第89話 奥名先輩の独白(モノローグ) その6
ちょうどそんな時だったでしょうか。私の兄の昔の彼女だった
で、その方が兄にお願いしたらしいんです。「新婚生活用の服を選んでほしい」って。兄はその方と別れた後もお友達として交流はあったみたいなんですよね。ちなみに兄はその間に彼女を2、3人替えてます。
そしてその服選びが私に丸投げされたんです。女性の服のことなら私のほうがよくわかるだろうって。はっきり言って「はあ?」ですよ。でも兄に任せたんじゃ結果がどうなるかは火を見るより明らかなので引き受けたんです。ほんと、ボンクラな兄を持った妹はつらいよ。
それである日曜に都心のデパートに出かけたんです。最近の服ってどんなだろうって調べるために。そこにしたのはただなんとなくいいイメージがあったから。私が普段服を買うときは店頭でふらっと見て気に入ったのを買います。ブランドや店にはあまりこだわりません。だからこの時はお勧めの店が思い浮かばなくて「じゃあデパートかな」「デパートならここかな」ぐらいな感覚でそこにしたんです。
そうしたらそのデパートで偶然瀬納君に会ったんです。聞いたら彼、美砂ちゃんと久梨亜のお
で、そこで少し彼と話してわかりました。やっぱり彼と一度じっくり話をすべきなんだって。お昼休みや退社後なんかじゃなくお休みのときに。ふたりだけでどこかのお洒落なカフェなんかでゆっくりと。あっ、これって前にも書きましたよね。
そのデパートで彼の住んでいるところを教えてもらって、翌週に私が行くことにしたんです。お洒落なカフェではありませんが、彼の家ならゆっくり話が聞けるだろうって。
そしたらまたビックリですよ。彼、私が他の人と結婚するんだって思い込んでいたんです。しかもそのお相手が笑っちゃいます。兄ですよ。デパートで私と兄が腕組んで帰って行ったのを見た彼が誤解したんだそうです。あり得ないですよね。でもふたりが
それが誤解だってわかったら彼、なにを聞いても返事がうわの空。どうやら私が他の人と結婚するわけじゃないってわかったのがよほどうれしかったみたい。でもおかげでこちらが聞きたいことはなにも聞けない。なんのために行ったんだか。
でももしかしたら私はそうなることを予感していたのかもしれません。なぜならその時点でバックアップのBプランを用意していたから。美砂ちゃんや久梨亜に邪魔されずに確実に彼とふたりっきりになれるプラン。デパートから帰ってすぐに練りに練った完璧なプラン。本当はこっちをAプランと呼びたいぐらい。それをこれから披露します。
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