24話 盗み聞く方法

「大福君、こっちです」

 東村は、大福ねずみを頭に乗せたまま、新居に駆け込みました。そして、重そうな金属で出来た丸い鏡のような物を出して、座敷に備え付けました。

「これは、別の空間を移す鏡、デパガメッシュ1号です」

高性能なアイテムと術者は、そこはかとなく懐かしエロい感じのネーミングセンスのせいで、台無しでした。しかも、明らかに冒涜的です。

「レッツ デパガメッシュ!」

大福ねずみは、気に入りました。


 東村が何やら唱えたり手を動かしたりすると、鏡に姉御とインテリもやしが映りました。

「わ~ぉ、すげ~。音も聞こえるの?」

「いいえ、音声は別回線です。そこから声が出ます」

東村が指さした方を見ると、黒白ブチの猫が座っていました。

「おぶっ! てめぇ~東村。オイラがネズミだと知っていて、猫を連れ込みやがったのか~」

 

 『まぁ、茶でも』


 怒り恐れる大福ねずみをよそに、猫がしゃべりました。猫の口から出て来た声は、姉御のものでした。

「この猫は大丈夫ですよ、私の家来です。大福君を食べたりしません」

「もう、それはどうでもいいや。お前の頭の上で安全を確保する。それより、鏡に映ってる場所の音が、猫の口から出てくるってこと? どういうシステム~?」

 少し太り気味の黒主体の白ブチ猫が、大きな目をクリクリさせながら、インテリもやしの不貞腐れたような返事を再生しています。


「そうです。音声はこの猫、ブチ黒の口から出ます。ちなみに姉御さんの部屋では、ブチ黒の弟のブチ白が盗み聞きをしています。画面角度などの微調整もしてくれますよ」

 鏡の画面が切り替わり、ベランダのサッシから姉御部屋に顔を覗かせる猫が映りました。

思いっきり、頭を突っ込んでいます。

「ブチ白です」

画面の中で、ブチ白が軽く前足を挙げました。ブチ白は、白主体の黒ブチ猫で、ほっそりと活発な印象です。

「あ、そう。どうでもいいけど、名前、黒と白でよくね?」

大福ねずみは、猫の名前のくだりが面倒になってきました。

「大丈夫ですよ、彼らはスーパーキャットです。私が、ブチのブを発した時点で、黒と白、どちらが呼ばれているか解るのです」

「じゃあ、やってみろよ~」

「いいですよ。ブ……」


 二匹とも、東村の方を向きました。

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