カケワタリ

 歓楽街の外れに宿を探していた時のこと。

 私たちは安く泊まれる場所を見つけるか、野宿にするかでふらふらと歩いていた。

 とうとう見つからずに野道まで出てきたところで、足に何かがしがみついた。


 うわあと足元を見ると汚い男がへばり付いている。

 リィンはというと男から漂う悪臭から避けようと離れていった。困った。

「姉ちゃん、金を貸してくれ!」

「あげるお金は無いんで」

「ちょっと話を聞いてくれ!次の賭けは当たんだよ!」

「はあ……」


 リィンと同じく若干の距離をおいて話を聞いた。

 どうやら賭け事に負けて散財したらしい。妻子持ちだからと負けて帰るわけにいかず賭け続けた結果、大負けして今に至るという。


「次の賭けは勝てんだ。だからよ、その賭け金を貸してくれ。姉ちゃんにもちゃんと返せるからよ。それどころか倍にして返せる!信じてくれ!」

「一応聞きますけど負けたらどうするんです?」

「……負けねえから大丈夫だ」

「うーん」

話が通じない。もしくは価値観がものすごく違うのだろうか。


「お父さんは賭けのどこが好きなんですか?」

「好き?ああ、賭けってのは勝ち負けがある。勝てば死ぬほどの苦労をしなくていいんだ」

「負ければ苦労は増えますよね」

「そりゃそうだ。真面目に働いてるヤツだって負け組ってのがいるだろ?俺は苦労してまで負けたく無えんだよ」


 少しの間考えた。

「……まあ、一旦貸しますから」

「え?!どうしちゃったのコルネット」

「いいから。で、どれくらいです?」

 結構な額だった。二十日分の食費ぐらいだろうか。結構な賭けをしたものだ。


「なんで臭い男にお金なんかやったの?もしかして私が勝つ未来に引っ張れってこと?」

「いやいや、そうじゃないよ」

「じゃあ勝つと思ってるの?そもそも信用できなさそうだよ」

「あの人が奥さんと子供のために必死だったから」

「それだけ?」

「あと、たまには楽して稼ぎたいからね」


 男は勝って帰ってきた。

 約束通りの金を返してもらった。

「助かったぜ姉ちゃんらよ。ありがとうな」

「こちらこそどうも。あと一つ質問いいですか?」

「おう」

「賭け事は続けるんですか?」

「もうやめる事にしたんだ。妻も子供もいるし、あんな生活できっこねえんだ。これからは真面目に働くさ」

「それは負けないといいですね」

私は賭けること自体が楽しいと思っている。

勝ち負けや確率じゃない。

なんでもいい。

何か一つに賭けてみる。

それで負けようが構わない。

それを信じ続けることができたのだから。


もしあなたが信じ続けられないなら、やめたほうがいい。それに賭けてる自分が嫌になってしまうから。




Auf:influence | 2017.02.01 - 04.10

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