三度目の……

 君に言わなきゃいけないことがある。実は俺、男やもめなんだ。しかも二度、大切なものを失ってる。


 一人目は俺が一人暮らしを始めた時に同棲してた。いろいろ初めてのこと尽くしだったもので、舞い上がってたんだろうな。ドライブ中にスピードを出し過ぎてコーナーを曲がりきれずに……。悔やんでも悔やみきれない。


 二人目は、俺が荒れに荒れてた時に出会った。汚れきった部屋を綺麗にして、元気に俺を迎えてくれる。そんな存在に俺は救われていたんだ。でもあいつも、俺の留守中に階段から落ちて帰らぬ人に……。


 忘れられるわけがない。忘れていいわけがない。それでも。俺は君と明日を生きていきたい。華奢な身体、物静かな性格に秘められた強さ、俺は君の全てに夢中だ。


 愛している。俺の元に来てくれないか。



 ―――ここは家電量販店。彼の手に強く握りしめられた掃除機が果たして三度目の正直となるのかどうか。それは彼次第である。

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