第十六話 ギルドへ報告

 ゴブリンの集落からホラブの町への道中は、リアンナの状態を考えて速度より安全性を重視し進んだが、それでも日が沈むまでには戻れそうだった。

 道中はで、ボア、アルミラージ、スライム、ビッグディアーという大きい鹿の魔物と戦闘になり、スマホは使わないと戦えないから仕方ないとして、『具現化アプリ』などは変に目立ちそうだったので極力使わないように決めて、シューティンググラスの『警戒』と『索敵』で魔物の位置を把握し、『望遠』で確認、魔物の頭に『ターゲット』でロックマーカーを設置、ロックマーカーにポインターを重ねて魔法アプリで『ストーンショット』を発動してヘッドショットするのを基本の戦い方とし、50m範囲に近づいてきた魔物は全て一発で仕留めていった。ちなみにしとめた魔物は勿体ないから『倉庫アプリ』に入れたんだけど、何故か来た時よりも魔物との遭遇率が高いように感じた。


 『具現化アプリ』の銃器なしじゃきついかとも思ってたけど、シューティンググラスのおかげで魔物を見つけやすいし、急所狙うのも簡単だから『魔法アプリ』だけでも結構いけるな。


「す、すごいね。魔物を一発で倒しちゃう魔法もそうだけど、君のアイテムボックスはいったいどれだけ入るの? そんな大量に入るアイテムボックス持ってる人は初めて見たよ!」


 あー、普通はそんなに入る物じゃないのか。てか、俺のはアイテムボックスじゃなくてスマホの『倉庫アプリ』なんだけどね~。人前ではあまり大量に出し入れしない方がいいのかもしれないな。


 とにかくそんな感じで魔物との戦闘を続け、何とか森の入り口まで出ることができた。

 ちなみに、あれだけ薬草とったはずなのに森の入り口になんか草が多いなと思って見てみると、朝刈り取ったはずの場所の薬草がもう生えていた。


 おいおい、この薬草はどんだけ成長早いんだよ!


 森の入り口までくると魔物と出会うこともなくなったので、ここでなら少しくらい休憩できるかと思い。


「お二人とも大丈夫ですか? ここまでくればそんなに魔物もいないようですし、町の閉門時間まで余裕も

ありそうなので何ならここで少し休憩していきますか?」

「いえ、大丈夫です。先を急ぎましょう」


 デイジーがそう言うので休憩をせずに進むことにし、そこから町までの道中はデイジーに変わってリアンナを背負って運んだこともあり、思っていたよりも早く町の門までたどり着くことができた。

「あ、そうだ。ギルドカードとプレート返しておきますね」

「え、あ、はい、拾っておいてくれたんだね。ありがと」


 ギルドカードなんて身分を証明する貴重な物なんだし、なんでアイテムボックスにしまっておかないのか気になって聞いてみたら、この世界の全員がアイテムボックスを持ってるわけではなく、持っているのはその下位版のアイテムバックで、一応は初めにギルドからなくしたりしないようにちゃんとアイテムバッグに入れておくように指導を受けるのだが、数日かかる様な旅ならしまっておくのだが、その日のうちに町に戻る程度だと一々しまうのも面倒なのでポケットに入れておくのが冒険者の間では常識だということだった。


「あ、そうだ。街に行く事しか考えてなかったんですけど、デイジーさんたちを、特にリアンナさんをどこに連れて行けばいいんですか?」

「えっと、冒険者ギルドに行けば診察や治療をして貰えるはずなので、そちらに行きます。それに……ゴブリンの集落の事も報告しておかなくちゃ」

「分かりました。」


 ホラブの町門にたどり着き、衛兵にそれぞれのギルドカードを提示した時にリアンナの様子がおかしいのを怪しまれはしたが、本当のこと『ゴブリンに~』なんて言えば何かあったかは察せられてしまうだろうからモンスターに襲われたてこうなったということにしておいて納得してもらい、なんとか無事に門を潜ることができたので、すぐに冒険者ギルドへ向かった。

 冒険者ギルドに入ると、中はそれほど混んではいなく受付も空いていたので、すぐに受付に行き、とりあえずゴブリンの集落を見つけて排除したということを告げ、ギルドマスターのレドラスに取り次いでもらいたいと言ったのだが『個人がギルマスに会うのは難しく申し訳ありません』と断られ、どうしたものかと悩んでいたとき、バルデス商会のコインがあったことを思い出し、再度頼んでみると『このコインは……ああ、あなたが』と言って、レドラスに確認を取ってきてくれることになった。


 コインのことは何か聞いてたようだけど……これで会ってくれないとか言われたらどうしようかな……。


 そう思い不安になって待っていると、何故かライラがやってきてレドラスの部屋に案内してくれた。


「たしか……リンと言ったかの? ゴブリンの集落をせん滅したと聞いたのじゃが?」

「はい、その通りなのですが……ちょっと問題がありまして、まずは彼女、リアンナの診察と治療を頼みたいのですが」

「分かった。ライラ、その娘を診療所へ連れて行って差し上げなさい」


 ライラはリアンナを連れてギルド内の診療所へ連れて行った。そして俺とデイジーは森の奥、ゴブリンの集落で何があったのかをレドラスに説明した。


「――ということがあったんです。それで、デイジーさんたちの話はあまり公には……」

「分かっておる。そちらのデイジーたち、たしか『リトルウィング』じゃったか? たまたま魔物の群れに会ってしまったということにしておこう」


 ゴブリンにいいようにされたなんて世間に広まったらデイジーとリアンナは人生終わりだろうからな。そうしてもらえてよかったよ。それにしても、話の分かるギルマスでよかったな。


 その後デイジーはリアンナの様子を見に行くと退出し、レドラスとの話の中で俺がゴブリンをアイテムボックス(倉庫アプリ)に大量に入れてるというと解体倉庫の方で出してくれといわれ部屋から移動し念のためカギが閉められた。

 解体倉庫は一教室分くらいの広さの場所で、中にいるのは俺とレドラス、それと解体班の班長ガラボフが確認のために同行していた。ゴブリンをどんどんと出していった結果、ゴブリンロードx1、ゴブリンナイトx5、ゴブリンメイジx3、ゴブリン戦士x27、通常のゴブリンがx86だった。ちなみに全部オス。


「100超えの集落とはな。ほっといたらキングが生まれて大変なことになってたかも知れんわい。して、これは全てギルドで買取でよいのかの? とはいえゴブリンじゃからのう……」


 レドラスの言葉に、はいと言いかけて、装備だけはリトルウィングの人たちの装備だったかもしれないので、後でデイジーに確認してもらいい、もしそうであったらデイジーに渡したいと言うと、所有権は俺にあるんだから好きにしていいけど、普通はただで返すようなことはしないし、自分の物ですと嘘をつかれることもあるのに、変わり者だなと言われてしまった。

 ゴブリンについては、ゴブリンからは小さな劣化魔石、ゴブリンナイトとゴブリンメイジからは小さい魔石、ゴブリンロードからはそれなりの魔石が取れるだろうという事で、肉は使い道はなく他に素材にできる様なものもないので、魔石を取れば後は処分するしかなく、処分するのに費用がかかるという事だったので、魔石の買い取り代金から引いて貰う事にし、ついでにゴブリン討伐の依頼があった時のために討伐証明部位だけは貰っておきたいと言っておいた。

 そう言えばとついでに、ミーリ草x112、ヨムガル草x89を出してウッドランクの依頼を終わらせてストーンの依頼でゴブリンの討伐部位で報告できないのか聞くと、今日の分の薬草採集の依頼が合わせて15しか残って無くて、ストーンランクに上がるには5つ足りなく、さらに例えストーンランクに上がってもゴブリンはアイアンランクの依頼対象だと言われた。


 ……ゴブリンって一番下かその次の依頼に出る程度の強さじゃないの? 正直言ってロード以外は一発で倒せてたんだけど……この世界では強い設定? そう言えば他にも倉庫アプリに魔物入ってたんだっけ。


 まだ魔物持ってましたというと二人にどれだけ容量のあるアイテムボックスを持ってるんだと驚かれたが、気にせず魔物を出した。出した魔物及び討伐証明部位は、スライムの核x8、アルミラージx6、ボアx6、ビッグディア―x2を出した。レドラスはそれを見てどうせならと、ギルドマスター権限で俺のランクをアイアンランクまで上げてくれたので、ゴブリンの受注と報告でブロンズランクになる事が可能になった。魔物に素材などは全て買取してもらうことにした。


「まさかこの間の坊やが、こんな短期間にブロンズに上がるとはのう」

「いや、レドラスさんのおかげでストーンランクにして貰えたからなれたんですし、アイアンランクになるのにも魔物の数が足りなかったはずですよ?」

「何を言っておるか。ゴブリンロードを倒すアイアンなど聞いた事も無いわい、本来ならシルバーランクでもおかしくないくらいじゃぞ。しかも、話を聞く限りではそのゴブリンロードは普通じゃないかも知れんぞ」


 レドラスとそんな会話しているとノックも無く扉が開き、ライラが部屋に入ってきた。レドラスがそれを咎めようとしたが、ライラはかまわずに口を開いた。


「デイジーさんが……デイジーさんが自分たちは奴隷になるって言ってまして」


 どういうことかと聞いてみると、デイジーは自分たちを奴隷商に身売りし、その代金を俺に渡すと言ってるそうだった。


「え? なにそれ? どういう事?」


 本来は捕らえられた者の関係者などからギルドに救出依頼を申請し、ギルドはその依頼を吟味してどのクラスにするかを決め、緊急性を要する場合には緊急依頼としてシルバー以上の冒険者を集め依頼を受けて貰い、費用は依頼を出した関係者が全額払うのが当たり前で、今回の場合は助けられたデイジーたちが相応の金額を俺に支払うのが筋という事だった。

 俺が拒否しても問題はないのか聞くと、当事者同士で話し合って決める分には問題はないとの事だったので、とりあえずデイジーの所にいって話し合ってきたいと言うとレドラスが。


「分かった。それでは今日はここまでとし、依頼報酬やギルドカードとプレートのブロンズランクへの変更などは明日と言うことにしておこう。儂も明日はギルドにおるので、おまえさんの名前を受付に言って儂を呼ぶようにの」

「ありがとうございます。それでは失礼します。」


 奴隷になるのを止め、話し合いをするためデイジーのところへ向かった。


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