだ! もしくは幻覚ということにしておく。――――そうも言ってられないか、仕方ないな。


 いつまでもライルの視線を無視していたらライルが泣きそうになってきたので仕方なく間に割って入り何があったのか冷静に話せと仲介に入ることにした。ライル……リーダーなんだから何とかしろよな。


「二人とも大人なんですから一旦冷静になって落ち着きましょうよ」


 そして少し離れた所で一人ずつ何があったか話を聞くことにし、聞いてる間もう一人はライルに相手してもらうことにした。

 一人目の証言者ディア「あいつ(ガウラ)が私が女だからってばかにするのよ! それに私を三……もう! とにかく気にくわない―!」

 ん、ガウラは男尊女卑の人なのかな? 『三』? 三十さ……なんかディアが睨んでる。考えるのはよそう。


 二人目の証言者ガウラ「あのバカ女(ディア)が、ったく、これだから三十路過ぎのおば「すとーっぷ!」」

 あ、それ言っちゃダメなやつだと思いガウラを慌てて止めた。距離的に聞こえているはずがないのに何故がディアの視線が痛い、なんかもう目からビームでも出てるんじゃないかと思うほどに視線が痛い。

 血の雨は見たくない……っていうか、下手したらガウラだけではなく俺とライルもディアによって血の雨製造機にされかねない。こんなところで人生のエンディングロールなんて見る気はない!

 それにしても、得意武器だけ見るとドワーフとエルフみたいな二人だな。弓使いと斧使いは仲が悪いとかあるのかな?


 さて、関係ないけど三人目の証言者ライル「へ? なんで僕に話を聞くの?」

 何となく流れです、すんません。じゃなくて。


「あのさ、弓使う人と斧使う人は仲が悪いとかあります?」

「そんな話聞いたことないけど?」


 違ったらしい。ただ単に二人の相性が悪いのか……さて、どうしたものかな。


「どうしたらいいと思いますか? ライ……あ、リーダー」

「リンくん。その取って付けたようなリーダー呼びは止めようか?」


 ライルのこめかみ辺りがひくひくしていた。


「いっそこっちでも喧嘩しますか?」

「いやいや、そんなことしてたら試験受ける前に失格とか言われちゃいそうだからやめようね!」


 冗談のつもりで言ったんだが、わりと本気で怒られてしまったな。ここで反省猿のモノマネとかしたらさらに怒るかな? …………やめておこう。


 念のためもう一度それぞれから話を聞いた結果。ガウラの有罪が確定しました。

 決め手はガウラの『歳考えろよ。三十路超えてんだから攻撃は若いやつに任せておまえは回復に専念しとけ』でした。

 一見相手を思いやってる風に聞こえなくもないけど、相手はディア、微妙なお年頃の女性にその言葉、特に『三十路』はアウトだ。ギルティだ。有罪だ。情状酌量の余地なしだった。


「と、言うことで、満場一致でガウラ悪いとなりました」


 ガウラが何やら騒いでいたので理由は後で話すとこっそり耳打ちしておいた。面倒な話だ。

 とりあえず今日はここまでとし、明日の朝改めて話し合うということになり、俺はガウラと話をすることになったのだが……何故か酒場でね。


「――だから、ガウラさん。ディアさんくらいの歳の女性は特に年齢を気にするものです。ですから年齢を想起させるような言動は慎むのが漢と言うものですよ。とくに『三十路』、『おばさん』は禁句です!」

「そうなのか? いや、そうか……前にも似たような事で『がさつなやつ』とか言われたことが――」


 何か思い当たる節があるらしく語りだしたがなんか長くなりそうだったので適当に聞き流した。ちなみにガウラは酒を飲んで酔っている。


 なんか自分語りをしだしたぞ、酒飲みの長話とか勘弁して欲しいんだが、もう帰っていいかな? てか、ライルは何でここにいないんだ? って、ディアのフォローに回ってるんだっけな。あー、帰って寝たい。


「――って訳なんだよ。おい、聞いてんのかリン」

「あー、はいはい聞いてますよ~。そりゃもう馬の耳に念仏って勢いで聞いてますよ」

「はぁ? パイコーンに呪文を唱えるってどういう意味なんだ? わけわかんねぇやつだな~」


 パイコーンって確か馬の魔物だったな……そういう風に翻訳されるのか。他にもいろいろ言って反応を見るのも面白そうだ……止めよう話しが余計に長くなりそうだ。てか、酔っ払いに『わけわかんねやつ』とは言われたくない!

 ………………もう一人で試験受けたくなってきた。


 翌日はCチームが朝から試験のためダンジョンに向かい、俺たちBチームはと言うと、ガウラとディアは一応仲直りと言う形になって落ち着いたので午前中は前日に話し合って決めた事を再度確認し、昼食をはさんで演習場で実際に武器を使ってのフォーメーションや戦法の練習などをした。

 その後、部屋に戻るとCチームが地下5階層のボスと戦っている最中に時間切れとなり不合格になったことを知った。


「時間切れか……、魔物との戦闘のことしか考えてなかったけど、明日は僕らBチームの番で時間はあまりないけど、どのくらいの時間で1階層をクリアしていくかとかも考えた方がいいかもね」

「そ、そうね。慎重になり過ぎて時間切れになっちゃったら意味ないわね」

「そうだな。戦法とか少し見直すか?」

「そうですね。スピード重視のフォーメーションとかも考えた方がいいかもですね」


 そして、まずは演習場で行った練習の反省点などを話し合い、新しいフォーメーションや戦法をあれこれと考えて決めて明日の本番に備えるため早目に休むこととなった。

 余談ではあるがガウラはお酒禁止といってある。二日酔いで役に立たなかったとか洒落にならんしね。


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