女子会プラスあるふぁ
「じゃないっ! てゆうか柚恵、今まで間となに話してたのっ!?」
「ん~? べっつにぃ?」
「黙秘権!?」
弥生がボソリ、と呟いた。
「難しい言葉知ってるわね」
「てゆうか弥生は気になんないのっ?」
「べっつにー?」
「意気投合っ!?」
わーぎゃー騒ぐ舞奈に、諌める柚恵という二人のやり取りを確認し、弥生は奥の押し入れから自分の分の布団を取り出した。いそいそと、部屋の隅を陣取る。そしてをふたりの漫才を眺めながら、のそのそと浴衣を脱いで代わりにバッグからタンクトップとホットパンツを取り出し、着た。あーやっぱこっちが楽。
「それで! ……って、アッー弥生着替えてるー!」「まいにゃあ、それ、発音マズイよぉ?」「?」
忙しないふたりを横目に、弥生はすっかり余裕の表情だった。さらにバッグを漁って、グレープフルーツを取り出し、ガシュっと齧る。シャワー上がりの柑橘は、サイコーだった。それでなんとなく、襖のほうを向いた。
「あり?」
開けっ放しだったそこに、もう間六彦が立っていた。せいぜい2,3分程度での、帰還。
「どーしたのー?」
「いや……なぜ風呂桶の中で、南国の植物が育てられているのだ?」
「? ふつーじゃん?」
「普通……なのか?」
「うん、なんか変?」
「いや……わかった」
間六彦の疑問はよくわからなかったが、とりあえず納得したのか再度風呂へ向かい、十分後にシャワーを終えて戻ってきた。それに伴い舞奈と柚恵のふたりもやり取りを一旦止めて、ちんすこうやサーターアンダギーに、ポッキーアルフォートポテチにチーザに飲み物も五種類ぐらい揃えての、女子会プラスあるふぁの開始だった。ちなみに命名柚恵。
『じゃあ、かんぱーい!』
ジュースに乾杯もないんじゃないかと思いつつ間六彦が一番無難そうなシークワーサージュースに口をつけていると、柚恵がぴったり隣に寄り添ってきた。
びくっ、とした。ゆったりとした服のせいで、上から柚恵その豊かな胸が、胸元が、谷間が――
「ねぇねぇ、ろっくん?」
「な、なんだ石柿崎――」
「柚恵となに話してたの?」
舞奈がそこに、インターセプトを掛けてくる。次々きて、面倒なことこの上ない。
「…………」
それに間六彦は、黙秘権を行使。柚恵はそれにニコニコ笑い、弥生はボリボリちんすこう食べてて、そして舞奈は不満顔。
「……話せないようなこと?」
「お前は言い回しが本当に直接的だな」
「じゃなんなのよー」
「野暮なことを聞くな、詮索は身を滅ぼすぞ」
「洗濯?」
「お前の語彙は本当に偏っているな」
煮詰まってきた会話に、柚恵が再び擦り寄る。
「それはそれとしてぇ、ろっく――」
「六彦ー、さとうきび畑はどうだったー?」
今度は弥生が、言葉尻をひったくる。さすがに柚恵はいじけたように頬を膨らませていたが、六彦はとりあえずと弥生の質問に答える。あとが面倒そうだし。
「あぁ、素晴らしいものだったな。悠久の大自然の神秘とでもいうか。あれほどの光景、東京で見ることは叶わないからな」
「わたしは、どうだったー?」
ビックリする言葉に弥生を見ると、いつの間にか弥生も真っ直ぐこちらに視線を送っており、それはバチッ、とぶつかることになった。なんとも詰問を受けているような息苦しさに、間六彦はどうしたものかと柚恵に視線を向けた。
柚恵はウインクで、応えた。
途端、ふたりが、身を乗り出してきた。
「うえー、なにそれ柚恵いまのなにになんの合図? まさかウインクは愛してるのサインですかー!?」「なにそれ、ホントにこのバカ舞奈の言うとおり……?」「その言い方酷くないっ!?」「あやしー、怪しー、妖しーよ、柚恵……」「無視っ? っていうか弥生、怖ッ!?」
「…………?」
なんだかふたりとも、様子がおかしかった。確かにいつも通りなノリといえばそうだが、にしても舞奈はいつも以上にしつこいし、弥生は異常に毒舌だった。これじゃあまるで――
そこで畳に直置きされたそのボトルに、目がいった。
「な、なぁ石柿崎?」
「なぁにぃ?」
「な、なぜに二の腕を撫でる……この二人が飲んでいる、コレは?」
「おりおんビアー」
「……それはこの前のルートビアと同じで、ノンアルコールなのか?」
「んーん」
「うぉいっ!」
さすがの間六彦も、ツッコミを入れた。ずいぶん種類があると思ったら、そういうことかよ?
『――――』
と、そこで妙な気配を感じ取り、振り返ると――ふたりとも、眼前だった。
ていうか目、据わっていた。
「お、おいおい二人とも……」
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