えぴそ~ど57 「熱戦・烈戦・超激戦っ!! ―VS暗黒纏いのサキュリヴァイス―(4)」


 来ちゃったわよ、次のエピソード。

 

 魔法が効かなければ、武器による攻撃しかない。

 でもその武器も、パコが持っていた『性交シリーズ』が全部壊れちゃって今はなし。

 ほ、本当にどうするのよっ。

 武器も魔法もだめなのに一体どうすれば……どうすれば…………。


 ――はっ!

 あるじゃない、!!


 天啓のように舞い降りたそれは、ある意味必然。

 でもこれを実行するには、サキュリヴァイスに大きな隙がなければならない。

 

 そのサキュリヴァイスは、膝をつくパコから二メートルのところに立っている。

 背中をこちらに見せてはいるけれど、今の段階で近づけば気づかれる可能性は非常に高い。


 もう少し大きな隙があれば……。

 いや、待ってなんかいられないっ!

 すぐにでもあいつはパコを殺すかもしれないのよ――ッ!!


「ふん、どうやら観念したようだね。最後だしあたいの最高の技でほうむってやるよ」


「く……っ」


 悔しそうに歯ぎしりするパコ。

 次にサキュリヴァイスが両手を広げて、話を続ける。


「あたいの思念が『暗黒回廊』地下十層まで辿り着いたとき、魔皇帝ルシファーとの血の契約が成立する。そうなればお前は、あたいが使役するルシファーの闇の業火に魂まで焼き尽くされるだろう、くく」


「く……っ」


 広げた両手を交差したのち、その上で二つの剣をクロスするサキュリヴァイス。

 すると、腰をかがめて事を始めだした。


「まずは『暗黒回廊』地下一層だ。はあああああ……」


「……」


「あああああ……」


「……」


「あああああ……」


「……」


「あああああ……」


「……」


「あああああ……。ふう、次は地下二層だ。ぬはああああああ……」


 その長さで十層っ!?

 パコ殺すまで七、八分は掛かりそうじゃないっ!

 しかもめっちゃ――、


「隙ありッ! たああああああああああっ!!」


 私は全力疾走でサキュリヴァイスの背後へと迫る。

 そのサキュリヴァイスは思念云々に没入していて、こちらには全く注意を払う様子がない。


 でも私がマントを後ろから掴んだとき、ようやくもう一人敵がいることに気づいた。

 しかし時すでに遅し。

 私はサキュリヴァイスごと、掴んだマントをブンブンと振り回した。

 そして――、


「あわわわわっ! お、おい、何をするッ!? 必殺技の構え中は攻撃しないっていう暗黙の了解を知らないのかっ!?」


「んなもん――知るかああああああああっ!!」


 ハンマー投げの要領でサキュリヴァイスを放り投げた。

 私はちぎれたマントを投げ捨てると、地面に落下したサキュリヴァイスを追いかける。


 向きはうつ伏せ。

 邪魔なマントもなくなった。

 ――つまり、


 あとは私がちゃんとできるかどうかっ。

 ……できる、できるっ。

 キモオタに巴投げを性交――いや、成功させた私なら絶対にできるッ!!


「く、くそ、あの金髪ブスめ……」


 うつ伏せ状態から立ち上がろうとしているサキュリバイス。


「ブスブスうっさいわねっ、このやろッ!」

 

 そうはさせまいと、私は足を引っ張る。

 そして再びうつ伏せとなったサキュリヴァイスの足を取り、自分の足を巻き込むように挟んだ。


 よしっ、最初の難関を突破したわっ!

 あとはもう簡単――っ。


「あ、足がっ、……な、何をしようとしているんだ、お前っ!?」


「何がってそりゃ――」

 

 私は引き攣ったような横顔を見せるサキュリヴァイスの両手をつかむ。

 そしてそのまま後方に倒れ込んで、褐色の小柄な体を吊り上げた。


「これに決まってるじゃないっ! ――『!!」


「ぐっはあああああああああああっ!!」


 やったっ、できたっ!

 完璧に決まったわッ!!

 二度も凡介に食らった甲斐があったってもんよっ。


 ……でもまだ終わりじゃない。

 ロゼリアお仕置きバージョンには続きがあるのよ――ッ


「パコっ、あんたいつまで歯ぎしりしてんのよっ! あんたにもやってもらうことがあるわっ!」


「え? 暗黙の了解でおどなしく必殺技を待っているだけんども、動いてもいいだすか?」


 真面目かっ!!


「動けっ、アクティブにっ!! さあ、すぐに立ち上がってレアなこいつのケツの穴に必殺の七年殺し――!!」

 

 刹那、サキュリヴァイスの喉から、ひっと息を飲むような音が聞こえた。

 

 サキュリヴァイスは股を全開までおっぴろげていて、そのケツの穴は『Hey come on!へいっ かもおおおおん!』状態。

 最奥までずっぽりカンチョーされる自分を想像して、恐怖から思わず出てしまったのだろう。

 

「や、やめろ……それは、やめろっ。そ、そうだ、お前知りたかったよな? 兄貴の居場所を。それを教えてやる。だ、だからやめろッ!」


「兄貴ってなんだすか? さあ、カンチョーいくだすよっ」


 いないのかいっ!!


「来るのよ、パコッ! 思いっきりカンチョーをケツの穴にぶち込んでやりなさいっ!!」


「やめろおおおおおおおおっ!!」


「動くんじゃねぇだすよおおおおお、とりゃああああああああっ!!」


 パコが突撃してくる。

 手にはなぜか、逆さに持った折れた性交の剣。

 長さ二十センチはあるつかをサキュリバイスのケツの穴に挿入するらしい。


 いつの間にっ!?

 でもナイスアイデアッ!!


「いけえええええええっ!!」


「待てえええええええっ!!」


「ぬあああああっ、たぁらふく食らえぃっ! 性孔せいこう打突剣、亜鳴あなる零式ッ!!」




 ズンッ!!!!!




「がっ!!!? ……あ、ああ、イ、あイ……あ…………」


 稲妻のエフェクトがサキュリヴァイスの股に落ちる。

 同時に発生した轟音が徐々に消えていったとき、痙攣していたサキュリヴァイスの体から生気が消えた。


 私はサキュリヴァイスを横へ放り投げると、立ち上がる。


「パコ」


「女神様」


 私とパコはタッチを交わす。

 それは四つのエピソードをまたぐという、壮絶な戦いの終焉しゅうえんを告げるものだった。


 本当に危なかったわ。

 でもなんとか倒せてよかった。

 ――はっ! そ、そうだ、凡介はっ、凡介はどうなったのかしらっ!?


 生死を賭けた激闘を終えた瞬間、脳裏に浮かぶのは凡介だった。


 凡介の相手はゲキシードとかいう四魔将軍の長。

 おそらくほかの四魔将軍をはるかに凌ぐ実力の持ち主。

 いかに『聖剣えくすカリばー』を手にした勇者凡介でも、戦い、そして殺しというものに慣れているゲキシードが相手では歯が立たないかもしれない。


 最悪は――


 心臓が締め付けられて、不安が膨れ上がる。

 それは、フローディアとアラモードを心配したときは比べ物にならないほどの大きさだった。


 私は拡散する戦闘意欲を再びかき集める。

 もちろん愛しい凡介に加勢するためだった。


 凡介、今行くからねっ。

 私の平凡をずっと守るって約束したんだ。

 だから、あなたは絶対に死んじゃダメなんだからね――っ。


 例えどれだけ多くのエピソードを使おうとも、二人で必ずゲキシードを倒すのよッ!!


 私は凡介の闘気を感じて、そちらに目を向けた。



 ◆



「これで終わりだ。食らえ――平兵家に伝わる究極奥義『モンゴリアンチョップ』」


「がっはああああああああああああッ!! やられたああああああああッ!!」



 二行で終わったああああああああっ!!

 しかも技がめっちゃ地味いいいいいいいいっ!!

 ついでに、『聖剣えくすカリばー』どこいったあああああああああっ!!

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