カゲツナギ

 わたしが巻いてるマフラーはコルネットが編んでくれたものだ。だけどわたしはそれを無くしてしまった。 そのときのはなしをしようと思う。


 さむい国へ行く途中のこと、わたしが寒そうだからといって毎晩寝る前にマフラーを少しずつ編んでくれていた。もちろんわたしは寒いとか思わないんだけど、優しい顔で編んでくれてたから出来上がったら大事にしようとおもってた。

 コルネットは幻覚の中から取ってくる黒い影みたいな塊を糸にしてマフラーを編んでいた。

 その影みたいなのはいつも私とか他のオルタの変な能力が通用しないからと言って武器にしたり、お守りにしたりして使っていた。わたしはよく時間を行き来するんだけど、この影でできたものの運命みたいなのは一度も変えられなかった。

 それから数日して趣味の悪い真っ黒のマフラーは編みあがった。

 コルネットは出来上がってすぐわたしにぐるぐると巻きつけて、いたずらしたように嬉しそうだった。大事にするよといってそれで、それで。


 吹雪がひどくても、指の先が凍りそうでも暖かかった。いままでさむいと思うことはなかった。暖かいというのがどうゆうことかわかった気がした。

 それからわたしはいつもの薄着にマフラーをするようになった。コルネットには服もちゃんと着ればいいのにと言われたけど、今はこれが気に入ってる。


 しばらくして温かい国へ向かっている時。コルネットが夏着に変えようと荷物をまとめていた時に気付いた。

 私はマフラーをどこかに置いてきてしまった。

 温かくなってきたからもういいんじゃないと言われて外した時に忘れてしまったかもしれない。


 わたしは時間を遡った。忘れてこなかったことにしようとした。だけど、黒い影でできてるからその時間は変えられなかった。

 何度も試した。コルネットには一瞬の出来事だっただろうけど、何年もやりなおし続けた。それでもマフラーは取り戻せなかった。


 さむい国へ行く途中のこと、わたしが寒そうだからといって毎晩寝る前にマフラーを少しずつ編んでくれていた。もちろんわたしは寒いとか思わないんだけど、優しい顔で編んでくれてたから出来上がったら大事にしようとおもってた。

 けどね、大事にできないからさ、コルネット。

「マフラー、いらない」


わたしはマフラーを貰わなかったことにした。

わたしはマフラーを無くさなかったことにした。

寒いというのがどうゆうことか分かった気がした。




Auf:influence | 2017.02.01 - 04.10

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