第十八話 演習場
朝起きてすぐに身支度をしていたとき、そういえば昨夜はスマホのことばかりで自身のレベルを確認していなかったと思いだし確認してみるとレベルが3つ上がって8になっていたが、レベルが上がった以外には何も変わりがなかった。
その後、昨日と同じサンドイッチセットを食べ、ギルドへ行くことにした。
「すみません。リン・クスノキですが、レドラスさんに取り次ぎお願いします」
受付にそう言って頼んでいると、奥からライラがやってきた。
「あ、リンくん。ちょっと待っててね」
ライラに診療所で待ってると告げて、リアンナの様子を見に行くことにした。
診療所の病室にはデイジーもいたがリアンナの様子は昨日と変わらなかった。
「おはよう、デイジーさん」
「おはよう、リン。私のことは呼び捨てで構わないよ? それで、これからどうするの?」
もうすぐライラが呼びに来るだろうからとりあえず、レベルに関して何レベルでどのくらいの強さなのかということを聞くと。
「う~ん、そうね……レベルに関しては――――」
レベル 1~ 5一般市民
レベル 1~ 8ウッド・ストーン
レベル 8~15アイアン・ブロンズ
レベル15~25シルバー
レベル25~35ゴールド
レベル35~45プラチナ
レベル45~55ミスリル
レベル55~75アダマンタイト
レベル80以上になると人とは呼べない。
レベル99が限界と言われているがレベル70までしか到達した者がいないから不明
「――――あくまでも目安だけど、こんな感じかな?」
デイジーのギルドカードも見せてもらった。
【 名 前 】 デイジー・ラギレア
【 種 族 】 人間族
【 性 別 】 女
【 年 齢 】 18
【 ランク 】 ブロンズ
【 レベル 】 10
【 能 力 】 槍術・短剣術・魔力感知
【 魔 法 】 風魔法
【パーティー】 リトルウィング
【 備 考 】 無
あれ、1歳年下だったのか……あ、今の俺は15歳だから3歳年上になるのか、なんかややこしいな。てか、ラギレアって苗字かな?
「デイジーって、ラギレアって言うんだね」
「そういえば言ってなかったね。でもね、貴族の人たちならいざ知らず、普通は家名なんて他人に一々言わないんだよ?」
「へ~、この世界ではそれが普通なのか~、じゃ俺も名前聞かれたら今度からは『リン』とだけ言えばいいんだな」
デイジーと話しているとドアをノックする音が聞こえたので、ライラが呼びにきたのかと思いドアを開けると、そこにはレドラスがいた。
「あ、え、レドラスさん? ……あ、すみません。おはようございます。でもなんで?」
「おはよう。いやな、魔法やらの実験をするんじゃろ? それならギルド内の演習場を貸してもよい。ただし、ちょっとおまえさんの力を見せてもらいたいと思っての~」
他言無用ならと言うことで、演習場に移動し魔法をだけを見せることにしたのだが、デイジーはいて当然として、何故かライラもその場にいた。
ちなみに演習場は、屋外ではなく学校の体育館の半分くらいの大きさの室内空間だった。
ん? なんでライラまでいるんだろ? ま、ライラなら無暗に他言するようなことはないだろうけど。
とりあえず『魔法アプリ』で『ストーンショット』を使って的を撃ちぬいて見せた。もちろんシューティンググラスのポインターで狙ってね。
「ほう、全ての的の中心に必中とは中々やるのう。しかし、その程度でゴブリンの集落を落としたとは思えんのう……しかも、あのゴブリンロード相手となると、その程度の魔法ではきついはずじゃが?」
ですよねー、納得してくれませんよねー、さすがギルマスさん……やっぱり、具現化の方も使って見せないと納得しないよな。
「ここって、ファイヤーボールの爆発の音でも防げるほどの防音できてますか? あと、絶対に他言しないでくださいね! 絶対ですよ! フリじゃないですからね!」
「フリというのが何かは分からんが、防音は完璧じゃし、ギルドマスターの名誉にかけて他言はせんよ。もし二人が他言するようなら儂が粛清することを約束する。ま、こやつらは他言なんぞしそうもないがの」
レドラスの言葉に二人はうんうんと頷いて他言はしない誓ってくれたので具現化アプリで、おなじみのハンドガン『CZ75B』を出して的を次々に撃ち抜いていったが、サプレッサーを付けるのを忘れていたので結構な銃声が響き渡ってしまった。
「すごい音じゃの。それに、魔法防御結界が作動せんかったところを見ると、それは魔法ではないのか?」
「この武器自体は魔法みたいなものなんですけど、攻撃事態は多分物理攻撃扱いだと思います」
そういえば、具現化って具現化したものが魔力でできたものって以外あまりよく分かって無かったな。でも銃なんだし、攻撃は物理系だろうと思うんだよね。
さすがに演習場では手榴弾やスタングレネード、ましてや密室空間で催涙手榴弾は使えなかったので、サブマシンガンだけ撃って終わらせ、ついでにデイジーに槍の技や魔法を見せてもらったが、デイジーはまだ闘気を扱えなかったので槍の技というより型を見せてもらった感じで、魔法の方は正直言ってあんまり威力はなかったのだが、レドラスが言うにはブロンズランクに上がったばっかりの冒険者なら、このくらいが普通だということだった。それでもスマホを使わない場合の俺よりは、格段に強そうではあったけどね。
う~ん、女の人が相手と言うのは気が引けるんだけど、ちょっと体術の相手をしてもらおうかな?
デイジーに軽く素手での組み手をしてもらうことにしたのだが、本気でこられると俺が大怪我しそうだったので、あくまでも軽くと念を押しておいた。結果は――。
女に一方的にボコられまくる男という情けない構図となってしまった。というか、デイジーは本当に軽くやってるみたいなんだけど、それに対して俺は途中からは本気でいったのに手も足も出なかったよ。
俺はこの世界ではここまで弱いのか……いや、元の世界で言えば俺は戦うことに関しては素人の一般人で、デイジーはプロ格闘家ということになり、普通にいけば勝てるわけない! うん、そう考えれば精神的ダメージが少なくなるな。
「リン……お主、弱すぎんか?」
おいジジィ! 確かにそうだけど、少しはオブラートに包めよな! 泣くぞ。
レドラスの精神攻撃で大ダメージを受けてしまい落ち込んでいた。
「そんなんでどうやってゴブリン共の攻撃を防いだんじゃ?」
「いえ、ゴブリンナイトくらいまでの個体は基本的に相手の攻撃範囲外からの遠距離攻撃一発でしとめてましたから攻撃を受けませんでしたよ。ま~、ゴブリンロードには一撃貰っちゃいましたけど、これといった怪我はなかったですよ?」
「「「……………………」」」
なんか静かになっていたので周りを見てみると、その場にいた三人ともが口を開けて呆然と立ちつくしていた。
「ゴブリンナイトを一発でしとめたじゃと! しかもゴブリンロードの攻撃を受けて怪我がないとはどういうことじゃ?」
「そ、そうよ。さっきあんなに私にボッコボコにされたくせにー!」
「え、あ、その、リンさん。どういうことでしょう?」
え、ゴブリンナイトって一発で倒せるような魔物じゃないの? てか、デイジー……それはひどくね? 事実だけどさ。ライラはパニクってるね。てか、そういえば攻撃を受けたときには確かに俺も死を覚悟したんだよな……多分シューティンググラスの防御のおかげだとは思うんだけど……ちょっと試してみるか。
デイジーに『くれぐれも軽くだぞ』と念を押し、試しに槍で頭叩いて貰うと、頭に当たる瞬間に音もなく槍が弾かれた。
「え、なにこれ? よく分かんないけど何かに弾かれたよ!」
「魔法や闘気での防御とは……ちと違うように見えたんじゃが……」
スマホを見ると魔力が減っていたので、やはりシューティンググラスの防御で魔力が減るようだった。
「えーと、俺は闘気を使えません。これはこの眼鏡の能力なんですけど、そもそも俺自身には魔力がないんですよね」
シューティンググラスをスモークグラスにしたり透明にしたりして見せて不思議な魔道具だといい、俺が魔力を持たないことを告げると、誰も信じてはくれず、レドラスには魔力がないのになんで生きてるとか言われてしまったのでどういうことかと尋ねると、この世で魔力を持たない生き物は存在しないのだと言われた。
その後、ライラに鑑定させてよいかと聞いてきたので了承し、ライラが俺を鑑定することとなった。
あれ? 鑑定で魔力があるかどうかまで分かるのか? スマホの『鑑定』じゃそこまで分からなかったんだけどな~。
鑑定しているライラを不思議に見ているとレドラスがそれを察し、なにやらライラと話し終えて『他言せんのならどういう事か教える』というのでデイジーと一緒に他言しないことを誓い教えてもらうことにした。
ライラの鑑定と言っていたのは実は『鑑定』ではなく上位能力の『解析』という能力で、『鑑定』より多く情報が得られるらしく、この能力があることもあってこのギルドに来たということでだった。
詳しく聞いてみると、ここのギルドの上位の『鑑定』持ち職員が病気で長期で休養することになり、その職員と同等以上の『鑑定』持ちということで、代わりに来たのがライラだったということらしい。
そういう理由だったのか。てか、能力に上下や上位版みたいなのまであるんだな。
「すごく読みにくかったのですが何とか鑑定できました」
解析結果を教えて貰うと、体力102で人並み、魔力は0ですらなく無表示で、他に体重67kg、身長173cmということまでが分かり、上位の『解析』の能力持ちだとステータスの様なものまで分かるということらしかった。
あれ? 19の時の身長の体重だな。どうりで身体に違和感を感じ無かったわけだ。しかも、いまさらだけど単位が元の世界と同じなのはそういう風に翻訳されて聞こえてるのかな?
「表示すらされんとはな……ん、魔力なしということは、もしや……気になることがあるで、リンとデイジーで軽く模擬戦をしてくれんか?」
デイジーは練習用の木の槍の先に安全のため布を巻いたものを構え、俺はさすがに銃系は使えないなと思ってサバゲーでよく使ってたガスガンの具現化を試し成功したのでそれを使い模擬戦をすることになった。結果は10m先からの射撃で一方的に勝てたんだけど、レドラスにせめて5mまで射撃禁止とされ2回戦目をすることになり、今度はそう簡単に勝つことができなかったが、デイジーの後ろに何とか回り込むと隙ができたのでそこを撃って勝つことができた。
「デイジー、どうじゃった?」
「はい、いきなり消えた感じでしたよ」
どういうことかとデイジーに聞くと、レドラスが俺に魔力が無いからデイジーの視界から俺が消えた時に魔力感知で探すことができず見失ったのだろうと言ってきた。
「リン、お主はある意味隠匿能力を持っているようなものかもしれんぞ」
どういうことかと聞くと、魔力が無いのなら姿さえさらさなければさっきの様に魔力感知に頼る相手なら気づかれにくい。さらに魔物は魔力に敏感だから魔力がなければ魔物があまり寄ってこない可能性があるとのことだった。
あ~そう言えば、ゴブリンの集落に行くまでと、そこから町に帰るまでで魔物の出方が違ってたな。
「そろそろ昼じゃの。どうせじゃからみんなでギルドの食堂に食べに行くかの」
レドラスの後について食堂に向かった。
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